トンネル接続で仮想ネットワークを構築
OpenFlowを対応機器なしで導入できる「オーバーレイ」
OpenFlowを導入したいが、OpenFlow対応機器を新たに導入するのは負担が大きい。こうした課題を解消するのが、米Big Switch Networksなどが推進する「オーバーレイ」技術だ。
OpenFlowネットワークには、一般的にダンスと同じく1組のペアが必要だ。OpenFlowコントローラー、そしてOpenFlowをサポートするネットワークスイッチである。Software Defined Network(SDN)のベンダーである米Big Switch Networksは、新しいネットワークオーバーレイ技術によってOpenFlowコントローラーのユーザーに無数のダンスパートナーを提供したいと考えているようだ。
Big Switchの新しいOpenFlowオーバーレイ技術は、同社のネットワーク仮想化アプリケーション「Big Virtual Switch」(現在β版)の一部だ。この技術は、OpenFlowに対応しているかどうかに関係なく、任意の物理インフラに仮想的なネットワークを構築できる。
ネットワークオーバーレイ技術は、OpenFlowに対応した仮想スイッチをトンネルで結ぶことで、既存の物理ネットワークに仮想的なネットワークを構築する。米Gartnerの調査担当副社長であるジョー・スコルーパ氏は「トンネルを利用すれば、既存のIPネットワークをそのまま残してオーバーレイを実現できる」と話す。
言い換えれば、OpenFlowやSDNにまだ対応していない米Cisco Systemsをはじめとするベンダーの従来型機器で構成されたネットワークであってもOpenFlowベースのSDNを構築できるということだ。
Big Switchの共同創業者で、販売とマーケティングを担当するカイル・フォースター副社長は、「各パケットの最初または最後のホップがOpenFlowに対応していれば、当社の技術を利用することにより、ネットワークの残りの部分をトンネル接続できる」と説明する。「SDNのメリットはたくさんある。サブネットやVLANの存在にかかわらず、ネットワークの任意の場所に仮想マシンを置くことができる。しかも、これらを既存の物理ネットワークを使って実現できるのだ」
既に多数のベンダーが、Big Switchと同様のネットワーク仮想化を実現するトンネルプロトコルを発表している。米Nicira Networksは「Stateless Transport Tunneling」というプロトコルを開発した。
ハイパーバイザーベンダー各社も同様のプロトコルを発表済みだ。例えば、米VMwareが提案する「VXLAN」、米Microsoftが提案する「NVGRE」などがある(VXLAN、NVGREについては「【技術解説】ファブリックから仮想化対応まで、ネットワーク構築/運用技術5選」も参照)。
Big SwitchのOpenFlowオーバーレイネットワークは、こうしたプロトコルの多くに対応している。従って、ユーザー企業はベンダー混在型のネットワーク仮想化環境を構築することが可能だ。
「競合製品の場合、コントロールプレーンとトンネル技術が固く結び付いているため、ユーザーは双方とも同じベンダーから入手しなければならない」とフォースター氏は指摘する。「当社製品であれば、ユーザーはコントロールプレーンに対して任意のトンネル技術を使うことができる。NVGREやVXLANとも併用可能だ」
OpenFlowネットワークオーバーレイの問題点
フォースター氏によると、ネットワーク仮想化を実現するためにネットワークオーバーレイを導入した場合、管理が複雑になる可能性もあるという。「基盤となる物理ネットワークとオーバーレイネットワークという2つのネットワークを管理しなければならない。何か問題が起きたら、2つのネットワークをチェックする必要がある」
ネットワーク仮想化は、2つのネットワークを管理する煩わしさに見合う価値があるのだろうか。フォースター氏によると、それはネットワークがサポートする仮想マシン(VM)の数によるという。VMの数が増えれば増えるほど、ネットワーク仮想化の重要性が高まるのだ。
「以前、2013年に1ラック当たり2000個のVMを配備しようとしている先進的企業に話を聞いた。規模がこれぐらい大きくなれば、さまざまな問題が出てくる。VMはネットワークで絶えず起動・停止したり、ラック間を移動したりする。2台のラックにまたがるディザスタリカバリ計画も必要になる」とフォースター氏は指摘する。
スコルーパ氏によると、ネットワーク技術者はデータセンターのシステム担当チームからも抵抗を受けるかもしれないという。「トンネル接続をするには、ソフトウェアをサーバに導入する必要がある。例えば、Niciraは独自の仮想スイッチを提供している」と同氏は話す。「ネットワーク担当者がサーバへアクセスするのを許可する企業もあるが、そうでない企業もある。『ホストをこれ以上複雑にしてもらっては困る』と苦言を呈する企業も出てくるだろう」
ネットワークオーバーレイ:OpenFlowへの段階的移行
OpenFlowをベースとしたSDNを採用する上でまず障害となるのは、OpenFlowをサポートする商用スイッチが全般的に少ないことだ。第2に、新しいスイッチを導入するコストの問題がある。「ユーザー企業は『今すぐ既存のスイッチとルータを取り外して、新しいOpenFlow機器を導入するのは無理だ』と嘆く」とフォースター氏は話す。
Big SwitchのOpenFlowによるネットワークオーバーレイの場合、ネットワーク技術者は段階的にOpenFlowへの移行を進めることができる。既存のネットワーク機器がOpenFlowをサポートしているかどうかにかかわらず、ネットワーク全体にネットワーク仮想化技術を実装できるからだ。
将来、OpenFlow対応スイッチをネットワークに組み込んだ場合も、Big Switchの技術であれば対応できる。同社の技術の場合、トンネル接続するのはOpenFlow非対応のスイッチだけだ。ネットワークの一部をOpenFlowスイッチに置き換えると、Big Switchの技術は不要になったトンネルを削除する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
2
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
5
Anthropicが明かす AIは入力データを「どこまで覚えているのか」
-
6
「にゃんこ大戦争」インフラ“大引っ越し”の理由 なぜAWSからGoogle Cloudに?
-
7
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
10
自社製半導体だけでは限界? AmazonがQualcommに9兆円超を託す真意
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー