ERP NOW!【第8回】
「ソーシャルERP」は仕事に使えるTwitter、Facebook?
ERPパッケージに追加されることが増えてきたソーシャル機能。人と人の関係から意味ある情報を抽出し、共同作業を効率化する機能です。SAP、Oracleの製品から「ソーシャルERP」の今後を見てみましょう。
ERPパッケージで必須になりつつある機能、それはソーシャル機能です。ERPは企業の業務プロセスをIT化し、効率性や正確性を高めるパッケージソフトウェアですが、業務プロセスを処理するには当然、人の協力が欠かせません。人と人との共同作業を効率化し、人の力を最大限発揮させるのがERPのソーシャル機能といえるでしょう。大手ERPベンダーが提供する代表的な「ソーシャルERP」の機能を見てみましょう。
ERPの最新トレンドが分かる記事
SAPの業務アプリケーションと連携できる「SAP StreamWork」は社内外の共同作業を効率化するためのツールです。プロジェクトや作業に対して、共同で行うスタッフや知恵を借りたいスタッフ、社外のスタッフを招集し、インターネット上で議論しながらプロジェクトを進めていくことができます。
SAP StreamWorkはSaaSで提供されるツールで、Webブラウザでアクセスするだけですぐに利用できます。製品開発やマーケティングキャンペーンなどの「Activity」ごとに、他のユーザーと共同作業を行えるようになっています。ブラウザ上の画面はSNSの「Facebook」に近いかもしれません。ユーザーは自分のステータスや意見を発信し、他のユーザーと作業状態を共有できます。StreamWorkは最終的な意思決定を重視していて、スタッフから出されたさまざまな意見に対して他のスタッフが賛否を明らかにするツールや、アイデアの良い点、悪い点(pros/cons)を整理するツール、最終的な決定を記録するツールなどを用意しています。
SAPジャパンのソリューション統括本部 ソリューション&カスタマーイノベーションセンター センター長の松村浩史氏は、StreamWorkについて「相談ベースの仕事で使えます」と指摘します。仕事をしていると社内外の専門家の意見を聞いてみたいという局面が多々あります。そのために会議を設定するのは大変ですが、StreamWorkならオンラインで気軽に答えてくれるというのがSAPの狙いです。「非定型の情報を業務にどうつなげるのか。StreamWorkはそのコミュニケーションの場として用意しました」と松村氏は話します。
もちろん、今はFacebookやミニブログサービスの「Twitter」などのソーシャルツールが多くあります。これらのツールを共同作業に使う企業も多くあるでしょう。しかし、情報漏えいなどの心配があり、重要な情報はTwitterやFacebookで共有できないというケースも多くありそうです。StreamWorkは招待した社外ユーザーとセキュアな環境で情報共有できます。「FacebookやTwitterまでオープンではなく、社内外で情報共有の範囲を切り替えられます」(松村氏)。これがStreamWorkの特徴といえるでしょう。
ERPの処理結果を表示可能
StreamWorkはSAPが自社開発したツールで、SAP ERPと連携可能です。具体的には、StreamWorkはAPIが公開されているので、SAP ERPが処理する業務プロセスの結果などをStreamWork上に表示できるのです。その逆も可能です。業務プロセスの結果をチームで確認しながら共同作業を進めることができます。
StreamWorkは無料版と有料版がありますが、「ほとんどの機能は無料版でも使えます」(松村氏)。無料版と有料版の大きな違いは設定できるActivityの数と共有できるファイル容量です。iPhone版のアプリケーションが用意され、iPad版も近く公表されるとみられています。SAPジャパンは6月15日に国内におけるStreamworkの正式な提供開始を発表しました。松村氏は「国内でも既に口コミで使われています」と広がりを説明しています。
電話やメールに埋もれていた情報を活用
「ここ2、3年でソーシャルという言葉が出てきました。従業員同士や顧客同士、従業員と顧客とのつながりから生み出される情報を重視する考えです。これまで電話での会話や電子メールに埋もれていた情報を吸い出して、ビジネスに生かすのが業務アプリケーションにおけるソーシャルの考え方です」
日本オラクルのアプリケーション事業統括本部 CRM On Demand本部 ソリューション部 部長の山瀬浩明氏は、業務アプリケーションにおけるソーシャル機能の意味をこう説明します。業務アプリケーションはこれまで説明したように業務プロセスを効率的に処理するためのツールです。一般スタッフから見ると自身も業務プロセスの1つの要素となり、必要な情報を登録するなどの作業が求められます。顧客情報や営業案件を管理するCRMアプリケーションは特にその傾向が強いといえるでしょう。これに対して業務アプリケーションのソーシャル機能は「現場のための生産性向上ツール」とOracleは捉えています。
Oracle Applications関連の記事
Oracle Social Applicationsは主に同社のCRMやERPと組み合わせて使うことを想定したツールです。「Oracle CRM Sales Prospector」「Oracle CRM Sales Campaigns」「Oracle CRM Sales Library」の3つがあります。Sales Prospectorは営業提案に利用できる分析ツールです。さまざまな顧客の過去の活動履歴を分析して、最適なタイミングで最適な営業提案ができるようにアドバイスします。
ソーシャルという意味で注目されるのはSales CampaignsとSales Libraryです。Sales Campaignsは顧客に提案を行う際、別の顧客に行って成功した過去の事例を探し出し、関連する電子メールやドキュメントを再利用するためのツールです。成功事例の電子メールやドキュメントはテンプレートとして登録され、利用したスタッフからの評価付けも行えます。営業スタッフの横のつながりを活用し、営業提案の成功率を高めることができるといえるでしょう。
Sales Libraryは営業提案で利用できる製品カタログや提案書などを他のスタッフと共有できるツールです。これだけだと通常のファイルサーバと変わりませんが、Sales Libraryではファイルに対してタグやコメント、評価を付けることができます。これらの付加情報はこれまでスタッフの雑談やちょっとした電子メールのやりとりに埋もれていた情報です。しかし、Sales Libraryを使うことで可視化でき、誰でも利用できるようになります。
Sales Libraryに登録してあるファイルはCRMで管理する営業案件とひも付けることができます。CRM側からSales Libraryのどのファイルを提案に活用し、その結果はどうだったかを登録できるのです。これによって業務プロセスとソーシャル情報を結び付けることができます。
スレッドを立ち上げて情報を交換
Oracleが提供するもう1つのソーシャルツールが「Oracle On Track」です。On TrackはSAPのStreamWorkに少し近いといえるでしょう。テーマ別にスレッドを立ち上げて、他のスタッフと情報を共有しながら業務を進めていくことができます。文書の共有や音声チャットも可能です。音声チャットは録音しておくこともできます。On TrackもCRMからスレッドを設定することが可能で、案件とひも付けて利用できます。
今後登場するOracleの次世代ERP「Oracle Fusion Applications」でもソーシャル機能は大きな役割を果たすといわれています。また、salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)の「Salesforce Chatter」など、より情報共有を重視した製品も登場しています。人と人の関係から意味ある情報を抽出し、業務に生かすことができるソーシャル機能は今後、ERPの活用でも必須になるでしょう。
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