次世代クラウド基盤、CloudStackとRightScale(前編)
CloudStackを導入したZyngaの事例と北米クラウド最新動向
CloudStackとRightScaleのイベントリポート。前編では、北米のクラウドコンピューティング最新事情をはじめ、プライベートクラウドソリューション選びのポイント、CloudStackの特徴と導入事例を紹介する。
雲屋、クリエーションライン、ライトスケール・ジャパンの3社は2011年6月23日、「CloudStackとRightScaleが拓く次世代クラウド基盤の世界」と題したセミナーを開催した。本稿から前後編の2回にわたりセミナーの模様をリポートする。前編では、北米のクラウドコンピューティング最新事情をはじめ、CloudStackの導入事例を、後編ではRightScaleの4大機能とRightScaleによるクラウドマネジメントの考え方を紹介する。
さまざまなクラウドの形。その先にあるものとは?
雲屋 取締役会長 鈴木逸平氏からは、クラウドに関する北米の最新状況がリポートされた。パブリッククラウド、プライベートクラウド、そしてハイブリッドクラウドとさまざまな形態のあるクラウドサービスだが、どう使い分ければいいのか。鈴木氏は、適切なクラウド利用の1つの尺度として企業のサイズがあると述べた。
図1は、ある調査会社が北米企業約350社に対して実施したアンケート結果を、鈴木氏が折れ線グラフにしたものだ。横軸は企業の従業員数、縦軸はパブリッククラウドへの依存度を表しており、企業の成長に伴うクラウドの利用度が分かるようになっている。
グラフには山が2つある。「1つ目の山には、Amazon Web Services(AWS)やRackSpaceといったパブリッククラウドを利用している中堅・中小企業が多い。規模の小さい企業は、企業内IT資産のかなりの部分をアウトソースする形でクラウド化している」(鈴木氏)
興味深いのは、その山がずっと登っていくわけではなく、ある時点において急下降する状況だ。「パブリッククラウドに持っていった資産をだんだん戻す傾向が発生する。企業内のIT資産をパブリッククラウド化していくと、成長していく過程でコストがかなり高くなる。これはAWS、RackSpaceに限らずいえることだ。従業員数が250~500人規模の時点、実はここにプライベートクラウド構築のニーズが発生している。IT資産を企業内に持ち込むことで管理がしやすくなる。また、これくらいの規模になるとさまざまなIT資産の運用の仕方も大きく変わってくるため、プライベートクラウドを構築することによって、内部で効率良く管理してコストを抑えられるという傾向がある」(鈴木氏)
2つ目の山はプライベートクラウドの先の話だという。「企業がさらに成長する中で、例えば、一部トラフィックが激しく変動するアプリケーション、ある時期急激にCPU利用率が高まるアプリケーションなどが登場する。その部分でパブリッククラウドを利用する形態が2つ目の山だ。そこに端を発し今度はハイブリッドクラウドという使い方が始まる」(鈴木氏)
クラウドの進化
鈴木氏によると、北米では特にプライベートクラウドが非常に話題になっているという。プライベートクラウドの是非や価値はどこにあるのか。ITインフラの下位レイヤーから見ていきたい。
最初はハードウェアへの仮想化の導入があるだろう。図2には、現在仮想化市場をリードする米Citrix Systems、米Microsoft、米Red Hat、米VMwareの4社のハイパーバイザーが記されている。「プライベートクラウドの第一歩は、こうした異なる仮想環境の上に、アプリケーションを統合して載せられるクラウドAPIを導入するシステムから始まる。クラウドAPIは、ハイパーバイザー上で人間を介して行われていた管理業務を自動化する役割を持つと同時に、上に載るアプリケーションが仮想環境に依存せず稼働する環境を提供するという役割がある。CloudStackはこのクラウドAPIを担うものだ」(鈴木氏)
さらに次のステップとして、CloudStackのようなシステムアドミニストレータを介さずにエンドユーザーがインスタンスの立ち上げ、増減といった運用を行えるクラウドポータルの構築が挙げられる。それが持続されていけばプライベートクラウドとパブリッククラウドの連携、つまりハイブリッドクラウドができていくという。
ハイブリッドクラウドの実現には、クラウドポータルという基盤が起点となる。その先には、さまざまなクラウド技術を連携・統合し全体を1つのIT環境として利用できるクラウドエコシステムという形態が浮かび上がる(図3)。鈴木氏は「クラウドエコシステムのコンセプトでは、CloudStackやRightScaleのみならずさまざまなサードパーティークラウドと連携していくことが大切」と述べた。
プライベートクラウド導入のキーポイント
最後に鈴木氏は、プライベートクラウド導入における、ソリューション選びのポイントを紹介した。以下に箇条書きで紹介する。
1.クラウドプラットフォーム上のエコシステム
上記で説明したようなクラウドエコシステムがどれだけしっかりしているかは重要な判断基準になる。クラウドプラットフォーム事業者がさまざまなサードパーティーとパートナーシップを組んでいるかが評価ポイントだ。
2.マルチクラウドの運用
プライベートクラウド構築の次にはハイブリッドクラウドの構築・運用が待っている。プライベートクラウドとパブリッククラウドを結び付ける運用管理が大きな決め手になる。APIを共通化するなどのパブリッククラウドとの親和性、クラウド間の運用機能(自動化、顧客資産の移動、全体を管理できる統合コンソール)も重要な判断基準になる。
3.強いコミュニティーに支えられているか
クラウドの時代は従来のようなベンダー主導ではなく、ユーザー主導の時代である。ユーザー主導とはコミュニティーである。強いコミュニティーに支えられているソリューションを選んだ方がよい。
オープンソースの製品を使うことは、ベンダーロックインを防止する1つの方法になるだろう。鈴木氏は上記3で示したコミュニティーが特に重要だとしている。「CloudStackやRightScaleには強いコミュニティーがある。同じ文化をぜひ日本にも広めたい」と述べた。
世界のCloudStack導入事例
続いて、米Cloud.comの日本地域担当VP 石井和彦氏より、CloudStackの導入事例として米Zyngaや韓国Korea Telecomなどのプライベートクラウドが紹介された。
Cloud.comは2008年にカリフォルニアで18億円の出資を受けてスタートしたベンチャー企業だ。IaaSを実現するためのオープンソースソリューションとしてCloudStackとその構築技術を提供している。
CloudStack(現バージョンは、2011年2月リリースのCloudStack 2.2.6)はオープンソースとして公開されているIaaS型クラウド基盤。リッチな管理GUIやロードバランサ、ファイアウォール機能が標準で装備されているのが特徴だ。提供エディションは、企業向けのEnterprise、無償のCommunity、サービスプロバイダー向けのService Providerの3つ。ハイパーバイザーは、CommunityエディションでKVMとXenServer、EnterpriseエディションでKVMとXenServerに加えVMware vSphreに対応している。次期バージョンのCloudStack 3.0ではHyper-Vもサポート予定だ。また、CloudStackはAPIを提供しているため、RightScaleなどのクラウド管理サービスからも利用可能である。
実績も多数ある。インドのTata Communications、Korea Telecomなど、高品質のインフラが求められるテレコム業界でも既に大規模な実績があり、企業利用で期待を集めている。日本でも、IDCフロンティアが導入し2011年7月にサービスを開始する予定だ。本稿ではハイブリッドクラウドの典型的な例としてZyngaの事例についてリポートする。
Zyngaは世界最大規模のソーシャルゲーム企業として、ソーシャルネットワーク、ソーシャルメディアにゲームアプリケーションを提供している。アクティブユーザーは、月間2億2000万、1日5000万。
Zyngaは当初、アプリケーションをAmazon EC2で提供していた。しかし保守や運用管理の観点から徐々にプライベートクラウドに移行することを目指し、プライベートクラウド基盤として「zCloud」を構築。zCloudにはCloudStackを利用している。
ゲームはユーザー数の増減が非常に激しい商品だ。リリースして数日の間は非常に多くのユーザーがアプリケーションを利用することが多い。しかし、ユーザーがゲームに飽きればトラフィックは激減する。
「プライベートクラウドのzCloudに置くのは、既にリリースされて長い期間がたち、定常的なトラフィックが流れているアプリケーション、もしくはプロトタイプなどの多くのユーザーの目に付かないようなアプリケーションだ。新しいゲームやヒットしているゲームは、トラフィックをAWSのEC2に逃がすことにした」(石井氏)
zCloudがCloudStackを使って商用サービスに至った期間は、導入のコンセプト立案からわずか約6カ月弱だという。「CloudStackには、ある程度確立されたすぐに使えるGUIがソフトとして提供されている。クライアントによっては、既にあるGUIのロゴや背景色を変えるだけで簡単にサービスインできる。これは、CloudStackがクライアントから評価を得ている1つのポイントだ」(石井氏)
「Zyngaは現時点で1000台以上の物理サーバで運用しており、100台の仮想マシンのプロビジョニングを最長22分でできる。これまでEC2ではAWSとのやりとりを含めてかなりの長い時間がかかっていた」(石井氏)。短期間で爆発的なトラフィックが発生するゲームのようなアプリケーションに対し、必要なときに必要なリソースを提供できるようになった。なお、Zyngaの自動スケーリングや運用管理サービスはRightsScaleが提供している。後編ではRightScaleの4大機能とRightScaleによるクラウドマネジメントの考え方を紹介する。
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