前バージョンVMware vSphere 4との違いに着目
【製品紹介】ライセンスのカウント方法も分かる! VMware vSphere 5の全貌
VMware vSphere 5は、前バージョンのVMware vSphere 4とどこが違うのか。VMware vSphere 4から追加・拡張された機能、削除された機能、ライセンスの変更点に着目してVMware vSphere 5の全貌を詳解する。
VMware vSphere 5で何が変わったのか
ヴイエムウェアが公開している資料「VMware vSphere5の新機能」に記載されている通り、インフラストラクチャサービス、アプリケーションサービス、管理サービスの3つのサービスでそれぞれ機能が追加、変更、拡張されている。上記資料では1枚のスペースに新機能を全て盛り込んでおり、VMware vSphere製品を理解しているSEでも分かりにくいものになっているため、もう少しかみ砕いて説明しよう。
新たに追加された機能
1.コンピューティング
(1)VMware ESXi:ハイパーバイザーを統一
VMware vSphere 4までは、ハイパーバイザーにはVMware ESXとVMware ESXiの2種類が存在した。VMware ESXiは無償で利用できるライセンスが存在したため、よくVMware ESXは有償製品、VMware ESXiは無償製品という誤った認識をされていた。
VMware ESXiはVMware ESXに存在するLinuxに依存した管理コンソール(Service Console)を廃止するなどハイパーバイザーとして必要な機能を絞って実装したことで、セキュリティやメンテナンスなどの管理性を向上した製品であり、VMware vSphere 5でようやくその真価を発揮できる位置付けになったといえよう。
もちろんVMware ESX/ESXiとも既にVMware vSphere 4からハイパーバイザーのコードは完全に共通化されているため、今回VMware ESXiだけになったからといって、今までVMware ESXで実現していた機能が削られたわけではない。
(2)VMware vSphere Auto Deploy:ハイパーバイザーの自動設定と起動
IntelのPXE Boot技術を応用し、物理サーバでハイパーバイザーをスタートアップすることなくVMware ESXiイメージをネットワーク経由で読み込み、VMware ESXiホストを起動する機能「VMware vSphere Auto Deploy」が実装された。これは1つの起動イメージを作成しておけば、VMware ESXiホストを追加する際にハードウェアを追加するだけで済むとともに、複数あるVMware ESXiホストへのパッチ適用は起動イメージだけに行い、その後は順次VMware ESXiを再起動するだけで全てのVMware ESXiホストに短時間でパッチ適用できる便利な機能である。
(3)Apple製品のサポート
従来Apple製品はCPUが異なるためIntel系CPUのサーバ上で仮想化することはできなかったが、現在では同じIntel系CPUの上でAppleのOSも動くため、VMware vSphere 5から正式にMac OS X Server 10.6(Snow Leopard)が動作するApple OS Xサーバをサポートすることになった。
2.ストレージ
(1)VMware Storage DRS:ストレージリソースの最適化
既にメモリやCPUでは負荷に応じてリソースを調整・最適化するDRS機能が用意されていたが、VMware vSphere 5ではその機能がストレージでも利用できるようになった。
「VMware Stprage DRS」ではストレージの使用率とI/Oレイテンシを常に監視し、しきい値を超えると、VMware Storage vMotion機能を使用して、プールされたデータストア内の別のデータストアに仮想マシンのイメージを完全自動または手動で移すことができる。
(2)Profile-Driven Storage:ストレージに対するプロファイル適用
「Profile-Driven Storage」は、仮想マシンごとにストレージ利用に対するSLA(Service Level Agreement)を決め、ポリシーとして設定することで、仮想マシンイメージを自動的にプール内の適切なストレージに配置できる機能だ。
この機能とVMware vSphere Storage DRSを組み合わせることで、仮想マシンの利用者に対してストレージ利用のSLAを守れる環境を提供できるようになった。
3.アプリケーション サービス
- VMware ESXiのファイアウォール
VMware vSphere 4までは、VMware ESXにはファイアウォール機能が実装されていたがVMware ESXiには実装されていなかった。VMware vSphere 5ではVMware ESXがなくなりVMware ESXiに統一されたため、VMware ESXiに新たにファイアウォール機能が搭載された。
4.管理サービス
(1)VMware vSphere Web Client
仮想マシンをクライアントPCのWebブラウザで管理する機能。VMware ESXで提供されていたWeb Accessとほぼ同じものが、VMware vSphere 5では「VMware vSphere Web Client」として提供された。
(2)VMware vCenter Server Appliance(VCSA)
今までは別途Windows Server環境を用意する必要があったVMware vCenter Serverがアプライアンスという形でも提供される。具体的には、Linux(SUSE)ベースの環境にVMware vCenter Serverを構築した環境を、VMware vSphereの仮想アプライアンスとして提供する。OVF形式の仮想アプライアンスをVMware ESXiホストにインポートするだけで、すぐにVMware vCenter Serverを使用できる。
ただし、既存のVMware vCenter Serverのフル機能はサポートされておらず、幾つかの機能は使用できない。また、管理できるVMware ESXiホストおよび仮想マシンの台数に制限(物理的に制限はされていないが推奨される台数としての目安が存在)があるため、利用する環境に合っているかを判断する必要がある。
変更、または拡張された機能
1.コンピューティング
- 仮想マシンフォーマットの変更(Version 8)
Windows 7などで採用されたWindows Aero向け3Dグラフィックがサポートされた。また、USB 3.0を仮想マシンで利用できるように仮想マシンのフォーマットが機能拡張され、バージョンも8にアップした。
2.ストレージ
(1)VMware vSphere File System(VMFS)の変更(バージョン5)
VMware vSphere 5で拡張されたストレージに関する機能をサポートするために、「VMware vSphere File System」(VMFS)がバージョン5にアップした。また、1VMFS当たりのデータストアサイズも2Tバイトから64Tバイトまで利用できるよう拡張されている(ブロックサイズは1M~8Mバイト)。
VMware vSphere 5では今までのVMFS 3も使用できるが、その場合VMware vSphere 5で追加や拡張された機能を利用することができない。
(2)VMware vSphere Storage I/O Control(SIOC)の拡張
VMware vSphere 4から利用可能になった「VMware vSphere Storage I/O Control」(SIOC)は、VMware vSphere 5ではNFSでも利用できるように拡張された。これによって新機能Profile-Driven StorageでもHCL(Hardware Compatibility List)に記載されている全てのアレイ装置とファイバーチャネル(FC)、NFS、iSCSIプロトコルでSIOCが利用できる。
(3)Storage APIプログラムの拡張
ストレージ関連の新機能は、APIでサポートされたことはもちろんのこと、「VMware vSphere Storage API for Array Integration」(VAAI)によって、サードパーティー製品のディスクアレイとVMware vSphere 5が直接APIで通信できるようになった。そのため、対応しているストレージ製品で余計な処理を介在させずにパフォーマンスを向上できる。
3.ネットワーク
(1)VMware Network I/O Controlの機能拡張
VMware vSphere 4ではネットワークトラフィックを6種類のネットワークリソースプール(FT Traffic、iSCSI Traffic、vMotion Traffic、Management Traffic、NFS Traffic、Virtual Machine Traffic)に分けて取り扱うことができたが、I/Oコントロールはネットワークリソースプール単位にリミット値とシェア値が指定できるだけで、例えば仮想マシンごとにリミット値とシェア値を指定することはできなかった。
VMware vSphere 5ではこれらの6種類の中のVirtual Machine Trafficが複数設定可能になり、仮想マシンごとにI/Oコントロールができるようになっている。
また、クラウド環境でのテナントごとのリソース割り当て保証、802.1Qタグを使用した仮想環境と物理環境のサービス品質の連携なども実現可能になっている。
(2)VMware vSphere Distributed Switchの機能拡張
「VMware vSphere Distributed Switch」は、複数のVMware ESXiホストに1つの大きな仮想スイッチを提供できる機能。NetFlowが利用できるようになったことで、ネットワーク監視と仮想マシントラフィック監視ができるようになり、視認性の向上が図られた。VMware vSphere 5ではCDP(Cisco Discovery Protocol)の他にLDP(Link Layer Discovery Protocol)もサポートされ、ネットワーク接続の確認が容易になった。
その他、SPAN(Switch Port Analyzer)機能もサポートされたため、VMware vSphere 4まではネットワークのトラブルや監視が難しかったが容易にネットワークの監視ができるようになった。
(3)VMware vMotionパスの拡張
VMware vSphere 4まではVMware vMotionパスは1本だけ設定できたが、VMware vSphere 5では複数のVMware vMotionパスを設定できるようになり確実性が増した。
4.アプリケーションサービス
(1)vSphere High Availability(HA)の変更
VMware vSphere 4とVMware vSpehre 5のVMware HAでは、HAクラスタを構成できる台数は32台と変わらないが、その構成は異なる。
VMware vSphere 4ではプライマリーとセカンダリの関係でHAクラスタを構成する必要があったが、VMware vSphere 5ではマスターとスレーブという関係に変更になった。具体的には、VMware vSphere 4では最大5台までのプライマリーホストが構成され、その中の代表プライマリーホストがHA環境を管理する。その代表プライマリーホストがダウンした場合は残りのプライマリーホストが引き継ぐ形だった。VMware vSphere 5では、HAクラスタの中のマスターとなる1台のホストが中心になるが、そのマスターがダウンしても残りのスレーブがHA環境を継続して監視するため、VMware vSphere 4のようにプライマリーホストが全てダウンしてしまった場合を考える必要はなくなった。
また、VMware vSphere 4までは管理ネットワーク経由でしかハートビート監視ができなかったが、VMware vSphere 5では共有しているデータストアを使用したハートビート(ハートビートデータストア)も利用できるようになった。そのため、管理ネットワークが全て途絶した場合でも、データストア経由でハートビート監視ができている場合は、HAクラスタがスプリットブレイン状態になることはない。
(2)仮想マシンに設定できるリソースサイズの変更
VMware vSpehre 5の仮想マシンではVMware vSphere 4の仮想マシンの4倍のリソースを割り当てられる。仮想マシンに割り当てることができるvCPU数は32個、メモリサイズは1Tバイトまで可能である。
(3)ホストが利用できるリソースサイズの変更
VMware vSphere 5が稼働するホストはVMware vSphere 4と比べ、論理CPU数は160から240に、利用可能メモリ容量(搭載メモリの中で利用できるメモリ容量)も1Tバイトから2Tバイトに拡張された。
削除された、または使えなくなった機能
1.VMware vSphere関連ツール
(1)VMware Consolidated Backup(VCB)の提供終了
VMware vSphere 4時代にも予告されていたが、VMware vSphere 5から「VMware Consolidated Backup」(VCB)の提供が終了した。VMware vStorage APIs for Data Protection(VADP)が公開され、サードパーティーでVADPを使用したバックアップ製品が出そろってきたためだ。
(2)プラグインとして用意されていたVMware vCenter Converterの提供終了
VMware vSphere 4ではプラグインとして実装されていた「VMware vCenter Converter」がVMware vSphere 5では提供されない。そのため、VMware vSphere 4までのようにVMware vCenter Serverで物理マシンをP2Vすることはできない。
(3)vCenter Update Managerの廃止
以前から日本では利用できなかった機能のため影響はないが、VMware vSphere 4で提供開始された、仮想マシン内のゲストOSへのパッチ適用ツールが廃止された。
ライセンスのカウント方法とダウングレードに関する重要な留意点
機能の追加、拡張、変更、削除の他、大きく変わったのがライセンスの考え方である。ここではかいつまんで説明するので、詳細はヴイエムウェアのWebサイトやVMware製品を取り扱っているパートナー企業に確認してほしい。
1.ライセンスのカウント方法
VMware vSphere 4までは搭載CPU数(ソケット数)でライセンスの数、搭載CPUのコア数でエディションが変わる形(6コア以上はAdvanced、Enterprise、Enterprise Plusのみ)だったが、VMware vSphere 5ではそれらに加えてvRAM(※)の使用量に応じたライセンスの追加が必要となった。このvRAM値には上限値が設定されており、その値を超えた分のライセンスを追加購入することになる(表1)。
(※)vRAMとは、仮想マシンに割り当てた仮想メモリの合計
| Standard | Enterprise | Enterprise Plus | |
|---|---|---|---|
| 上限値 | 32Gバイト | 64Gバイト | 96Gバイト |
仮想マシン当たり96Gバイト以上のメモリを設定していた場合、その仮想マシンは96GバイトのvRAMを持つマシンとして計算する
ライセンス購入は仮想マシンが使用している1日当たりのvRAM最大使用量を12カ月間で平均した値を基準とする
vRAM値にはvRAMプールという考え方があり、仮想マシンのvRAM合計が所有しているライセンス数で合計されたvRAM容量値より下回っている場合、使っていないライセンスをハードウェアに適用しなければ他のVMware ESXiホストでvRAM値として使用できる。
例えば、キット製品であるEssentials kit、Essentials Plus kitは最初から2CPUのライセンスが3つ付属しているため、その時点で使用できるvRAM容量は192Gバイトとなる。VMware ESXiホストが2台しかない場合は、その2台でvRAM値は192Gバイト利用できる(表2)。
| Essentials | Essentials Plus | |
|---|---|---|
| 上限値 | 192Gバイト | 192Gバイト |
キットには既に2CPUで3台分のVMware ESXiのライセンスがある。ライセンス購入時のvRAMのプールは合計192Gバイトである
2.VMware vSphere 4へのダウングレード時のライセンス
VMware vSphere 5が登場すると、VMware製品を販売するベンダーによっては旧製品のVMware vSphere 4の取り扱いを止めるところも出てくる。しかし既存の環境にVMware ESXを追加したい場合は、どうしてもVMware vSphere 4のライセンスが必要になる。この場合、ダウングレードによってVMware vSphere 4のライセンスを取得できる。ダウングレードパスの詳細は表3を参照されたい。
| VMware vSphere 5 | VMware vSphere 4 |
|---|---|
| Standard | Standard |
| - | |
| Enterprise | Enterprise |
| Enterprise Plus | Enterprise Plus |
| Essentials kit | Essentials kit |
| Essentials Plus kit | Essentials Plus kit |
ダウングレードで注意する点は、VMware vSphere 5にはAdvancedエディションがないことである。VMware vSphere 4でAdvancedを使用している場合は、上位のEnterpriseが必要になる。
3.VMware vSphere 4環境からのアップグレード時のライセンス
VMware vSphere 4の環境をVMware vSphere 5の環境にアップグレードする場合、ライセンス自体はヴイエムウェアのWebサイトで再取得が可能だが、アップグレードパスが決まっているため注意が必要である。アップグレードパスは表4を参照されたい。
| VMware vSphere 4 | VMware vSphere 5 |
|---|---|
| Standard | Standard |
| Advanced | Enterprise |
| Enterprise | Enterprise |
| Enterprise Plus | Enterprise Plus |
| Essentials kit | Essentials kit |
| Essentials Plus kit | Essentials Plus kit |
以上、VMware vSphere 5で変わった点を中心に説明をしてきたが、VMware製品の取り扱いベンダーによってはローカルルールのようなものがある場合もあるため、VMware vSphere 5を利用する際には必ず製品を購入するベンダーに再確認をしてほしい。
また、今回登場したVMware vSphere 5については、デスクトップ製品であるVMware Workstation 8およびVMware Player 4.0上で動作させることが可能(これらの2製品はIntel VT-x、AMD-Vをエミュレートしている)なため、高価なサーバを用意せずにこれらの製品を利用して仮想環境上にVMware vSphere 5環境を構築し機能を評価することも可能である。このようなことができるのも仮想化製品として一歩先を行っているVMware製品らしい。
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