ERP製品カタログ【第8回】日立製作所
アドオン開発の負荷を減らす「GEMPLANET Ver.2」の仕掛けとは
Webに完全対応したERP「GEMPLANET Ver.2」の特徴はアドオン開発を支援するフレームワークを用意したことだ。フレームワークに沿って開発することで将来のバージョンアップが容易になる。
高い拡張性とバージョンアップ性を両立
日立製作所(以下、日立)が提供する「GEMPLANET」(ジェムプラネット)は、1997年に初代バージョンがリリースされて以来、累計導入社数1900社を数える純国産ERPパッケージ製品である。オフコン用の業務アプリケーションの開発・販売で培ったさまざまなノウハウを投入した初代バージョンは多くの中堅・大手企業で採用され、2006年にはさらにWebに完全対応した「GEMPLANET Ver.2」がリリースされている。
GEMPLANET Ver.2は、大きく分けて「人事」「給与」「会計」「固定資産」「債権債務」の各業務モジュールで構成される。加えて、販売管理と生産管理の機能に関しても、業種別のモジュールテンプレートが提供されている。しかし、これらのモジュールがバラバラに存在しているわけではない。これらを連携させ、統合ERPとしての機能を提供するために、GEMPLANET Ver.2は独自の3階層アーキテクチャを採用している。
まず最下層には、全てのモジュールに必要な共通機能(共通マスター、セキュリティ制御など)を提供する「GEMPLANET Ver.2 フレームワーク」という基盤ソフトウェアが位置する。この上の中間層で、先ほど挙げた各業務モジュールが動作するのだ。さらに、ユーザーがこのフレームワーク上で、独自の機能を開発することも可能だ。GEMPLANET Ver.2では、そのために必要な開発支援ツールやライブラリ、さらには開発方法論まで提供されている。
こうしたアーキテクチャがユーザーにもたらすメリットについて、同社 情報・通信システム社 産業・流通システム事業部 伊藤 誠氏は、次のように説明する。
「一般的に、ERPパッケージを導入する際にカスタマイズやアドオン開発を行うと、その後のバージョンアップでさまざまな問題に行き当たることが多い。その点、GEMPLANET Ver.2では、導入時のアドオン開発をフレームワークの仕様に沿って行っておけば、その後のバージョンアップや機能追加にスムーズに対応できるようになる」
ちなみに、先に挙げた販売管理と生産管理のモジュールテンプレートも、このフレームワークの仕様にのっとってカスタマイズすることで、導入企業の業務環境にマッチしたシステムを短期間で開発・導入できるようになっている。
さらに最上位層には、GEMPLANET Ver.2の業務モジュールと他の業務アプリケーションとを連携させることにより実現される、各種の個別ソリューションが位置する。連携できるアプリケーションには、日立グループ内の各社が提供する「GEMPLANETファミリー」製品と、サードパーティーが提供する「GEMPLANETアライアンス」製品がある。前者であれば、日立ハイテクソリューションズが提供する経費・旅費精算ソリューション「ExpenseWAN for GEMPLANET」や、日立ソリューションズの就業管理システム「リテシア」、後者ではディーバの連結会計システム「DivaSystem」などがある。
「業務システム全体の中心機能はGEMPLANET Ver.2が提供し、特定の業務ニーズに対してはその領域に強みを持つファミリー製品・アライアンス製品と連携する。こうした方式によって、ユーザーにとってより価値の高いソリューションを提供していくのがGEMPLANETのコンセプトだ」(伊藤氏)
企業グループ内のシェアード利用も支援
前述のように、GEMPLANET Ver.2はWebに完全対応した製品である。Webアプリケーションは一般的に端末上にクライアントソフトウェアを導入する必要がないため、運用管理コストの低減に大きな効果を発揮する。しかしそれ以上にWebアプリケーションには、Webを通じてより広い範囲のユーザーがシステムにアクセスできるというメリットがある。GEMPLANET Ver.2はこのWebの利点を生かして、複数の会社でシステムを効率的に共用するためのさまざまな機能が備わっている。
例えば、企業グループ内での導入を前提とした、グループ経営財務分析の機能や、グループ内取引処理、連結財務諸表の作成などの機能を備えている。また、グループ内の特定の運営会社が全てのグループ企業の間接業務を代行する「シェアードサービス」に対応した機能も充実している。運営会社から複数のグループ企業のデータを参照できる機能や、運営会社による各グループ企業に対するサービス内容を細かく制御できる機能などがそれだ。事実、GEMPLANET Ver.2は企業グループでの導入が多いという。
「親会社も含めてグループ内の全ての企業で導入されるケースもあれば、親会社は他社製の大企業向けERPパッケージ製品を利用し、他のグループ企業全てにGEMPLANET Ver.2を導入するというケースも多い」(伊藤氏)
また、内部統制とセキュリティの機能が充実しているのも、GEMPLANET Ver.2の特徴だという。同製品を開発した日立自身が、内部統制整備に非常に力を入れている企業として知られており、同社内で蓄積された内部統制やセキュリティに関するノウハウが同製品の機能にもそのまま反映されている。非常にきめ細かいセキュリティ設定が可能になっており、また詳細な操作ログを自動的に収集し、即座に照会できる機能も備わっている。
さらに、同製品の機能を柔軟に拡張し、エンドユーザーの使い勝手を高めるための仕組みも備わっている。ユーザーが自身の業務ニーズに応じて独自のテーブルを追加し、データを登録したり、CSVファイルからインポートすることが簡単にできるようになっている。また、データを検索してその結果をCSVに保存したり、あるいはユーザーが独自の帳票を自身で作成できる機能も備えている。これら全てを、エンドユーザーがプログラミングレスで直接簡単に実行できるツールが、デフォルトで装備されているのだ。
これらの中でも特に、帳票作成機能は多くの導入企業で重宝されているという。
「特にGEMPLANET Ver.2の人事・給与モジュールを導入している企業では、公的機関に提出する書類や、社内の人事考課のための書類を作成するために、この帳票作成機能がフル活用されていることが多い」(伊藤氏)
IFRS対応版をリリース予定
IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)への対応も着々と進めている。日立では、同社の他、日立グループ11社で構成する「日立IFRSソリューションコンソーシアム」を中心に、企業がIFRSへスムーズに移行できるための各種ソリューションを提供しており、GEMPLANET Ver.2もその一翼を担っている。
「日立グループ全体でのIFRSへの取り組みに、われわれGEMPLANETの部隊も参画しているので、グループの方針と足並みをしっかりそろえながらGEMPLANETの機能強化を行っていく予定だ」(伊藤氏)
同社では既に2010年9月、GEMPLANET Ver.2にIFRS対応機能を実装することを正式にアナウンスしており、2011年4月からは対応済み製品を出荷開始する予定だ。具体的には、IFRSアドプションとコンバージェンス、両方に対応するための各種機能を実装する。アドプションに関してはまず、1つの会計伝票からIFRS用と日本基準用、双方の総勘定元帳への同時転記を行うことができる「複数帳簿機能」と、IFRSと日本基準の固定資産償却計算を別々に行い、それぞれに応じた総勘定元帳へ伝票を転記する「複数償却管理機能」が実装される。
ただし、最終的なIFRSアドプション対応版の姿はまだ固まっていない。国内でどのような形でIFRSがアドプションされるか未定なためだ。上記で挙げた新機能は、あくまでも現時点で仕様が固まっている制度に対応するためのもの。同社では今後も、法制度が固まり次第、対応する機能を順次、GEMPLANET Ver.2に追加していくという。
コンバージェンスに関しても、順次対応機能を追加する予定となっている。2011年4月にリリースするバージョンではまず、「過年度遡及修正」「過年度の償却計算」「包括利益計算書の作成」の機能を追加する。
また、連結決算のIFRS開示に関しては、連結決算システムとGEMPLANET Ver.2との連携ソリューションとして提供する予定だ。既に同社では、アライアンス製品である「DivaSystem」とGEMPLANET Ver.2を連携させたソリューションの具体的な内容の検討を始めているという。
こうした積極的なIFRSへの対応がユーザーに評価されて、製品の導入につながるケースも出てきているという。特に、固定資産の償却に関してはIFRS対応の工数が掛かることが予想されるため、この部分にいち早く対応したGEMPLANET Ver.2を導入して、早めの対応を図る企業が増えてきているという。
将来のクラウド対応を見据えた製品戦略
同社ではIFRS対応の他にも、GEMPLANETの機能をさまざまな面で強化していくプランを持っているという。特に今後重点的に強化していく領域として、伊藤氏は真っ先にクラウドコンピューティング対応を挙げる。
「会計系の機能に関しては、今後プライベートクラウドという形で使われるケースが出てくると予想している。事実、GEMPLANET Ver.2をグループ導入してシェアードサービスを運営しているケースでは、既にプライベートクラウド的な運用が実現できている。こうした形での運用を想定した機能強化は、今後随時行っていく予定だ」(伊藤氏)
では、パブリッククラウドに関してはどうだろうか? 会計や人事のデリケートなデータを社外に委託することに関しては、現時点では多くの企業が抵抗感を持っている。
「会計系・人事系システムのSaaS化やパブリッククラウド化に関しては、まだユーザーニーズを慎重に見守っている段階だ。しかし、将来的にそうしたニーズが増えてきた際にすぐソリューションを提供できるよう、準備はしていく。また、人事システムは社内に残しつつ、給与計算だけをパブリッククラウドで行う、いわゆる『ハイブリッドクラウド』のような運用は、十分現実味があると考えている。こうしたニーズも考慮しながら、GEMPLANETの今後の製品企画を進めていく予定だ」(伊藤氏)
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