クラウド移行をためらわせる課題
Office 365導入のネックは基幹業務アプリとの相互運用
MicrosoftはOffice 365の強化を着々と進めているが、移行を決断できない企業は少なからず存在している。企業の懸念は既存基幹業務アプリケーションとの連係と、各サービス利用の「合計金額」だ。
米Microsoftは最近、クラウドベースのコミュニケーション&コラボレーションスイート「Office 365」の強化を図り、30の新機能を追加することを発表した。しかし、依然としてオンプレミスアプリケーションからOffice 365に移行する動きは鈍い。
主なネックは、基幹業務(LOB)アプリケーションや垂直市場向けアプリケーションとの相互運用性に関する懸念と、クラウドベースサービスに伴う予想外のオンライン関連費だ。
米会計事務所のTamiyasu, Smith, Horn & Braunのパートナー、スーザン・ブラッドリー氏は、「運用中のLOBアプリケーションが5年前、さらには10年前のものだったら、最新バージョンにアップグレードしないと、(クラウド版の)SharePointとは連係できないかもしれない。弊社の場合は会計アプリケーションになるが、垂直市場向けのアプリケーションについても同じことがいえる。例えば、64ビット版のWindows 7に対応しているかなど、基本的なことを確認しなければならない」と話す。
また、ブラッドリー氏に限らず、1年を通して累積されていくOffice 365やさまざまなクラウドベースのサービスに伴うオンライン関連費もIT担当者の懸念材料の1つだ。この手の費用は、オンプレミスアプリケーションを使うと、最小限に抑えられる傾向にある。
「弊社では、従来のファットクライアントを利用していて、一度料金を支払ったら使えなくなるまで使い続けるモデルに慣れている。(Office 365で)サブスクリプションモデルに移行すると、税の調査に必要なクラウドベースのサービスなど、額は少なくてもさまざまなサービスの利用料が毎月発生する。これは積もればかなりの額になる。1年の終わりに、支払いの内容と会社にとっての価値を吟味しなければならないだろう」と、ブラッドリー氏は語る。
オンプレミスアプリケーションをOffice 365に移行すると、確立されたワークフローが大幅に変更され、現在のシステムを長年使ってきた社員の生産性が低下するのではないかと心配する管理者もいる。社員の再教育には時間だけでなく、コストも掛かる。
米大手銀行の上級IT管理者を務めるユージーン・リー氏は、「このような変更に際しては、まず、ワークフローがどう変わるか、誰が最も影響を受けるかを調べる」と話す。「古くからいる社員が、これまで使っていたオンプレミスのアプリケーションと同じように操作できることが重要だ。それができなければ、1つずつ操作手順を指示しなければならなくなる。ベストな結論を出すには、経験の長いスタッフを基準に考えた方がよい」(同氏)
ITコストの削減が見込まれても、ユーザーがOffice 365の導入を渋る別の理由は、やはり、セキュリティとコンプライアンスに関する懸念が解消されていないことだ。ただし、これは、米San Antonio Kidney Disease CenterでIT管理者を務めるフィリップ・L・モヤJr.氏には当てはまらないようだ。モヤ氏は、登録済みのOffice 365のβ版を実際に試す時間が取れずにいるものの、前向きに考えている。
「費用を削減できるかどうかを知りたい。また、ブラウザベースになるので、アプリケーションのインストールに煩わされることもない」とモヤ氏は話す。さらに同氏は、実際の料金は、決まってベンダーの話よりも高くなることを認識した上で、「費用を大幅に節約できる可能性がある」と考えている。
また、Microsoftは前述の新機能の発表と併せて、米Campbell Soup Companyおよび仏ファッション雑誌社Groupe Marie-Claireとの契約を締結したことも発表している。Campbellは世界各地のオフィスを結ぶ機能的なコラボレーション環境を構築すること、Marie-ClaireはメールサービスおよびWindows PCとMac間のドキュメント共有に利用することが、Office 365を採用した理由だ。
Office 365の新機能
Office 365に追加される30の新機能には、次のような機能がある。
管理者自身による管理者パスワードのリセット
管理者が自分で、テキストメッセージと連絡用メールアドレスを使って、管理者パスワードをリセットできる。
Mac用Lyncクライアントのサポート
Office for Mac 2011 StandardとLyncの使用権がある場合、Lync for Macをダウンロードできる。
Windows Phoneのサポート
Windows Phone搭載端末を使って、好きな場所からSharePoint Onlineのドキュメントにアクセスおよび更新できる。
マスターデータソースの切り替え
DirSyncコンポーネントのオンとオフを切り替えることで、ユーザーのマスターデータソースをオンプレミスにするかクラウドにするかを制御できる。
新機能の中で最もIT担当者に歓迎されている機能は、管理者自身でパスワードをリセットできる機能のようだ。ブラッドリー氏は「今のOffice 365では、47人いる(管理権限を持つ)ユーザーの誰かがパスワードを忘れるたびに、私に連絡しなければならない」と話す。パスワードを忘れた本人がリセットできれば、その分、IT担当者の手間が省かれるというわけだ。
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