OpenStack for Enterprise座談会【後編】
徹底討論:OpenStack導入を成功に導く、脱リニア思考&コミュニティー活用(1/2 ページ)
国内でOpenStack導入に本気で取り組むベンダーおよび組織から有識者が集結。ユーザー企業がOpenStack導入を成功させるためのヒントやコミュニティー活用の利点を語った。
前編「徹底討論:OpenStackの社内利用が現実的に? 成熟度を議論した」に続き、OpenStack座談会の模様をレポートする。後編では、主要ベンダーの特徴、コミュニティー活用のヒントをお伝えする。
モデレーター
玉置伸行氏(日本仮想化技術)
パネリスト(50音順)
鳥居隆史氏(NEC)
中島倫明氏(伊藤忠テクノソリューションズ)
林 雅之氏(NTTコミュニケーションズ)
水野 伸太郎氏(日本OpenStackユーザー会)
併せて読みたいお薦めの記事
OpenStack事例
- 10年先の基盤となるか――JFEスチール、NTTドコモ、富士通がOpenStackに期待すること
- 3パターンで理解するOpenStack活用事例、先行ユーザーの着眼点とは?
- サイバーエージェント、ヤフー、楽天が語るOpenStackとの理想的な関係
OpenStack導入のコツ
OpenStackのメリット
OpenStackディストリビューション選定
主要OpenStack関連ベンダーの取り組み
――OpenStackに対しては皆さん、特徴的なアプローチをしていると思います。具体的にどのような取り組みを進めているのでしょうか。
鳥居氏 NECは、自社製品を基本にマルチベンダーも含めて、アプリケーションからサーバ、ネットワーク、ストレージまでOpenStackの関連製品/サービスをトータルに提供しています。国内での当社の強みになるのが、コミュニティーへの貢献です。OpenStackには長年取り組んできた歴史があり、社内に多くのコアエンジニアを抱えています。実績のある安定的なコンポーネントはもちろん、まだ成熟していないコンポーネントまで、ユーザーニーズに応じて多種多様なパターンを提案することができます。
――NECのOpenStackの取り組みとしては、Red Hatとの協業展開も見逃せません。パートナーとしてのRed Hatをどう見ていますか。
鳥居氏 Red Hatが提供するLinuxには高い安定性や信頼性があり、企業としてオープンソース市場全体を支えるという使命感を持っていることが分かります。一方で、OpenStackへのアプローチは出遅れた感が否めません。これには今まで築き上げてきたOSSのビジネスモデルにOpenStackがうまくはまらなかったという背景があると思います。OpenStackにはさまざまなプロジェクトがあり、組み合わせも多様ですが、Red Hatが安定性を確認したものしか正式にサポートしていません。そのためユーザー企業にとっては、うまくはまらないケースがあるのも事実です。一方で、安定性や信頼性を担保するというポリシーを貫き、ビジネスモデルも含めて改善をしている点は評価されています。Red Hatのユーザー企業に向けたこれからの展開には大いに期待しています。またNECではCanonicalとも連携をし、ユーザー企業のさまざまな要望に応えられるようにしています。
林氏 NTTコミュニケーションズは、OpenStackベースのパブリッククラウド「Cloudn(クラウド・エヌ)」を2013年から提供しています。特にVPNを経由したセキュアなイントラネット環境を構築できる「Cloudn Compute VPCタイプ ClosedNW」は、竹中工務店のIoT(モノのインターネット)基盤に採用されるなど、数多くのユーザー企業に導入実績があります。もともと当社はネットワークサービス事業者であり、顧客企業の多くがVPNを利用しています。そのためネットワークを切り口に、マネジメントやセキュリティも含めて、VPNの延長線上でのOpenStack活用を提案しています。
これに加え2016年3月には、IaaS(Infrastructure as a Service)の「Enterprise Cloud」で、OpenStackベースの仮想サーバ「共有型Cloud」を新たに提供開始しました。共有型Cloudは、OpenStackとオープンソースのPaaS(Platform as a Service)基盤ソフトウェア「Cloud Foundry」を活用し、クラウドで提供することを前提とした「クラウドネイティブ」なシステムの稼働に適した企業向けクラウド基盤を提供しており、製造業のIoT基盤など大規模案件での導入が進んでいます。Enterprise Cloudのアプローチとしては共有型Cloudを単体で売っていくのではなく、ベアメタル(物理サーバ)も含めた「専有型Hosted Private Cloud」と共有型CloudをSDN(Software Defined Network)で接続し、既存システムとクラウドネイティブシステムの両方のニーズに対応できるサービスをトータルで提案していきます。
――NTTコミュニケーションズは、NTTレゾナントとともに、2015年に東京で開催された「OpenStack Summit Tokyo 2015」で「OpenStack Superuser Award」を受賞しています。コミュニティーへの貢献度も高いように感じます。
林氏 OpenStackに対しては、NTTグループ全体で力を注いでおり、国内にとどまらずグローバルでコミュニティー活動を展開しています。その中で当社は、世界にOpenStackの拠点を7つ構え、オープンなエコシステム(経済圏)やコントリビューション(プログラムの変更、追加)にも積極的に取り組んでいます。今後は、OpenStackの営業サポートチームのスキルを高め、体制を強化し、ユーザー企業でのOpenStack活用をさらに盛り上げていきたいと考えています。
水野氏 私は、日本OpenStackユーザー会の会長という立場であり、またNTT持ち株会社のオープンソース基盤研究組織であるNTTソフトウェアイノベーションセンタの研究員としてOpenStackに携わっています。ここ数年でNTTグループにおける研究所の役割も大きく変わってきています。以前はOpenStackを使って各グループ会社向けのシステムを開発することがミッションでしたが、今やOpenStackベースのシステムの選択肢は大きく広がっていますので、研究所で開発する意味がなくなりました。そのため現在は、コミュニティー活動の中で、グループ会社の要望に応じて、足りない機能を追加していくことがミッションになっています。例えばグループ会社からの要望を受けて、コミュニティーメンバーが機能を開発し、それをコミュニティーに上げます。そして、この機能がNTTグループだけではなく、コミュニティー全体にも活用されるというループがうまく回り始めています。
中島氏 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の取り組みとしては、アンダークラウド(OpenStack環境自体を構成、運用するハードウェアやソフトウェア)とオーバークラウド(OpenStack上で稼働するさまざまなアプリケーションやサービスの構築や運用)の両面からOpenStack活用を推進しています。アンダークラウドの領域では、以前からのCTCの強みであるマルチベンダーを生かし、多種多様なハードウェア企業やソフトウェア企業とのパートナー関係によってシステム開発を支援しています。またMirantisやSolinea(注1)といったOpenStack誕生以後に成長した新しい米国企業とも連携を進め、さまざまなOpenStackニーズに対応できる体制を整えています。一方、オーバークラウドの領域では、オープンなツールチェーン(連鎖的につながる複数ツールの集合体)を使った自動化のサポートや、OpenStackやクラウド活用に向けた企業の業務変革および人材の適性配置といった、より高いレイヤーでのコンサルティングとトレーニングのサービスを展開しています。こうした取り組みを支援するための専門組織として「Cloud Innovation Center(クラウド・イノベーション・センター)」を50人規模で設置するとともに、CTC全体でもOpenStackのSE(システムエンジニア)を数百人規模で育成しています。
注1:OpenStack中心にオープンソースソフトウェア(OSS)を活用したインフラ構築のコンサルティングサービスや導入支援サービスを北米で展開する企業。
――CTCはもともと大規模なユーザー企業向けのITビジネスで実績を持っていますが、OpenStackの領域でも案件を拡大していますよね。OpenStack活用に向けたユーザー企業の意識を変えてくれると期待しています。
中島氏 CTCでは従来型の「OpenStackが欲しい」といった構築案件を支援するとともに、より一歩踏み込んだOpenStack活用の「仕組み作り」という上位レイヤーからアプローチをしています。最近ではこれまでクラウドとは無縁だった保守的な企業の案件も増えていますが、これらの企業ではメインフレーム時代に確立され受け継がれた古いルールが文化として定着しています。こうした企業文化の部分にもメスを入れながら、OpenStack活用を成功させるための提案をしています。しかし、企業文化を変えていくというのは容易ではなく、技術力のみならず実際の現場でOpenStackの活用を試行錯誤した経験が必要になります。この部分で、事例が先行している米国で既に試行錯誤を経験しているMirantisやSolineaと連携することで、ユーザー企業へのOpenStack導入とのその活用体制を定着させるというサポートを可能としています。
――CTCといば、国内で初めてMirantis製OpenStackを取り扱ったベンダーとしても有名です。パートナーとしてのMirantisをどう見ていますか。
中島氏 Mirantisは世界中で多数のOpenStack導入の経験を持ち、その事例はネットサービス企業から製造業まで多岐にわたります。そこで培った彼らのベストプラクティスを形にした「Mirantis OpenStack」(MOS)を利用すれば、複雑なOpenStack環境の構築と運用をシンプルにできるでしょう。一方で、このベストプラクティスから外れる使い方をする場合には、MOS独自の設計思想や利用方法を学ぶ必要が出てくるため、自分たちのルールを変えるか、MOSのルールに自分たちを合わせるかの判断が必要になります。もちろん、世界中で実績のあるベストプラクティスを簡単に使えるのは大きなメリットであるため、OpenStackを利用する上での有力な選択肢の1つとなっています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
OpenStack for Enterprise座談会
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
6
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
4
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
9
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー