3つのテーマで開発
ここまで分かった! XenServer 6.0の新機能
米Citrix Systemsは2011年7月5日、「XenServer 5.6」の次期バージョン「XenServer 6.0」のβ版を発表した。「クラウド」「デスクトップ」「エンタープライズデータセンター」をテーマに、大幅な機能強化を図る。
クラウドコンピューティング時代を迎え、XenServerはサーバ仮想化ソフトという枠に収まらない存在となってきた。
シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス) マーケティング本部担当部長の北瀬公彦氏は「XenServerは、クラウド、デスクトップ、エンタープライズデータセンターという3つの開発テーマに焦点を当てている」と話す。IaaS(Infrastructure as a Service)などのクラウドサービス、デスクトップ/アプリケーション仮想化、企業データセンター。XenServerは、この融合し合う3領域で、共通基盤となることを目指しているわけだ。
米Citrix Systemsが2011年7月5日に公開した次期XenServer「XenServer 6.0 Bata」(参考:Citrixが「XenServer 6.0」でVMwareへの対抗を強化)も当然、この3つの開発テーマに沿って機能拡張が図られた。
なお、取材時は開発コードネーム「Boston」と呼ばれていたが、2011年7月5日の発表(参考:XenServer 6.0 Beta Now Available)に従い、本記事ではXenServer 6.0と表記する。
分散仮想スイッチで複数XenServerを一体運用
XenServer 6.0のクラウド向け新機能では「セルフサービスマネジャー」が目玉となるだろう。XenServerのみならず、複数のハイパーバイザー製品に対応し、仮想マシンの構成定義、プロビジョニング、承認ワークフロー、課金設定、使用リポート、ユーザーロール設定など多彩な機能を持つ。北瀬氏は「便利な機能としては、仮想マシンごとにリース期間を設定できる。使われていない仮想マシンがいつまでも残り、リソースを無駄遣いすることを防げる」と話す。
もう1つの大きな特徴が、OpenFlow対応の分散仮想L2スイッチの統合である。シトリックスが強くコミットするオープンソース製品「Open vSwitch」をベースとしている。現行のXenServer 5.6(FP1以降)でも、仮想スイッチにOpen vSwitchベースを選択できるが、XenServer 6.0では標準のネットワークスタックとなるのだ。
Open vSwitchベースの場合、実装はXenServer単位ながら複数のXenServerにまたがる単一の仮想スイッチとなるため、全てのXenServer上の全ての仮想マシンが同じプライベートネットワークに接続しているものとして扱える。北瀬氏は「仮想マシンを移動させた後のネットワーク設定変更がいらなくなり、ライブマイグレーション機能のXenMotionも使いやすくなる」と話す。また、Open vSwitchベース向けのコントローラーも仮想アプライアンスとして提供され、QoSやACL(Access Control List)などの設定が一元的に行える。
その他、XenServer 6.0では仮想アプライアンス導入が容易になる。管理ツール「XenCenter」に変換ツール「XenConvert」が統合されたことで、XenCenter上においてXenServer固有のXVA形式か、標準のOVF形式の仮想アプライアンスへ直に変換し、即インポートできるようになる。運用管理の手間が省けるだろう。
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GPUパススルーでデスクトップ仮想化を推進
デスクトップ向けで最も大きな機能拡張は、“GPUパススルー”のサポートだろう。XenServer上の仮想マシンは、同じハイパーバイザー上の管理ドメインを介してホストのGPUにアクセスする。エミュレーション処理でGPUの機能を利用しているため、描画性能が十分に発揮されない。それがXenServer 6.0では、プロセッサーの仮想化支援機能を使い、仮想マシンからGPUに直接アクセスでき、描画性能をフルに引き出せる(複数の仮想マシンで1つのGPUを共有することは不可)。
GPUパススルーは、CADのようにGPUを活用するアプリケーションに有効である。北瀬氏は「XenDesktopによる仮想デスクトップでは現状、GPUをフル活用するヘビーユースの場合、1つのブレードPCで1つの仮想マシンを実行する“ブレードPC方式”になってしまうが、XenServer側でGPUパススルーを実現すれば、低コストな“VDI方式”が使える」と指摘する。
なお、XenServer 5.6 FP1以降では「IntelliCache」機能が搭載されている。IntelliCacheは、仮想デスクトップにおいて、書き込み頻度の高いページファイルやWindowsレジストリをストレージではなく、サーバローカルのHDD/SSD上に置き、ディスクI/Oを減らす。大量の仮想デスクトップを稼働させるVDI方式において有効だろう。XenServer 6.0でもよりブラッシュアップされたIntelliCacheが利用できるだろう。
サイトリカバリー機能をXenServer本体に統合
XenServer 6.0での企業データセンター向け機能拡張としては、マイクロソフトの仮想化基盤管理ツール「System Center Virtual Machine Manager(SCVMM)2012」とXenCenterの連携が目玉となるだろう(SCVMM 2012は現在、β版が公開中)。つまり、SCVMM 2012の管理コンソールにおいて、仮想マシンの作成・削除、ライブマイグレーション、スナップショット・復元など、XenServerを総合的に管理できるようになる。System Centerファミリーでデータセンター(企業システム)を一元管理している企業にとっては朗報だろう。
XenServer 6.0では「Simplicity(シンプル化)」も開発テーマの1つとなっている。例えば、XenServerのストレージ管理機能「StorageLink」もシンプル化される。
StorageLinkは、ストレージ装置のプロビジョニング、スナップショット、クローニングといった管理機能をXenServer側で操作するもので、本番サイトのXenServer環境を待機サイトへ移行するサイトリカバリー機能も併せ持つ。現行、StorageLinkは別建てのWindowsサーバで運用する必要があるが、XenServer 6.0ではXenServer本体に統合され、XenCenterで操作できる。XenServer周辺のシステム構成がシンプルになる。
その他、XenServer 6.0ではハイパーバイザーに、2011年4月に公開された「Xen 4.1」を採用し、スケーラビリティも高まる。サポートするホストのRAMが128Gバイトから1Tバイトへ一気に上がる。また、仮想マシンに割り当てられる仮想CPUの数が8から16、仮想RAMが32Gバイトから128Gバイトへアップ。より大規模なシステムをXenServerで運用できるようになるだろう。
仮想ネットワーク基盤としても発展するXenServer
XenServerはXenServer 6.0以降も年1回のマイナー・メジャーのバージョンアップが予定されている。北瀬氏は「特にクラウド向けでは機能強化を図っていく」と述べる。
クラウド向けではオープンソースプロジェクト「OpenStack」とのかかわりが興味深い。OpenStackは、NASAや大手IaaS事業者の米RackSpaceなどが社内開発したクラウド構築・運用ソフトをオープンソース化したもの。シトリックスも深くコミットし、XenServerに最適化したOpenStackベースの製品を提供するプロジェクト「Olympus」を推進している。
シトリックスは、XenServerを基盤とする次世代のネットワーク仮想化製品にも注力していく構えだ。実際、前述したOpen vSwitchベースの仮想L2スイッチから仮想アプリケーションスイッチ「NetScaler SDX/VPX」まで、自社製品およびパートナー製品でL2からL7までのネットワーク仮想アプライアンスを提供している。NetScaler SDXは、物理アプライアンスのNetScaler MPXと仮想アプライアンスのNetScaler VPXを融合。最大16のNetScalerインスタンスの1つ1つにSSLチップを割り当て、暗号化処理を高速化しているのが特徴だ。
XenServer 6.0以降のXenServerがクラウドの世界にどのような影響を与えるのか、今から楽しみである。
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