併用がトレンド
IaaSとPaaSを比較 開発者目線で見たメリットは?
開発にIaaSとPaaSのどちらを使うかは、両者の主な違いを理解してから決めるべきだ。本稿ではこの違いを考える。
IaaSとPaaSという2つの選択肢は以前からある。この2つのアプローチは開発者に提供するものが大きく異なるため、両者の違いを理解しておくことは重要だ。
本稿では、マイクロサービスの開発に開発者が利用できることを比べながら、IaaSとPaaSの主な相違点を考える。必ずしもオールオアナッシングの選択をする必要はない理由を説明する。
IaaSとPaaSの違い
IaaSは、自身で組み立てるアプローチといえる。Amazon Web Servicesの「Amazon Web Services」(AWS)やGoogleの「Google Compute Engine」といったIaaSで作業する開発者やアプリケーション管理者は、開発やアプリケーション管理に利用できる統合された一連のツールとリソースにアクセスできる。
「IaaSは低レイヤーのサービスだといえる。コンピューティング、ストレージ、ネットワークなどのリソースを手に入れ、自身で組み立てる。つまり、車を購入するのではなく、車の部品を買って組み立てるようなものだ」と話すのは、オンラインサブスクリプションとパーソナルショッピングサービスを提供する企業Stitch Fixでエンジニアリング部門のバイスプレジデントを務めるランディー・シャウプ氏だ。同社は、マイクロサービスの開発に力を入れている。
IaaSは開発に必要なツールとサービスを提供する。だが、開発プラットフォームのプロビジョニングと管理を行うのは各企業だ。つまり、開発者は自身で、実行プロセスを編成し、データサービスを管理して、基盤となるOSのメンテナンスを行わなければならない。これは、パフォーマンスを最大限に引き出すために、独自の機能を追加し、アプリケーションやサービスを微調整して、柔軟性を高めることができることを意味する。だが、開発者の仕事が増えるため、時間のかかるアプローチといえるかもしれない。
これに対しPaaSは、開発者に完全なアプリケーション開発パッケージを提供する。こうした開発パッケージには、ツールやサポートが組み込まれ、開発プラットフォームの構成は事前に済んでいる。PaaSはいわば、アプリケーション開発管理サービスにおけるフルサービスのガソリンスタンドのようなものだ。PaaSには、Red Hatの「OpenShift」、Herokuの「Heroku」、Microsoftの「Microsoft Azure」、Googleの「Google App Engine」などがある。また、Engine Yard、OpenStack、CA Technologiesなどのプロバイダーも参入している。PaaSの利用者は、PaaSプロバイダーが作成、管理するサービスとプラットフォームで開発を行う。独自の構成は必要ない。
「PaaSの利用は、ただ車を買って運転するようなものだ。全ての部品が事前に組み立てられ、連携して動作する。実に簡単だ」(シャウプ氏)
PaaSでは、プロバイダーのソフトウェアを利用して、アプリケーション実行サービス、データサービス、基盤となるOSの機能を操作する。PaaSプロバイダーは、自社が提供しているプラットフォーム専用に統合されている開発ツール、フレームワークなどのリソースから成るスイートも提供する。企業の特定のニーズに合わせてプラットフォームをカスタマイズできるようにしているPaaSプロバイダーもある。だが、それには時間がかかり、カスタマイズが済んだ新しいバージョンがリリースされるまで待たなければならない可能性がある。
「唯一の違いは、開発ツールが環境に組み込まれているか、別々にホストされるかになる」とTechTarget寄稿者でDevOpsアナリストとして働くクリス・トッツィ氏は言う。
分離ではなく連携を
IaaSとPaaSを別ものとして考えることも可能だが、両者を平行して、または連携させて運用する企業も多い。
「AIと人によるパーソナルスタイリストサービス『Stitch Fix』では現在、IaaSとPaaSの併用に移行しつつある。これまでは、完全にHerokuのPaaSに頼っていたが、その利用を一部に抑え、より低レイヤーのIaaSであるAWSに自社プラットフォームを構築している」
アプリケーションのユーザー向け部分にはPaaSを利用し、バックエンド機能はIaaSのアプローチを用いて処理する戦略を採用できるかもしれないとシャウプ氏は話す。
「例えば、ユーザーに接する機能やアプリケーションには全て、Heroku、Google App Engine、Cloud Foundryといった市販のPaaSの使用を検討する。そして、PaaSでは適切なサービスが受けられないバックエンドサービスには、インフラ内で手を加えることを考える」(同氏)
シャウプ氏によると、IaaSとPaaSの併用は、プロバイダーが提供するサービスでも行われているという。PaaSのHerokuはAWSに構築されているため、Herokuを必要とするあらゆる開発プロジェクトで、Herokuプラットフォーム上にあるかどうかに関係なく、AWS開発ツールにアクセスすることは理論上可能だ。
「Heroku内から全てのAWSサービスに比較的簡単にアクセスできる。そのため、どちらのアプローチも利用できる」(シャウプ氏)
一部の専門家によると、IaaSとPaaSの境界は曖昧になりつつあるという。新たなコンテナオーケストレーションサービスは、IaaSと完全統合型の開発/展開プラットフォームとの間に位置するサービスと考えられる。その一例がAWSの「Amazon EC2 Container Service」だ。
個人研究者でありTechTarget寄稿者のジョージ・ロートン氏は次のように語る。「IaaSとPaaSのどちらかを選ばなければならないと考えてしまうのはプロバイダーの戦略だ。両者は共存し得るものであり、重なり合う部分も多い」
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