ハイブリッドクラウドへの道は険しい
AWSとVMwareのハイブリッドクラウド連係に立ちはだかる数々の難問(1/2 ページ)
ハイブリッドクラウドへのチャレンジは、クラウドへの移行で終わるわけではない。それどころか、社内のVMware環境をAWSに連係する作業を進めることで、新たな問題が次々と出現するのだ。
ハイブリッドクラウドへの移行に向けた最初のハードルだけでも十分に厳しいものだが、その後にも幾多の難関が待ち受けている。
企業がVMware環境と「Amazon Web Services」(AWS)環境を連係するハイブリッドクラウドを進めようとすると、ネットワークに関連した問題だけでなく、両クラウド環境にまたがるセキュリティの管理や、クラウドコンピューティングそれ自体が企業文化にもたらす混乱など、広範囲にわたるチャレンジが立ちはだかる。
関連記事
ハイブリッドクラウドの技術に関する記事
ハイブリッドクラウドのセキュリティに関する記事
AWSとハイブリッドクラウドに関する記事
ネットワークと「データ引力」
VMware環境とAWS環境の間でネットワークを融合させるのは困難だ。とはいえ、この状況がもうすぐ変化する可能性もある。
社内のVMware環境をAWSに接続する上での主要な問題点の1つが、VMware環境がレイヤー2でネットワーク接続を提供するのに対して、AWS環境がレイヤー3をベースとすることによるミスマッチだ。業界観測筋によると、AWSはインスタンス間でレイヤー2のブロードキャストドメインを提供するので、アプリケーション開発者やインフラ担当者はIPテーブルを修正し、これを管理する必要があるかもしれないという。VMware環境からAWSにインスタンスが移動したときに、インスタンス間の通信を可能にするためだ。
これは、米VMwareの「SDN(Software-Defined Networking)」製品「VMware NSX」とAWSの連係が実現するまで、VMware環境とAWS環境との間に横たわる根本的な問題として残るだろう。VMwareは「VMworld 2015」カンファレンスでAWSとの連係機能のプレビューを披露したが、リリース予定は明らかにしなかった。
両環境で一貫性のあるIPアドレス空間を維持することも、ハイブリッドクラウドのチャレンジだ。
米レンタル企業のRent-a-Centerは、この問題に直面した。現在、同社はAWSに接続した社内MPLS(MultiProtocol Label Switching)ネットワークと「VMware vCloud Air」を結ぶプライベート接続をセキュアなクラウドインターコネクト製品で連係することで社内ネットワークを両方のクラウドに拡張している。
「この方法はとてもうまくいっている」と話すのは、Rent-a-Centerの技術運用ディレクターを務めるマイケル・コンロイ氏だ。「この取り組みの開始当初は、VPN経由でインターネットに接続していたが、これはうまくいかず、ひどいものだった」
VPN接続ではパフォーマンスが問題になっただけでなく、VPN接続でIPアドレス空間を維持するのも難しかったという。
「VPN接続はわれわれの目的に適合しなかった。VPNで接続し、ワークロードを移動するたびに、何かが変化し、しかもその変化は必ずしも同じではなかった。要するに、一貫性がなかったのだ」とコンロイ氏は語る。
社内のデータセンターとAWSなどのパブリッククラウドとの間のネットワーク帯域幅も問題だ。
Amazonプレミアコンサルティングパートナーである米Booz Allen Hamiltonの戦略イノベーショングループで上席技術主任を務めるニルマル・メータ氏は「ボタン1つでデータセンター間の移行ができるようになればいいと望む顧客に出くわすことが多い。しかも彼らは十分なネットワーク帯域幅と安定したインターネット接続を確保しておらず、本格的なネットワーク契約も結んでいないのだ」と指摘する。
また、「データ引力」の問題もある。物理法則により、データは社内のデータセンターとAWSとの間で光速よりも速く移動することはできない。このため、大量のデータを移動するのが現実的でない場合もある。
「当社にはHP-UXやAS/400、Oracleシステムなど多数のレガシーシステムがあり、これらは現在の形態のままで外に出すのには適さない。定義からいえば、これらを連係するポイントは社内になくてはならない。だがそうなると、インフラの大部分を移動するのが難しくなる」とコンロイ氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
AI時代の自律的なパートナー 「データエージェント」構築&活用ガイド -
製品資料
使用中のデータを保護して安全な共同開発へ、クラウド時代のデータセキュリティ -
製品資料
“AIによる高速な脆弱性検出”対策を行う、RHELの統合セキュリティ機能とは? -
製品資料
企業ITを支える定番Linuxの運用管理、手動の限界を乗り越える手法とは? -
製品資料
AIとクラウドネイティブの課題を解決する、シンプルで費用対効果に優れた方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
2
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
3
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
4
イーロン・マスク氏が生成AI「Grok」をオープン化する“語られない狙い”
-
5
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
6
GitHubが指摘 AIが書いた「おそらく動くコード」が招くシステム崩壊
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
9
ライオンが脱レガシーシステムのパートナーに「Google Cloud」を採用した理由
-
10
Azure Red Hat OpenShiftは脱VMware問題の救世主になるか? 技術資料で解説
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
5
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
オープンウェイトLLMの推論最適化事例:ローカル環境で応答速度を約15分の1へ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー