ユニファイドコミュニケーション基盤製品紹介:IBM Lotus Sametime Unified Telephony
電話とプレゼンスを1つに――Lotus Sametimeのコミュニケーション力
ビジネスプレゼンス管理の代表的ツールともいえるLotus Sametime。その位置付けはもはやIMではなく、電話を含めてあらゆるコミュニケーション手段を透過的に使い、意志決定を早めていく道具となっている。
ユニファイドコミュニケーション(Unified Communication)という言葉を字義通りに解釈すると、「統合されたコミュニケーション」という意味になる。具体的には、IP電話やビデオ会議、メール、チャットなどさまざまなコミュニケーションチャンネルを統合して扱うことにより、さまざまなビジネスメリットを得ようという考え方だ。従って、通信技術と密接に関係しているというイメージを持つ人が多いだろう。
その解釈は、決して間違ってはいない。しかし日本アイ・ビー・エム(日本IBM)では、ユニファイドコミュニケーションの可能性を通信の世界だけにとどめることなく、さらに広範な領域に広げていこうと考えている。それが同社の提唱する「ユニファイドコミュニケーション&コラボレーション(Unified Communications & Collaboration:UC2)」というソリューション戦略だ。これは、従来のユニファイドコミュニケーションとはどこが違い、そして具体的にどのような製品がそれを実現するのだろうか。
「プレゼンス」の活用でビジネスプロセスを速める
「日本IBMが提唱するUC2は、『コラボレーション』に重きを置いている。このことをまず初めに強調しておきたい」
日本IBM ソフトウェア事業 Lotusテクニカル・セールス ITスペシャリストの松尾邦夫氏はこう述べる。ユニファイドコミュニケーションはよく英語の頭文字を取って「UC」と略されるが、同社が提唱するユニファイドコミュニケーション&コラボレーションは「UC2」という略称で呼ばれる。このUC2は、企業にどのようなメリットをもたらすものなのだろうか?
ユニファイドコミュニケーションがもたらすビジネスメリットとしてよく挙げられるのが、IP電話の導入による通信費の削減、あるいはビデオ会議の導入による出張費や移動費の削減である。こうしたコスト削減効果は可視化しやすく、またその効果も比較的早く表れるため、ユニファイドコミュニケーションの導入目的として真っ先に挙げられることが多い。しかし日本IBMでは、さらに高いレベルを目指すことを顧客企業に提案しているという。同社 ソフトウェア開発研究所 Lotusテクノロジー開発 小峯宏秋氏は、次のように述べる。
「ワークフローやポータルといったコラボレーション系アプリケーションにコミュニケーション機能を組み込むことにより、ビジネスプロセスを高速化して、ひいては企業の意思決定スピードを高めていくことがきる。われわれはこうした戦略を『Communication Enabled Business Process』(CEBP)と呼んでいるが、最終的にはこうした地点を目指しましょうと顧客には提案している」
そして、これを実現するための重要な鍵を握るのが、「プレゼンス」なのだという。プレゼンスとは、コミュニケーションを取りたい相手が今どこにいて、どのような状態にあるのか――例えば在席中なのか、離席中なのか、外出中なのか、会議中なのかといった情報のことを指す。こうした情報を簡単に参照できる仕組みをビジネスアプリケーションの中に組み込んでおくことにより、日々の仕事の中で発生するさまざまなコミュニケーションを効率化できるという。松尾氏も、「プレゼンスは、ディレクトリやセキュリティやエンタープライズサーチといった社内インフラと同様に、極めて重要な仕組みだととらえている」と述べる。
Lotus SametimeでITとコミュニケーションを融合
IBMの数多いポートフォリオの中で、こうした機能が実装されているのが「IBM Lotus Sametime 8.5」(以下、Sametime)だ。同製品は1998年に最初のバージョンがリリースされ、本稿執筆時点(2010年9月)での最新バージョンは8.5.1である。
同製品は、サーバソフトウェアの「Sametime Server」と、PC上でプレゼンス情報を表示したりインスタントメッセージング(以下、IM)のインタフェースを提供するクライアントソフトウェア「Sametime Connect」から成る。基本機能はプレゼンスとインスタントメッセージング(IM)だが、それに加えてビデオ会議やグループチャットなどの機能も備える。このSametime Connectでプレゼンス情報を参照し、有効活用することによって、前述のようにビジネスプロセスの高速化や業務効率化を図ることができる。
「仕事の最中に誰かとコミュニケーションを取る必要が出てきた際、その場ですぐに相手をつかまえて話ができればいいが、実際にはなかなかつかまらないことの方が多い。相手の居場所を探す手間や、コミュニケーションの遅延による時間的ロスを金額に換算した場合、社員3000~5000人規模の会社の場合には年間数十億円に上るという試算もある。こうした無駄は、Sametime Connectのように相手の現在の状況が一目で分かるツールを活用することで大幅に削減できる」(松尾氏)
何といっても同製品最大の特徴は、Sametime Connectの機能をさまざまなアプリケーションの中に自由に組み込める点にある。Lotus Notes/Dominoアプリケーションはもちろんのこと、一般的なWebアプリケーションや、C言語やJavaで開発されたユーザーアプリケーション、さらにはMicrosoft OfficeやOutlookにもプレゼンス機能を組み込むことができる。
また、Sametime Connectをアプリケーションに組み込むための開発作業を支援するツールキットも豊富に用意されている。このツールキットはJavaベースでできているため、Javaが稼働する環境であれば基本的にどのプラットフォームでも連携可能だ。Windowsプラットフォームだけでなく、LinuxやMacの環境でもSametimeのプレゼンス機能をアプリケーションの中で利用できる。「他社のソリューションとの最大の違いは、このアプリケーション連携のオープン性にある」と小峯氏は話す。
実際、既にさまざまな企業が既存アプリケーションにSametime Connectの機能を組み込んで、ビジネスプロセスの高速化と効率化を図っているという。ある損害保険会社では、自社商品を扱う代理店向けにポータルサイトを提供しており、その中で保険金申請処理の自社側担当者のプレゼンス情報を公開している。保険金を申請した代理店からは、その担当者が在席しているタイミングを見計らって、直接チャットで申請処理の進ちょくを確認することができる。代理店から保険会社に直接電話をかけるのはハードルが高いため、こうした仕組みは代理店側にとっては非常に助かるのだという。
またある病院では、CTスキャンのアプリケーションに病院内の専門医のプレゼンス情報を埋め込んでいる。CTスキャンの画像を診断した結果、専門医の診断が急きょ必要だと判断された場合、すぐに連絡が取れるようにするためだ。特に一刻を争う救急医療の場合には、こうした仕組みは患者の命を救うために極めて重要になってくる。
Lotus SUTが提供する次世代テレフォニー機能
ここまでは主にプレゼンスとIMの機能について説明してきたが、Sametimeでは既存の電話インフラを活用したさまざまなコミュニケーションチャンネルも提供する。その役目を担うのが、ミドルウェア製品「IBM Lotus Sametime Unified Telephony 8」(以下、Lotus SUT)である。同製品は、Sametime ServerとPBX(構内交換機)の間に立って、電話の世界とアプリケーションの世界の間を取り持つ役割を果たすソフトウェアだ。
Lotus SUTを導入すると、Sametime Connectのインタフェースを通じて電話をかけることができるようになる。コミュニケーションを取りたい相手の名前を右クリックすると、チャットやビデオ会議と並んで電話のメニューが現れる。それをクリックするだけで、その場でソフトフォンの発信ができるようになるのだ。
また、電話がかかってきたときにどの端末にその呼をルーティングするか、あるいはどの端末に呼を転送するかを、きめ細かく設定することもできる。例えば、平日の9時から17時の間に電話がかかってきた場合は、Sametime Serverが管理するプレゼンス情報を参照し、そのとき自分が在席中だったらデスクの電話機で着信(コール)を受けるが、もし離席中であれば自動的に会社支給の携帯電話に転送する。さらに17時以降にかかってきた電話に関しては、自動的にボイスメールに転送するが、もし重要顧客からかかってきたら、その着信だけは個人所有の携帯電話に転送する。このようなきめ細かい転送ポリシーを、あらかじめ設定しておくことができるのだ。
このような機能のメリットについて、松尾氏は次のように語る。
「こうした機能の何が良いかというと、電話をかける相手が今どこで、何をしているか気にしなくても、電話をかければほぼ確実につながるということ。相手のオフィスの電話番号にかければいいのか、携帯電話の番号にかければいいのか、あるいは出先の番号にかければいいのか、といったことをいちいち気にする必要がなくなる。そのため、『コミュニケーションを取る』という本来の目的だけに集中できるようになる」
さらに、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で3者通話や4者通話を行うこともできる。PBXにも3者通話や4者通話の機能を備えたものがあるが、多くの場合は使い方が難しいため、あまり活用されていないのが実情だ。その点、Lotus SUTはちょっとした電話会議であればごく簡単な操作で手軽に行えるようになるという。
ソーシャルネットワークも含めたより広範なコミュニケーション基盤を目指す
このように、ITベースのコミュニケーションチャンネルと電話ベースのコミュニケーションチャンネルをシームレスに統合するSametimeだが、IBMではこれにほかのLotusブランド製品を組み合わせることにより、さらに広範なコミュニケーション手段の統合を計画している。小峯氏は次のように説明する。
「日本企業では社内コミュニケーション手段として電話とメールぐらいしか使われていないが、実際にはIMや社内SNS、さらに最近ではTwitterなどもある。これらを目的別にうまく使いこなせれば、ビジネスプロセスをもっと効率化できるはず。そのためには、これらあらゆるコミュニケーション手段を透過的に使うための統合プラットフォームが必要。IBMではこれを次世代コラボレーション構想『IBM Project Vulcan』として『Lotusphere 2010』(年次カンファレンス)で発表している」
さらに、今後さらなる普及が予想されるスマートフォンへの対応も強化していく予定だという。BlackBerry端末やWindows Mobile端末専用のSametime Connectアプリケーションは既に提供されているが、バージョン8.5からはiPhone上でもブラウザアプリとしてSametime ConnectのプレゼンスやIMの機能が使えるようになっている。
なお、本稿で紹介したSametime(Sametime Server+Sametime Connect)とLotus SUTのライセンスは、共にクライアント数によってのみ課金される(サーバライセンスは不要)。Lotus Sametimeは「Entry」「Standard」「Advanced」の3つのエディションがあるが、最も標準的なStandardエディション(IBM Lotus Sametime Standard Authorized User License+SW Subscription & Support 12 Months)で1クライアント当たり1万300円(税別)となっている。またLotus SUT(Lotus Sametime Unified Telephony Authorized User License+SW Subscription & Support 12 Months)は、1クライアント当たり1万4800円(税別)の価格が設定されている。
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