モバイル端末の多様化で必要となったMDMソリューション(前編)
モバイルデバイス管理が必要なのは大企業? 小規模企業?
モバイル端末の多様化は、管理手法の見直しを迫っている。ベンダー各社が提供し始めたMDM(モバイルデバイス管理)ソリューションが解決策となるが、これを導入すべきなのはどのような企業なのか?
企業でのスマートフォン導入が急激に進み、モバイル端末の種類が爆発的に増えたことで、モバイルデバイス管理(MDM)ソフトウェアによるモバイル端末の管理と保護が検討されるようになっている。多くの組織は、これまでカナダのResearch In Motion(RIM)製BlackBerryのみで構成された環境のセキュリティにほぼ全面的に依存してきたが、今や米AppleのiPhoneや米GoogleのAndroid搭載端末、場合によってはその他のプラットフォームも併せて管理し、サポートできるソリューションの開発を余儀なくされている。
プラットフォームにしてもフォームファクタにしても、モバイル端末の多様化は驚くことではない。しかし、このタブレットの進化は、ユーザーが使用するモバイル端末も多様化する可能性があることを意味している。そこで、モバイル化がもたらす生産性の向上を実利につなげられるように、タブレットなどの端末を保護し管理する最適な方法を見いだすことが重要になる。
BYODのDはディマイズ(demise:崩壊)のD?
モビリティのトレンドの最大の変化が、BYOD(Bring Your Own Device:個人が所有する端末の持ち込み)であることは明らかだ。これまでは、会社が端末を購入し、サービスプランを契約して、サービス環境を運用する、いわば“企業が責任を負うアプローチ”が取られてきた。この場合、BlackBerry端末とBlackBerry Enterprise Server(BES)を使用するのが最も一般的だった。Windows Mobile環境の管理ソリューションも存在するが、BlackBerryはそのセキュリティの高さと管理のしやすさから、業務で利用できる法人モビリティソリューションのデファクトスタンダードになった。
しかし、ユーザーの要望に応えて、社員個人のスマートフォンで会社のメールの送受信、業務上の連絡先情報の保存、予定表の管理、また場合によっては他の業務用アプリケーションへのアクセスを認める(“個人が責任を負うアプローチ”を取る)組織が出てきた。このBYOD型のアプローチがどの程度普及しているかを正確に知ることは難しいが、米調査会社Aberdeen Groupによると、企業の4分の3近くが、社員個人のスマートフォンやタブレットの業務利用を認めているという。また、利用できる端末のリストを用意している企業は全体の4分の1で、社員個人の端末の利用を認めているのは46%近くに上る。社員が所有する端末の利用を認めていない企業は全体の28%だ。
もう一歩踏み込むと、さらに細かい傾向が見えてくる。行政機関や規制のある業界の組織は、BYODを認める可能性が最も低い。また、例外はあるものの、大企業がBYODをサポートする可能性も低いようだ。組織の規模が小さくなるに従い、個人が所有する端末の利用率は高くなる。従って、MDMソフトウェアのニーズが最も高いのは小規模企業になるが、MDMソフトウェアに投資する見込みが最も低いのも、通常はこの規模の企業だ。
BYODをサポートする理由として筆頭に挙がるのは、コストの削減と社員の満足度の向上だ。ユーザーが希望する端末の利用を認めることで、ユーザーの満足度が向上することは疑う余地がない。だが、コスト上のメリットについては実証がやや難しくなる。BYODをサポートする方法の1つは、単純に業務レベルに応じて社員に決まった額の手当てを支給することだが、この場合は結局、削減できた費用の一部を社員に支払っている。また、サポートコストを削減できるとも言われているが、“なるようになる”的な発想でユーザーサポートを捉えているのなら、ヘルプデスクを自動応答システムに置き換えてもよいだろう。しかし残念ながら、ユーザーに各自のコンピューティング端末の問題解決に時間を使わせるのは、生産性の観点からすると有効ではない。
大企業では、モバイル端末のサポートの拡大を求めるユーザーからの圧力が高まっているのは明らかだ。しかし、既存のBlackBerry BESによるソリューションではBlackBerryしかサポートできない。このため、BlackBerry以外の端末から成る環境(または、BlackBerryとそれ以外の端末が混在する環境)で同じレベルの管理とセキュリティを実現するには、MDMシステムが必要になる。従って、MDMプラットフォームを導入する可能性が最も高いのは、このような異種モバイル端末環境に移行する大企業だ。
後編「セキュリティ対策だけではない、モバイルデバイス管理製品の機能」では、MDMソリューションが企業のどのような問題の解決に寄与するのかについて解説する。
本稿筆者のマイケル・フィネラン氏は独立系コンサルタント兼業界アナリストで、ワイヤレス技術、モバイルUC、固定・携帯融合を専門とする。ネットワーキング分野で30年以上にわたる幅広い経験を持つ同氏は、同分野のエキスパートとして広く認知されている。ワイヤレス関連では、Wi-Fi、3G/4G携帯、WiMAX、RFIDなど広範な専門領域をカバーする。最初の著作となる『Voice Over Wireless LANs -- The Complete Guide』(Elsevier刊)を最近刊行した。
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