2008年6月26日にMicrosoftの最新サーバ仮想化ソフトウェア「Hyper-V」が正式にリリースされた。本稿では、注目を集めるHyper-Vの全体像を明らかにする。
Hyper-Vは、Microsoftが開発コード名「Viridian」として開発を続けてきた最新サーバ仮想化ソフトウェアである。これは、1つの物理ハードウェア(PCサーバ)上で複数の仮想サーバを同時に実行するソフトウェア技術である。古くからメインフレームでは当たり前のように利用されていた技術であるが、近年の急速なハードウェア性能の向上や環境問題に対する意識の高揚などで、PCサーバの世界でも注目され急速に拡大している。
Hyper-Vは、最新のサーバOSである「Windows Server 2008」の基本機能の一部として提供されている。この点がHyper-Vの最大の特徴といっても過言ではない。機能面に限定すると先行するVMwareほど多機能ではないが、ハイパーバイザー型の本格的な仮想化プラットフォームを、慣れ親しんだWindowsの知識・操作で簡単に利用できる点はHyper-Vの大きな価値といえよう。
Windows Server 2008にはHyper-V β版が含まれていたが、今回の正式リリースでアップデートプログラムが公開され、いよいよ正式にHyper-Vが使用できるようになった。
Hyper-Vを導入するハードウェアは、次の3つの条件を満たす必要がある。
ここ数年間に販売されたサーバ(最新機種含む)であれば、ほぼこの条件を満たすと思われる。ただし、この条件を満たしていても過去の機種でHyper-Vを正式サポートするかどうかは、事前に確認が必要である。
仮想化技術はその実装方法により、「ホストOS型」と「ハイパーバイザー型」の2つに大別される。
ホストOS型の仮想化方式では、ホストOS上で動作するアプリケーションとして仮想化機能を実装する。代表的なホストOS型の仮想化ソフトウェアとして、「Microsoft Virtual Server」や「VMware Workstation」などが挙げられる(図1)。
ハイパーバイザー型の仮想化方式では、ハードウェアとOS 間にハイパーバイザーと呼ばれる薄いソフトウェア層がある。ハイパーバイザーは、上位で動作するゲストOSに高い独立性を持ったパーティション分割機能を提供する(図2)。また、ホストOS型の仮想化実装に比べて、高いスケーラビリティとパフォーマンスを提供する。
Hyper-Vはハイパーバイザー型に分類される。「VMware ESX」や「Xen」もハイパーバイザー型の仮想化ソフトウェアである。
ハイパーバイザー型は、「モノリシック型」と「マイクロカーネル型」に分類できる(図3)。
モノリシック型は、デバイスドライバをハイパーバイザー層に実装する形態である。VMware ESXはモノリシック型を採用している。
一方、マイクロカーネル型は、ハイパーバイザー層と特別な権限を持った「管理OS」を使用する。Hyper-VとXenはマイクロカーネル型に分類され、両者の構成は非常によく似ている。管理OSの部分をHyper-Vでは「親パーティション(Parent Partition)」と呼び、ゲストOSが実行される環境を「子パーティション(Child Partition)」と呼ぶ(※)。マイクロカーネル型では、ゲストOSで生じたすべてのI/Oは管理OSのデバイスドライバをそのまま利用して処理される。
※編注:それぞれ、Xenのドメイン0(Domain-0)とドメインU(Domain-U)に相当する。
一概にどちらの実装が優れているかという議論は難しいが、モノリシック型で新しいハードウェアをサポートするには、ハイパーバイザー層での対応(修正)が必要になる。逆にマイクロカーネル型は、ハイパーバイザーとサードパーティー製のドライバが分離されている。管理OSに対応したドライバならばシステムに組み込むことができるため、新しいハードウェアへの対応が柔軟に行える点で優れている。Hyper-Vでは、Windows用のドライバが利用できる。
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