中堅・中小企業向けグループウェアSaaS探究:日本マイクロソフト
エンタープライズ製品の機能をクラウドで マイクロソフトのグループウェア「BPOS」
「Microsoft Online Services」は、マイクロソフトの企業向けサーバソフトで提供している機能をオンライン利用できるサービス。そのスイート版「BPOS」には同社の業務生産性に対するこだわりが込められている。
Microsoft OfficeからWindows Serverに至るまで、アプリケーション、ミドルウェア、プラットフォームの全てのレイヤーで製品群を提供している日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)は、そのユーザーエクスペリエンスに向けた投資をクラウドの世界にも急速に拡張することで、多様化するビジネス要件に応じたサービスの柔軟な選択肢を与えようとしている。
具体的には、SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)をカバーするクラウドサービスを、オンプレミス(内部設置型)のエンタープライズ製品と同じテクノロジー基盤で構築することにより、シームレスかつハイブリッド型でソリューションを選択できるようにするというもの。
2008年から提供を開始したクラウド型グループウェアの「Microsoft Online Services」はその代表格といえる。マイクロソフトがエンタープライズサーバ製品で長年培ってきたメールや予定表、情報共有などのグループウェアの機能を、そのままオンラインで利用できるサービスだ。
現在、Microsoft Online Servicesは「Exchange Online」(電子メール、予定表共有、施設予約)、「SharePoint Online」(ファイル共有、ポータル、掲示板、情報共有サイト、ワークフロー)、「Office Communications Online」(在席情報、インスタントメッセージング)、および「Office Live Meeting」(Web会議、アプリケーション共有)の計4つの主要コンポーネントがラインアップされている。Exchange OnlineとSharePoint Onlineが非リアルタイムのコラボレーション(共同作業)の要求をカバーし、Office Communications OnlineとOffice Live Meetingがリアルタイムのコミュニケーションを実現すると理解すればいいだろう。
それら製品群をスイート化したのが「Business Productivity Online Suite」(BPOS:ビーポス)と呼ばれるものである。
BPOSを構成する4つのコンポーネント
次に、BPOSの各コンポーネントの概要を一通り紹介する。
Exchange Online
標準で1人当たり25Gバイトまでのメールボックス容量があり、メールと予定表などが統合された機能として利用できる他、スパムフィルタおよびウイルス対策機能の「Microsoft Forefront Online Protection for Exchange」も標準で提供される。
Outlook 2003/2007/2010とのクライアント接続をはじめ、外出先でノートPCのMicrosoft Outlookから本社のメールサーバにアクセスできる「Outlook Anywhere」や、WebブラウザからOutlookを利用できる「Outlook Web Access」などを備える。Windows Mobile 6.x端末、Microsoft ActiveSyncに対応したスマートフォンもサポートしている。
なお、電子メールの保護やアーカイブが求められる場合は、「Microsoft Exchange Hosted Services(EHS)」が別途利用できる。EHSはExchange Onlineと連動し、迷惑メールやマルウェアからの保護、電子情報開示と電子文書保存義務への対応などが可能になる。
SharePoint Online
Webパーツを活用し、コラボレーションとドキュメントの共有を目的としたチーム専用またはプロジェクト専用のポータルを作ることができるツール。連絡先やサイトの予定表、仕事を共有するためのアクセシビリティを高める。コンテンツ/ワークフロー管理、サイト内リソース検索、フォーム機能などを備える。
また、グループカレンダーで作った共通の予定やポータル上のディスカッション(掲示板)をOutlook上で表示することが可能なため、自分の予定表と組織の予定表を重ね合わせて確認し、メールのスレッドを読むように掲示板の情報を取り込んだり返信したりすることもできる。
Office Communications Online
「Microsoft Office Communicator 2007 R2」クライアント(別途ライセンスが必要)を利用したテキストベースのチャット、ファイル送信、1対1または1対nでのインスタントメッセージ、1対1のビデオチャット、他のメンバーの在席状況がスケジュールと連動して色別アイコンで確認できるプレゼンス機能を備え、組織間、拠点間のリアルタイムコミュニケーションを可能にする。
なお、期間限定のキャンペーンとして、BPOS契約時にOffice Communicator 2007 R2のライセンスが無償で提供されるという。ただし、Office Communications Onlineとの組み合わせのみの利用に限定され、利用期間はそのライセンス終了か次期バージョンのOffice Communications Onlineのリリースのいずれか早い方の時期までとなる。
Office Live Meeting
インターネットに接続したPCのコンソール上でWeb会議、仮想イベント開催を可能にするシステム。ビデオや音声によるコミュニケーションやファイル、アプリケーション、デスクトップの共有、Outlookカレンダーとの同期、ブレーンストーミング機能、ホワイトボードを使用したコラボレーションなどをサポート。物理的な会議開催費用や通信費の削減に寄与する。
また、現在話している人を自動的に捉えるアクティブスピーカービデオ切り替え機能や、会議を録画して他の時間に閲覧できる機能、360度撮影可能なWebカメラを利用した多人数/複数グループでの会議も可能となっている。
海外2カ所のデータセンターで運用される日本版BPOS
日本のユーザーを対象としたBPOSのサービスは、シンガポールのデータセンターがプライマリ、香港のデータセンターがセカンダリとして冗長化運用されている。インフラやオペレーションを集中的かつ大規模で運用するため規模の経済性が働く上、日本国内1カ所で運用されている他のSaaS型グループウェアに比べて障害に強いといえる。Microsoft Forefront Online Protection for Exchangeによるウイルス/スパム対策や、定期的なセキュリティ監査の実施も信頼性を高める要因となっている。
マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループ 部長の磯貝直之氏は「BPOSがこだわっているのは、ユーザーが1つのツールから透過的にさまざまなサービスを使いこなせるようにしていること」と語る。そこでキーとなるのが、多くのユーザーになじみのあるMicrosoft Office。特にOutlookをフロントエンドにすることで、メールやカレンダー機能などを切り替えずに同一の環境で利用でき、あらためて使い方をマスターしなくても、場所を問わず情報共有や共同作業をすぐに始められることが優位性だという。
「クラウドのBPOSとクライアントソフトのOffice製品とを密に連携させ、生産性を包括的かつ多面的に高めることが、マイクロソフトがグループウェアを提供する上での考え方。従って、中堅・中小企業でも不安なくクラウドの利用に踏み出せる」(磯貝氏)
Outlookかブラウザか ユーザー都合で柔軟に対応
またクラウドのサービスは、アプリケーションの品質とその運用を支える足回り(インフラ)の信頼性が車の両輪のようにバランスよく成立していなければ、ユーザーには受入れられなくなる可能性もある。そう指摘するのは、同社インフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループでエグゼクティブプロダクトマネジャーを務める鷲見研作氏だ。「マイクロソフトはMSNやHotmailなど元祖クラウドといえるサービスを15年以上も前からグローバルデータセンターで運用しており、サービスや組み合わせについて長年蓄積してきたノウハウはBPOSにも応用されている」と強調する。
さらに、クラウドサービスでは柔軟性が重要なポイントになるという。「BPOSはリッチクライアントのOutlookからの利用はもちろん、どうしてもブラウザだけで利用したいという要望にも問題なく対応できる。リッチクライアントを選ぶかブラウザを選ぶかはユーザーの都合次第。柔軟に対応するのがマイクロソフトの技術ポリシーだ」(鷲見氏)
スイート利用で半額に、さらに廉価版も
BPOSはスイート構成だが、必要に応じて個別に利用することも可能だ。また、Standard版4サービスをバラバラに契約すると1ユーザー月額2079円になるが、4サービスまとめると1ユーザー月額1044円とかなり割安になる。とはいえ、契約社員や協力会社のスタッフなど、必ずしも大容量のメールボックスやフル機能を必要としないメンバーに対しては、安価でも過剰品質となる可能性もある。そのため、Webブラウザからの情報読み取りのみに限定した、最小限度の機能を提供する廉価バージョンも用意されている。それが「Exchange Online Deskless Worker」と「SharePoint Online Deskless Worker」の、いわゆるDeskless Worker版である(Office Communications OnlineとOffice Live Meetingには設定なし)。
本社はオンプレミスでExchangeやSharePointのサーバを立て、拠点はExchange OnlineやSharePoint Online、あるいはそれぞれのDeskless Workerを利用することで、Active Directoryや共通のメールアドレスドメインを用いながら大幅なコスト削減が可能になる。
| Deskless Worker | Standard | |
|---|---|---|
| メールボックス容量 | 500Mバイト | 25Gバイト |
| 予定表、連絡先、ディレクトリ | ○ | ○ |
| Office Outlook Web Access Light | ○ | ○ |
| Office Outlook Web Access Premium | - | ○ |
| Outlook 2003/2007/2010のアクセス | - | ○ |
| モバイルアクセス | - | ○ |
| Deskless Workerでは500Mバイトのメールボックス、予定表、連絡先、Outlook Web Access Lightが含まれ、ウイルス対策とスパム対策機能が備わる | ||
| Deskless Worker | Standard | |
|---|---|---|
| 1ユーザーライセンス当たりのストレージ容量 | 0Mバイト | 250Mバイト |
| リスト、連絡先の作成、編集 | ○ | ○ |
| ディスカッション、アンケートへの参加 | ○ | ○ |
| ドキュメントの作成、編集、保存 | - | ○ |
| サイト、ワークフロー作成、編集 | - | ○ |
| 管理機能 | - | ○ |
| Deskless Workerではポータルへ読み取り専用でアクセスでき、ディスカッションとアンケートにも参加することが可能 | ||
| バージョン | サービス | 料金(※) |
|---|---|---|
| Deskless | Exchange Online Deskless Worker | 209円 |
| SharePoint Online Deskless Worker | 209円 | |
| Deskless Worker Suite | 313円 | |
| Standard | Exchange Online | 522円 |
| SharePoint Online Deskless Worker | 548円 | |
| Office Communications Online | 209円 | |
| Office Live Meeting | 800円 | |
| BPOS | 1044円 | |
| ※「Standard」「Deskless」を250ユーザー未満で利用する場合の、1ユーザー当たりの月額料金(最低1年間の契約)。250ユーザー以上は、段階的なボリュームディスカウントなどの価格体系が用意されている | ||
BPOSの進化版「Office 365」が2011年中にも利用可能に
マイクロソフトは、BPOSのバージョンアップ版ともいえる次世代クラウドプロダクティビティスイート「Microsoft Office 365」を2011年度中にも正式提供することを予定している。「Office Web Apps」(Web版Office)、Exchange Online、SharePoint Online、「Lync Online」(クラウド版ユニファイドコミュニケーション)などが利用できるという。
管理手法をさらにシンプルにするとともに、従来のExchange ServerやSharePoint ServerのEnterprise Editionに相当する高機能版も用意し、中堅・大企業など幅広い企業の要求レベルに対応する計画だ。BPOSはサーバサイドでの包括性、統合性を目的にしていたが、Office機能が含まれるOffice 365ではそれをクライアントサイドにまで拡大し、エンド・ツー・エンドでの生産性を高めることができるという。今後の同社のクラウド展開に注目したい。
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