「インターネット禁止」と「サイト閲覧許可」を両立
標的型攻撃の被害も防ぐ? 「プレゼンテーション仮想化」の意外な効果
情報漏えい対策としてインターネットへのアクセスを禁止したいが、社外のWebサイトの閲覧は許可したい。こうした相反する2つのニーズを同時に実現する手段が存在する。
特定の企業や組織を狙い撃ちにしたサイバー攻撃である「標的型攻撃」の対策は一般に困難だといわれる。その主な理由は、通常のメールや未知のマルウェアが攻撃手段として利用されるケースが多いからだ。このため、ファイアウォールやウイルス対策ソフトなど、攻撃や感染自体を防ぐ従来型の対策だけでは十分でない。
仮にマルウェアに感染しても、機密情報の漏えいだけは防ぎたい。そのための手段として重要性が高まっているのが、重要な情報の流出を水際でブロックする「出口対策」だ。
出口対策と一口にいっても、フィルタリングや暗号化などさまざまな手段がある。その中でにわかに注目を集めているのが、クライアント環境の仮想化技術の1つである「プレゼンテーション仮想化」を利用した対策だ。プレゼンテーション仮想化が標的型攻撃に対してどういった効果を持つのか。シトリックス・システムズ・ジャパンでプレゼンテーション仮想化製品を担当する山田晃嗣氏に聞いた。
標的型攻撃を防ぐ出口対策には課題が
山田氏は主な出口対策として次に紹介する手段を挙げ、それぞれに課題があると指摘する。
(1)プロキシサーバの設置
プロキシサーバを経由しない通信を遮断する。プロキシサーバ経由での通信ができないマルウェアに感染した場合に効果がある。ただし「プロキシサーバを経由しても社外と通信できるマルウェアもあり、万全とはいえない」と、山田氏は効果に疑問を呈する。
(2)Webフィルタリング
危険なWebサイトにアクセスさせない「ブラックリスト」や安全の確認が取れているWebサイトのみにアクセスさせる「ホワイトリスト」などで、Webサイトの閲覧を制限する。ブラックリストを利用する場合、悪意のあるWebサイトが新たに登場するごとにリストを更新する必要がある。一方のホワイトリストによる制御は、業務に必要なWebサイトの閲覧まで制限してしまうケースがある。
(3)システムログやネットワークトラフィックの監視
システムやネットワークを定期的に監視することで、攻撃の兆候をあぶり出す。シグネチャを利用したパターンマッチングで攻撃を検知するIDS(侵入検知システム)などの製品もこうした役割を担う。課題は、「ログやトラフィックを継続的に監視するための人的リソースの確保に加え、専門的なノウハウの獲得が必要になることだ」と山田氏は指摘する。危険な兆候を見つけた際にどう対処するかを検討することも必要になる。
(4)インターネットへのアクセス全面禁止
山田氏が「現状でただ1つの完全な情報漏えい対策」と言い切るのが、インターネットへのアクセスを完全に禁止することだ。確かに効果は大きいが、インターネット経由のWebサイトの閲覧やメールの送受信が完全にできなくなることから、企業によっては業務に支障が出る可能性がある。
山田氏によると、例えば米国の国防情報局などはネットワークを2系統用意。LANアクセス用とインターネットアクセス用のインフラを完全に分離することで安全性と利便性を両立しているという。だが「多大なコストが掛かるため、こうした対策ができる企業は一部に限られる」のが現状だ。
※訂正履歴:掲載当初、「防衛省はネットワークを2系統用意」と記載していましたが、正しくは「米国の国防情報局などはネットワークを2系統用意」です。本稿は修正済みです。おわびして訂正いたします。(2011/12/22 12:10)
プレゼンテーション仮想化で情報漏えいを防ぐ
インターネットへのアクセス経路を完全に封鎖したいが、社外のWebサイトは閲覧できるようにしたい――。こうした相反する2つのニーズを同時に実現する手段として有効なのが「プレゼンテーション仮想化」だと山田氏は主張する。
「サーバサイドアプリケーション仮想化」とも呼ばれるプレゼンテーション仮想化は、クライアントPCでアプリケーションを稼働させるのではなく、サーバで稼働するアプリケーションの画面のみをクライアントPCに転送する技術のことだ。プレゼンテーション仮想化はシトリックスの「Citrix XenApp」などの製品に加え、Windows Serverの機能である「Remote Desktop Services」で実現できる。
プレゼンテーション仮想化を使って情報漏えいを防ぐ具体的な方法は次のようになる。まず、DMZ(ファイアウォールによって隔離された区域)などの安全な場所にプレゼンテーション仮想化の専用サーバを設置。その専用サーバでWebブラウザを稼働させ、クライアントPCにはWebブラウザの画面のみを転送する。プレゼンテーション仮想化専用サーバはメールシステムなど社内の他のシステムとは遮断し、仮に攻撃を受けたとしても被害を拡大させない。クライアントPCはLAN内の通信のみ許可する。「これによりインターネットへのアクセス経路を完全に封鎖しつつ、社外のWebサイトが閲覧可能になる」
メガバンクもプレゼンテーション仮想化で安全性確保
プレゼンテーション仮想化を利用した情報漏えい対策の事例は幾つかあると山田氏は説明する。例えばあるメガバンクは「インターネット閲覧システム」という位置付けでプレゼンテーション仮想化を導入していると山田氏は明かす。社内の勘定系システムとインターネットを分離するために、プレゼンテーション仮想化を利用している銀行もあるという。
「銀行はもともとセキュリティの観点から、社外のWebサイトの閲覧を禁止するケースが多かった。だが業務に必要なWebサイトを閲覧したいという現場のニーズの高まりに呼応し、プレゼンテーション仮想化の導入に踏み切る銀行が増えつつある」
プレゼンテーション仮想化導入のネックは?
プレゼンテーション仮想化を情報漏えい対策として活用するメリットは大きい。一方で導入に当たっては検討すべき課題もある。
まずWebブラウザがクライアントPCにインストールされていないため、エンドユーザーの設定の自由度は低くなる。ただし「企業のセキュリティ管理者にとっては、アプリケーションのセキュリティを一元管理できるという利点になる」。
「Webフィルタリングなどのセキュリティ対策と比べると、導入コストは一桁上がる」という、導入費用の高さもネックになる。だがプレゼンテーション仮想化が役立つのはセキュリティ対策だけではない。「プレゼンテーション仮想化が持つ他のメリットも含めて検討してもらいたい」と山田氏は訴える。例えばWindows 7などの新しいOSで、古いOSでしか稼働しないアプリケーションを画面転送で利用できるなどのメリットがあるという。「特にInternet Explorer 6をWindows 7で利用したいというユーザー企業のニーズは根強い」と山田氏は強調する。
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