気になるセキュリティは? 「Windows Phone 7」のビジネス利用を考えるIT部門を悩ますコンシューマー仕様

Windows Phone 7にはMicrosoft OfficeやOutlookなどビジネス利用に向いたアプリが搭載されているが、果たして企業での採用に見合うだろうか?

2011年01月13日 07時30分 公開
[Jonathan Hassell,TechTarget]

 新年度予算が組まれ、従業員の携帯端末が古くなってきていることもあり、あなたの職場でも米Microsoftの「Windows Phone 7(WP7)」が話題になっていることだろう。だが、この新しいスマートフォンはビジネスで使えるだろうか? 恐らくまだそうと言い切れないだろう。

 今のところ、WP7はコンシューマー向け端末であり、ビジネスツールではない。MicrosoftのTechEd Wikiには以下のような説明がある。

 WP7は主にコンシューマー向け端末として開発されており、企業向きではないことを指摘しておく必要がある。結果的に、Windows Mobile 6.x端末に備わっている企業向け機能の多くがWP7では利用できない。

 Microsoftは、Exchange ActiveSyncのポリシーのWP7によるサポート状況一覧も同TechNet Wikiに載せている。このポリシーは端末からExchange Serverとそれに付随するリソースへの接続方法を定義したもので、安全な認証および暗号化のサポート、紛失または盗まれた端末のリモートワイプ、パスフレーズ要求などが含まれる。WP7の最初のリリースは、重要なExchange ActiveSyncポリシーのほとんどをサポートしていない。

 WP7のポリシーサポート不足は、多数の米国企業が利用しているカナダのResearch In Motion製BlackBerryのポリシーサポートの充実ぶりと非常に対照的だ。BlackBerryには、管理機能、強力なセキュリティおよび暗号化機能、従業員の端末を管理者が一元管理する機能が備わっている。

 そのため、BlackBerryをはじめとする他のモバイルプラットフォームの方が、全てとはいわないまでも、多くの企業に適しているといえる。

会員登録(無料)が必要です

 従業員が好むと好まざるとにかかわらず、企業の機密情報は無線経由で彼らのスマートフォンに流入している。情報管理のベストプラクティスは、そうした機密情報をやりとりするための端末はエンタープライズレベルのセキュリティを備えるべきであることを示している。これが、多くのIT部門が米AppleのiPhoneを採用したがらない──あるいはなかなか採用しない──理由なのだ。iPhoneはもともと、コンシューマー向けの端末だ。iPhoneにActiveSync対応などのビジネス向け機能が追加されたのは、第2世代、第3世代になってからのことだ。

 だが、WP7が音楽のダウンロードやFacebook、Twitterなどのコンシューマー向け用途にしか向いていないというのは的を射ていない。

 例えば、WP7搭載のOfficeアプリケーションは、間違いなく最上級のモバイルアプリだ。特に、OneNoteはデスクトップ版OneNoteおよびWindows LiveのSkyDriveサービスと非常にうまく連携でき、魅力的だ。また、WP7版Outlookは外回りが多い従業員にとって有能なサポートツールになる。このアプリには、例えば予定表ツールに付いているボタンで「I'm running late(遅刻します)」と簡単に送信できるなど、便利な機能がある。

 ここで一歩下がって広い視野で見てみよう。Microsoftのターゲット──および同社が得意とする領域──は、ずっとエンタープライズ市場だった。同社のOffice製品はビジネスパーソンへの配慮を示しており、フォーカスしているのはAppleやソニーが魅惑的な端末で狙っているコンシューマーではないのだ。MicrosoftはWindows、特にサーバ向けWindowsに集中管理機能とポリシー機能を追加している。このアプローチは善かれあしかれ、商業的成功につながっている。

 現行のWP7は、競合メーカーの端末で利用可能なビジネス向け機能の一部しか搭載していない。それどころか、Microsoftの従来のモバイルプラットフォームであるWindows Mobileの機能すら一部しかサポートしていない。そのため、企業のIT部門は次のような疑問を抱かざるを得ない。「WP7はうちの従業員に向いているのか? このバージョンを採用するべきなのか? 今後の携帯端末戦略にWP7を含めるべきなのか?」

 答えははっきりせず、“否”である可能性もある。

本稿筆者のジョナサン・ハッセル氏は米Sun Valley Groupの社長。コンサルティングの他、書籍の執筆や講演なども手掛ける。著書には、『RADIUS』『Learning Windows Server 2003』(以上O'Reilly Media刊)『Hardening Windows』『Windows Vista: Beyond the Manual』(以上Apress刊)などがある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...