VMwareからの乗り換えが起こるか
拡張型仮想スイッチの改善に期待、Hyper-V 3.0の新機能
Hyper-V 3.0開発者向けプレビュー版の新機能が発表された。ネットワーク、ライブマイグレーション、拡張性などで大幅な機能改善が施されている。VMware vSphere 5にとって手ごわい競争相手になりそうだ。
米Microsoftは先ごろ開催された「BUILD」カンファレンスにおいて、「Windows Server 8」を発表(参考「Microsoft、コードネーム「Windows Server 8」の詳細を発表」)するとともに、「Hyper-V 3.0」の新機能を紹介した。ネットワーク、ライブマイグレーション、拡張性などの改善により、Hyper-V 3.0は米VMwareにとってさらに手ごわい競争相手になりそうだ。
Hyper-V 3.0はまだ開発者向けプレビューの段階だ。つまり、このリリースは企業に配備するためではなく、最終コードがリリースされる前に開発者がその機能を理解するために提供される。Hyper-V 3.0が一般向けにリリースされるのは1年以上先になる見込みだ。
とはいえ、現時点でもHyper-V 3.0には仮想化専門家にとって興味深い新機能が組み込まれている。特に注目されるのが、新しい拡張型仮想スイッチだ。これは、パートナー企業による高度なネットワーク機能(例えば、トラフィックの検査や監視、サンプリングが可能なキャプチャー拡張機能など)の開発を可能にする。この新スイッチは、VN-TagとOpenFlowのサポートに加え、vNIC(仮想NIC)ごとに帯域幅を確保あるいは制限することによってQoS(サービス品質)を調整する機能も備える。
Hyper-VをベースとしたITインフラを運用している米MLS Property Information Networkの技術ディレクター、マット・ラバリー氏は「ついにここまで来た」と喜んでいる。「この分野では長い間、VMwareがMicrosoftを大きくリードしていたのは間違いない」
ラバリー氏は、この新スイッチが「ネットワークセキュリティの実現に向けた最初のステップになる」と期待している。「これまでは、セキュリティ上の理由から仮想マシンを複数のクラスタに分離して運用する必要があった。Hyper-Vでセキュリティを確保するには、そうするしかなかったからだ」と同氏。
拡張型仮想スイッチにより、サードパーティーから提供される仮想スイッチ(VMware向けに開発されたCisco Nexus 1000Vスイッチなど)を利用できる可能性も高まるだろう。米調査会社Gartnerのクリス・ウルフ調査担当副社長は「誰がパートナーになるのかは、考えなくとも分かる」と話す。「最初に頭に思い浮かぶ企業は、これまでVMwareに冷たくされてきた企業、つまり米Hewlett-Packard(HP)と米Juniperだ。市場の潜在力を考えれば、米Cisco Systemsもこれに加わるしかないだろう。このチャンスを見逃す理由もない」と同氏は予測する。
前バージョン「Hyper-V 2.0」の機能が分かる記事
ライブマイグレーション機能の改善
ライブマイグレーション機能の改善もユーザーの注目を集めた。ライブストレージマイグレーションは、Windows Server 2008 R2のQuick Storage Migration機能を大幅に改良したものだ。現行のライブマイグレーション機能では移行作業時にダウンタイムが生じる。Microsoftがストレージパートナーと共同でストレージマイグレーション機能をストレージアレイハードウェアに移植する計画もあるようだ。
またHyper-Vの新リリースでは、複数のライブマイグレーション作業を並行して実行する機能もサポートされる見込みだ。これは、現在Hyper-Vを業務で利用しているユーザーにとって朗報だ。
「マイグレーションの並列処理が作業効率を高めるのは間違いない」と話すのは、米Dartmouth Hitchcock Medical Centerの上級システムエンジニア、ロブ・マクシンスキー氏だ。「非常時でないときでも、われわれは常にホスト間でVM(仮想マシン)を移動することにより、ホストインフラのバランスを維持したり、インフラの更新を行ったりしている。こういった並列処理機能は管理効率を高める」
今回紹介されたもう1つの新機能は、共有ストレージを使用せずに、ギガビットイーサネットコネクションだけでVMのライブマイグレーションを実行するというものだ。今のところ、共有ストレージを一切使用しないVMのライブマイグレーションをサポートしているハイパーバイザーは、米IBMのプロジェクトと連携した米Red HatのKVMだけだ。この新機能により、新たな環境で仮想化を利用できるようになる可能性がある。例えば、共有ストレージが必ずしも用意されていない中小企業やパブリッククラウドなどだ。
「しかしVMwareも、VMware vSphere 5とともに発表した仮想ストレージアプライアンス(VSA)で同様の問題に対処している」とウルフ氏は指摘する。VSAは最大3台のVMwareホストの内蔵ディスクから論理共有ストレージを作成する。この機能は、中堅・中小企業向けのvSphere 5の「Essentials」エディションでサポートされている。
ウルフ氏によると、現時点では、共有ストレージを使わないライブマイグレーションは、単に目新しい機能というだけのように思える」とウルフ氏は話す。「ユーザーはライブマイグレーションなどよりも、HA(高可用性)機能の方を重視している。ライブマイグレーションは定期的なメンテナンス用の機能だが、サーバの障害時に頼りになるのはHA機能だ」
拡張性の強化、基幹業務アプリの保護機能
Microsoftは次期リリースで、Exchange ServerやSQL ServerといったミッションクリティカルなアプリケーションをHyper-Vで利用できるようにするための新たな拡張機能も予定している。各ゲストOSは最大32個の仮想CPU(vCPU)と512Gバイトのメモリをサポートする。従来版では4個のvCPUおよび8Gバイトのメモリという制限がある。CPUの数ではVMware vSphere 5(参考:VMware vSphere 5の新機能)およびXenServer 6.0(参考:ここまで分かった! XenServer 6.0の新機能)がサポートするCPU数と対等になるが、両プラットフォームはいずれも1Tバイトの仮想メモリをサポートする。
Hyper-V 3.0は、1クラスタにつき32以上のノードおよび4000個のVMをサポートする。新しい仮想HDDフォーマットである「VHDX」は、2Tバイト以上のストレージボリュームをサポートする。
ラバリー氏によると、こうした拡張性の強化により、社内で運用しているSQL Serverを仮想化できるようになるという。Exchange Serverも仮想化できる可能性があると同氏は期待する。「当社で最小規模のSQL Serverは16コア、最大規模のSQL Serverは32コアのシステムを使用している。4個のvCPUでは話にもならない」と同氏は話す。「当社でまだ物理マシンに縛られているのはSQL ServerとExchange Serverだけだ」
マクシンスキー氏によると、Microsoftが2011年、Worldwide Partner Conference(WPC)で披露したホストベースの内蔵レプリケーション機能「Replica」は、ミッションクリティカルなアプリケーションを運用し、支店・支社をフェイルオーバーのターゲットとして利用している企業にとって重宝するという。「Replicaは本格的なレプリケーションフェイルオーバー型バックアップ環境ではないように思える」と同氏は話す。ネットワーク帯域の問題があるからだという。「しかし事業継続や迅速な障害復旧に不可欠なバックアップ環境の要素は備えているようだ」
見えてきたVMwareの背中?
VMware vSphere 5で導入されたVMwareのライセンス方式(参考:ユーザーが物議を醸す、VMware vSphere 5の新しいライセンス)に不満を抱くユーザーの中には、Hyper-Vへの乗り換えを検討している人もいる。Hyper-Vのライセンスは、既に多くの企業が保有しているWindows Serverのライセンスに含まれている。
「VMwareはライセンスモデルで自分の首を絞めている」と話すのは、Fortune 300クラスの保険会社でシステム管理者を務めるクリスチャン・メッツ氏だ。「誰と話をしても、Hyper-Vはかなり良さそうだと言っている。大企業の間でも評価が高い」
「保守契約が切れた時点でVMwareを使うのを止めることを検討するだけの魅力がHyper-Vにはある」──TechNetブログでHyper-Vの新機能をチェックした米Claycoの上級システムエンジニア、サッド・ボーン氏はそう話す。「管理の時間を増やすことなく私の業務ニーズに対応でき、しかも運用経費を削減できるのであれば、これは賢明な選択と言えそうだ」
一方、Gartnerのウルフ氏は、Hyper-Vが支配する時代はまだ遠いと考えている。仮想化プラットフォームを入れ替えるということになれば、ハイパーバイザー以外のことも考慮しなければならないからだ。多くのユーザーは、VMware用に開発されたサードパーティーのセキュリティモニタリング/バックアップツールや手法を使っているのだ。
「Microsoftが賢いのであれば、同社の次世代のサーバアプリケーションに多数のフックを装備し、Exchange ServerやSQL ServerといったアプリケーションがWindows Server 8をベースとするHyper-V上できちんと動作するようにするだろう」とウルフ氏は話す。「ユーザーが大挙してHyper-Vに乗り換えるという状況にはならないだろうが、個々のアプリケーションの更新時期に合わせてHyper-Vを戦略的に利用し始めるといった形の漸進的な移行になる可能性はある」
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