複数の予防線を張ろう
携帯版のマルウェアを食い止めるには
ソフトの購入予算や携帯端末管理上の障壁を理由に携帯マルウェア対策を怠っていないだろうか。ここでは専用ソフトを使わない対策方法を紹介する。
PDAやスマートフォンに関するウイルス対策プログラムには、基本的にはノートPCのベストプラクティスを適用する。しかし、会社の資産を携帯マルウェアから守る方法はほかにも多数ある。補完的な防御措置として、携帯マルウェア遮断機能を取り入れたエンタープライズ同期サーバ、ネットワークゲートウェイ、無線サービスなどがある。
経験から学ぶ
Win32マルウェアとの10年越しの戦いで、PCに常駐するウイルス/スパイウェア検出ツールやスパム/フィッシング対策フィルタは必要ではあるが運用は効率的ではないことが分かってきた。こうしたプログラムや定義ファイルを最新の状態に保つことは、時間と戦いながらの面倒な雑務となっている。
もちろん、こうしたPC常駐型のスキャナやフィルタがなくなったわけではない。しかしほとんどの企業は現在、サーバベースとネットワークエッジのウイルス対策/スパム対策ソリューションでこれをカバーしている。こうした措置を付加することで、マルウェアがデスクトップPC/ノートPCに到達する前に大半を食い止め、ITコントロールを強化し、ユーザーの生産性を高めて感染リスクを抑えることが可能になる。
幸いなことに、PDAやスマートフォンはエンタープライズサーバおよびネットワークの防御措置を活用するのに適している。無線接続の高速化と普及に伴い、ほとんどの携帯マルウェアは「空気を伝わって」届き、企業のメールサーバやアプリケーションゲートウェイ、リモートアクセス管理機器を通過する。こうしたエンタープライズ指向プラットフォームは、集中管理型の携帯マルウェア対策を適用する絶好のチャンスをもたらしてくれる。
既にMicrosoft Exchange ServerやLotus Notes、SMTPサーバでスパムメールやフィッシング詐欺メールを遮断している企業の場合、携帯端末で送受信するメールにも同じ手段を適用できる。携帯端末を利用している従業員に対してこのセキュアな経路を使ったメールチェックを義務付け、会社の防御経路を通らない私用のPOP/IMAPメールにアクセスするのは控えさせたり、あるいは積極的に遮断する。
Webプロキシ、ファイアウォール、UTM(統合脅威管理)プラットフォームを使ってリスクの高いWeb活動(例えばフィッシングサイト閲覧、スパイウェアのダウンロードなど)を防いでいる企業の場合、モバイルブラウザのプロキシルールやVPNトンネルを使い、端末のWebトラフィックをすべて、同じコントロールポイントにリダイレクトする。ここでも目標は、携帯ユーザーの無防備なWeb閲覧を通じて会社がトラブルに巻き込まれるのを食い止めることだ。
トラフィック工学の観点から見ると、こうした解決方法は最善の策ではない。携帯端末のメールとWebのトラフィックがすべて会社のネットワークを通過すれば、帯域幅消費とレイテンシ(遅延時間)は増える。また、現代のネットワーク/サーバ用ウイルス検出ツールでは、モバイルのみを狙ったウイルスは検出できない可能性もある。とはいえ、こうしたアプローチによって携帯マルウェアの大部分に対抗でき、携帯向けの対策ソフト購入やインストール、メンテナンスの必要もない。
外に目を向ける
一方、エンタープライズサーバやネットワークセキュリティプラットフォームには手が届かない中小企業も多い。しかし、ISPや携帯電話会社が提供するホスティング型電子メールサービス付属のフィッシング対策フィルタならば全ユーザーが(コンシューマー個人でさえも)利用できる。実際にはこうした外部のマルウェア対策サービスの方が、幅広い保護を提供してくれることもある。
例えば現代のスマートフォンや携帯電話ユーザーは、電子メールよりもテキストメッセージ経由のコミュニケーションの方に長時間を費やしている。電子メールはエンタープライズサーバやファイアウォールでふるいにかけることができるが、このようなSMSやMMS(携帯電話同士でやりとりするメールを含む)にスパム対策やフィッシング対策フィルタを適用する上で、有利な立場に立っているのは携帯電話会社だけだ。
スパム対策ベンダー、Cloudmarkのジェイミー・デ・ゲールCTOによると、現在北米で処理されている全携帯メールのうち30%以上がスパムだという。中国では携帯電話ネットワークで送受信されるSMSの50%強をスパムが占め、日本ではこの比率は80%を超す。Cloudmark Authorityのような技術を使ってこうしたスパムを携帯電話会社のネットワーク内部で(偽のアドレスから送信されたものも含めて)遮断すれば、トラフィックの負荷とキャリア間のローミング費用、請求額の訂正を削減できる。
そうすることは明らかに携帯電話会社の利益にかなっているが、ではなぜ雇用主が従業員のSMSスパムやフィッシングを気にしなければならないのだろう。それは、マルウェアは電子メールで来ようとSMSやBluetoothで来ようと、携帯端末の正常性と、その内部にある企業情報のプライバシーを脅かすからだ。モバイル攻撃者は、監視が行き届かず大部分が保護されていない通信経路としてSMSを悪用し始めている。個人情報を盗み出す目的で狙いを定めたSMS攻撃が既にコンシューマーに対して仕掛けられ、かなりの成功を収めている。24時間スマートフォンを持ち歩く企業幹部を標的とした「スミッシング(smishing)」(※)攻撃が出遅れるはずがあるだろうか。
※ 携帯電話のSMSを利用したフィッシングのこと。
多重層の防御
メールサービスにフィルタをかければ、スパムの波を阻み、ソーシャルエンジニアリング攻撃の勢いをそぐことはできるが、それだけで携帯マルウェアすべてに対抗することは不可能だ。
例えばiPhoneは、Webを「何とか利用できる」状態から「快適に利用できる」状態に進化した新世代の携帯端末だ。携帯端末のWebトラフィックが増えれば、携帯電話会社はこの経路の防御も固める必要に迫られ、コンテンツセキュリティゲートウェイを使ってWebで感染するマルウェアを遮断しなければならなくなる。
しかもこれらのセキュリティサービスは、会社のネットワークもプロバイダーのネットワークも通らない脅威は防止できない。これまでに出現したモバイルワームやトロイの木馬の多くは、Bluetoothを使ったP2P通信やリムーバブルディスク経由で増殖している。こうした「帯域外」攻撃を食い止めるため唯一信頼できる手段は、端末上の防御しかない。
結論を言うと、携帯用ソフトの予算や携帯端末管理上の障壁を理由に、携帯マルウェア対策を怠らないことだ。この機会に、既に導入済みで管理がしやすいネットワークとサーバでの対策を再利用して第一線の守りを固めるといい。そして、マルウェア対策措置を組み込んだ無線ネットワークサービスでこれを補強する。そうしておけば、いつか携帯マルウェアの転機がやってきたときに、対策の基本事項3つのうちの2つは既に押さえていることになる。
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