iPhone/Android携帯の対抗馬はコンシューマー寄り
「Windows Phone 7」は企業市場参入に間に合うか?
スマートフォン市場への参入でAppleやGoogleに大きく後れを取ったMicrosoft。果たしてWindows Phone 7でこのビハインドを挽回できるだろうか?
携帯電話用OS各社の間では、相変わらず目まぐるしい駆け引き合戦が演じられている。米Microsoftはいよいよ登場した「Windows Phone 7」搭載端末で自信を取り戻すとともに、コンシューマーに訴求することを狙っている。
その一方で、モバイルOSのライバルである米Appleと米Googleはコンシューマー分野で事業を拡大した勢いに乗ってMicrosoftの得意分野にも進出し、同社にとって大きな脅威となりつつある。問題は、携帯電話用OS市場への進出で何度かつまずいたMicrosoftが、AppleのiPhoneおよびGoogleのAndroid携帯のお株を奪うような魅力をWindows Phone 7で提供できるのかということだ。
「もちろん大丈夫だ」──Microsoftのチャンネルパートナーはそう考えているようだ。ただし、Windows Phone 7携帯が直感的なユーザーエクスペリエンス、充実した機能、セキュアで安定したプラットフォーム、そして魅力的なアプリストアを提供できることが条件だ。
Microsoftの認定ゴールドパートナーで、同社の2009年度の年間最優秀モビリティソリューションパートナーの米Client Strategy Groupのジョエル・ピエトラントッツィ氏は「重要なのは端末そのものではなく、アプリケーションが充実しているかどうかだ」と話す。Microsoftにとっての課題は、アプリ分野での出遅れを取り戻すとともに、企業向けのアプリケーションでライバルをしのぐことだという。
Windows Phone 7はアプリ不足を解消できるか
Windows Phone 7端末には「Microsoft Office Mobile」が標準で組み込まれる。これには、Word、Excel、OneNote、PowerPointなどのOfficeプロダクティビティアプリケーションのモバイル版および「SharePoint Workspace Mobile」が含まれる。
Windows Phone 7はWindows Liveとの連携も視野に入れた設計となっており、Exchange ActiveSync経由でHotmailに無線で接続できるほか、MessengerやSkyDriveなどのWindows Liveサービスとも連携する。Windows Phone 7とWindows Liveを組み合わせれば、同OS搭載端末とPCとの間で同期を実現できるほか、紛失したWindows Phone携帯の追跡およびロック、保存されたデータのリモート消去なども可能だ。これらは企業ユーザーに訴求するセキュリティ機能である。
最新版のWindows Phoneではユーザーエクスペリエンスも大幅に改善された、と多くの人々が指摘する。
会計ソリューションを専門とする米Propelware社長兼CTO(最高技術責任者)のジョー・ドワイアー氏は「Windows Phone 7携帯は非常に魅力的だが、Microsoftはソーシャルメディアに興味がある若年ユーザーをターゲットにしているようだ」と指摘する。「従来版よりも確かにすっきりしており、使い勝手も良い」
Windows Phone 7の最初のバージョンがコンシューマー市場をターゲットとしているとみる向きは多い。カット&ペースト、入れ子式フォルダ、PDFファイルへの対応といった重要な企業向け機能が欠落しているからだ。しかしこういった機能は、Windows Phone 7携帯発売時点で用意されるか、それから数カ月以内に登場するWindows Phone 7の次期版で提供されると伝えられている。
「それで問題はない」と言うのは、Microsoftゴールドパートナーとしてカスタムソフトウェアの開発とITコンサルティングを手掛ける米Mantra Information Services創業者でCTOのモーリック・シャー氏。MicrosoftのOSの場合は、2番目あるいは3番目のリリースが登場するまで待つ顧客が多いからだ。
MantraではiPhoneとiPad用アプリケーション、Androidアプリケーション、ASP.NETアプリケーション、Javaアプリケーションなどの開発サービスを提供しているが、シャー氏によると、Windows Mobile携帯端末の既存ユーザーはWindows Phone 7を心待ちにしているようだ。iPhoneやAndroidを試す一方で、Microsoftの新モバイルOSのリリースを待ってきたユーザーも同様だという。
「これらのユーザーの多くは現在、Windows Phone 7を最初の選択肢として試したいと言っている」とシャー氏は話す。
なぜだろうか。
シャー氏によると、Androidプラットフォームはオープンであり、多くの企業はオープン性を好まないからだ。「企業はJavaやPHPよりも.NETを好む」と同氏。
iPhoneについていえば、同端末のハードウェアとOSへのアクセスがあまりにも厳しくコントロールされているというのが企業ユーザーの見方だ。iPhone向けのビジネスアプリも少ない。
加えて、AppleはiPhoneの唯一のメーカーであり、米国でのサービスは現時点で1社のキャリア(米AT&T)に限られている。これに対して、Windows Phone 7では多数のメーカーから端末が提供され、2社のキャリア(AT&Tと独T-Mobile)からサービスが提供される(なお、米Verizonは2011年、iPhoneを自社の端末リストに追加する予定だ)。
ピエトラントッツィ氏によると、Microsoftが企業市場でAppleとGoogleのバブルを崩壊させるには、企業市場における自社の優位性を生かすためにWindows Phone 7の機能を拡張し、ウェアハウジング、在庫管理、ダイレクトストアデリバリー、CRM、Dynamics ERPなどのアプリケーションに早期に対応することが特に重要なポイントだという。
「これらは、Microsoftが既存の市場シェアを生かせる分野だ。しかもAppleとGoogleはこういった市場でまったくシェアを持っていない」と同氏は語る。AppleやGoogleと異なり、Microsoftがこれまでずっと企業市場を重視してきたということを忘れてはならない。
Windows Phone 7携帯──出遅れたが、出さないよりはまし?
Microsoftのパートナー各社によると、同社に残された時間はあと12カ月ほどだという。
しばらく前までは、企業における携帯端末の選択肢は限られていた。BlackBerryしかなかったのだ。その後、一部の企業ではWindows Mobileも選択肢に含まれるようになった。しかし業界関係者によると、iPhoneの圧倒的な人気は企業の門戸をこじ開け、同端末が企業(そして社内ネットワーク)に進出したという。
「当社の企業顧客の間では、既に携帯電話ベンダーの選択肢が拡大している。まずiPhoneがその中に含まれ、最近ではAndroid携帯も入ってきた」と話すのは、Microsoftゴールドパートナーである米Enterprise MobileのCEO、モート・ローゼンタール氏だ。Enterprise Mobileでは、iPhone、Android、BlackBerry、Windows Mobile用の携帯端末環境をサポートしている。
ローゼンタール氏によると、顧客はWindows Phone 7を搭載した新しい携帯端末を待ち望んでいるという。一方、チャンネルパートナー各社は、MicrosoftがWindows Phone 7で成功するためには、情報提供、トレーニング、ソフトウェア開発キット(SDK)で競合他社を一歩リードするとともに、Windows Phone 7の開発コミュニティーを構築しなければならないと主張する。
「既にそういった動きが進んでいる」とシャー氏は話す。
スマートフォン市場の主戦場がアプリであるとすれば、Microsoftに対するパートナーのメッセージは「作れば結果が付いてくる」ということになるだろう。また、Windows 7タブレットの参戦も不可欠だ。
これまでMicrosoftは何度か失敗しており、今回こそWindows携帯で成功しなければ、もう後がないと指摘する人もいる。
「今回うまくいかなければ、彼らは長く険しい道のりを歩まなければならない。もうやり直しは利かないからだ」とPropelwareのドワイアー氏は語る。「彼らにとってこれが最後のチャンスだ」
本稿筆者のリン・ヘイバー氏はビジネスとIT記事のライター。マサチューセッツ州ノーウェル在住。
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