各社自慢の統合インフラを徹底比較(前編)
今、最もお買い得な統合プラットフォーム製品はどれ?
複雑化したシステムの運用管理負担を下げられるとして、統合プラットフォーム製品の市場が伸びている。本稿ではCisco、VCE、NetAppの統合インフラの製品を徹底比較した。
統合インフラの市場が急速に拡大している。その背景には、IT部門の規模の大小を問わず、「ITインフラの複雑化は好ましくない」という認識の浸透がある。米Hewlett-Packard、米Dell、米IBM、米Cisco Systems、米VCE、米NetAppの各社は、調達/運用コストの削減、ネットワークの統合、管理の簡素化、配備の迅速化、ストレージコストの削減、消費電力の低減を目指した製品を提供している。
「統合プラットフォーム」という用語は、ストレージ、ネットワーク、コンピューティングというリソースを、容易に調達・管理できる1つのユニットに統合することから来ている。統合プラットフォームは、一元的な管理機能(あるいは少なくとも単一の管理モデル)を提供するとともに、統合ソリューション(主に単一のベンダーから提供される)をサポートする。
こういった共通点を除けば、各社の製品はそれぞれ異なる。FCoE(Fibre Channelover Ethernet)やiSCSIなどの統合ネットワーク技術を採用している製品もあれば、従来の独立型Fibre Channel(以下、FC)スイッチを利用するものもある。また、ストレージ容量やコンピューティングキャパシティーがあらかじめ設定されている製品もあれば、ユーザーのニーズに合わせてシステムを構築できるよう、柔軟にカスタマイズできるものある。
本稿では、Cisco、VCE、NetAppの統合インフラの概要を紹介する。特にアーキテクチャ、パッケージング、サポートなど、データセンターに導入する製品を選択する際に確認すべきポイントに注目した。
円熟のCisco UCS
2009年に登場した「Cisco Unified Computing System」(以下、UCS)は、統合インフラソリューションの先駆けとなった製品だ。サーバ市場では後発組だったCiscoは、企業のIT部門が抱えている問題に真剣に取り組む中で、同一のバックエンドインフラにFCとIPネットワークを配備するとともに、ハードウェアの管理方法を改善するという方針を当初から採用した。
UCSサーバは「B-Series」ブレードと「C-Series」ラックマウントシステムで構成され、いずれも付属の「Cisco UCS Manager」で管理する。Cisco UCS Managerは重要なデータをハードウェアから抽出し、それをプロファイルとして保存する。これを利用すれば、アドレスや構成データを新規/交換ブレードにコピーあるいは自動的に再割り当てできるため、サーバハードウェアの配備と交換が容易に行える。
UCSは拡張性も非常に高い。ブレードは物理サーバと同じ容量を備える。例えば、1CPU、2CPUおよび4CPUモデルの場合、搭載CPUの数が増えるのに従ってメモリソケットの数も増える。支店・支社向けには、Ciscoの「Integrated Services Router」のシャーシに組み込み可能なローエンドの「UCE E-Series」が用意されている。UCSは特定のOSに依存せず、ハードウェア互換性リストも用意されているため、既存のデータセンター環境に組み込みやすく、ITスタッフのトレーニングも最小限で済むと思われる。
このようにUCSは数多くのメリットを有するが、弱点もある。プライベートクラウドをボックスの形で提供する一部の競合製品とは異なり、UCSはサーバインフラを構築するための製品なのだ。とはいえ、他社のクラウド製品の基盤として使われることが多い。SANとIPネットワークを統合するには「Cisco Nexus」スイッチインフラが必要になるため、初期費用はかなり高くつく。しかしインフラの規模が拡大するのに伴い、ハードウェア全体にわたって初期費用が償却されるため、他のベンダーのソリューションとの価格差は縮小する。サポートは非常に充実しているが、Ciscoのハードウェア保証期間は3年だ。これに対し、他のベンダーでは5年サポートが一般的だ。
リファレンスアーキテクチャとしてのVCE Vblock
VCEは米VMware(V)、Cisco(C)、EMC(E)の3社が共同で設立した企業で、各社はそれぞれの技術を「Vblock」プラットフォームに提供している。仮想化と管理機能には、VMwareのソフトウェアである「vSphere」と「vCloud」が使われている。Ciscoはコンピューティングキャパシティー技術としてUCSを提供している。さらにEMCのストレージ技術である「NX」と「VMAX」、そして一元的な運用管理を実現する同社の「Ionix Unified Infrastructure Manager」ソフトウェアが採用されている。
意外なことに、VCEはVblockを販売しているわけではない。Vblockは、付加価値リセラーが実際の製品を構築するために利用するリファレンスアーキテクチャなのだ。これらのアーキテクチャは徹底的に検証、テストされ、最終製品は構成とテストが完了した状態で出荷される。
本稿を作成した2013年3月現在、「Vblock 300」と「Vblock 700」の2種類のモデルしか存在しない。物足りないように思えるかもしれないが、動作が検証された統合インフラを求めているIT部門にはお勧めだ。Vblockはすぐに利用できる形で提供されるターンキー製品だ。そのパフォーマンスは正確に把握されており、構成も検証済みだ。
VCEは3社の力を結集した組織によってVblockをサポートしており、テストとトラブルシューティングのためのラボも保有している。このような組織体制に加え、構成の種類も限定されているため、VCEはファームウェアとソフトウェアのアップグレードを定期的にリリースできるのだ(VCEではこの定期リリースを「推奨セーブポイント」と呼ぶこともあるようだ)。
多くのIT部門にとって、Vblockの製品ラインアップにローエンドモデルが存在しないのは問題だ。支店・支社などの小規模環境向けの選択肢がないからだ。Vblockがカスタマイズできないことや、既存のインフラと接続できないことに不満を抱く人もいるが、Vblockはそういった市場向けの製品ではない。VblockはVCEのパートナー企業から購入する必要があるが、調達プロセスが煩雑になりコストも高くなる可能性がある。また、仮想サーバはVMwareのハイパーバイザーを使ったものに限定されるため、Hyper-VやOpenStackの採用を予定しているIT部門ではVblockを利用できない。同様に、ターンキー方式のプライベートクラウドあるいはハイブリッドクラウドを望んでいるのであれば、Vblockは選択候補にならない。Vblockはあくまでもサーバインフラのためのソリューションなのだ。
一元管理が可能なNetApp FlexPod
VCEに対抗するNetAppの製品が「FlexPod」だ。これはVblockに非常によく似た製品だが、Vblockほど厳格にコントロールされているわけではない。Vblockと同様、FlexPodもCiscoのUCE B-SeriesブレードとVMwareのソフトウェアをベースとする。FlexPodはNetAppから直接購入できる製品ではなく、パートナーが製品の基盤として利用するリファレンスアーキテクチャである。
Vblockと異なるのは、FlexPodはNetAppのストレージアレイ「FAS」を利用するという点だ。FASアレイはどの機種でも「Data OnTAP」(NetAppのOS)が動作し、インタフェースも共通なので、ユーザーは任意のFASモデルを選択できる。FlexPodは「Hyper-V 2008」のサポート(「Hyper-V 2012」は未サポート)に加え、ベアメタル方式のOSもサポートする。統合管理インタフェースは用意されていないため、ユーザーはストレージ、ネットワーク、コンピューティングのそれぞれのネイティブ管理インタフェースを使用することになる。各コンポーネントは優れたAPIを備えているので、サードパーティー製の一元管理ツールを購入するという手もある。
FlexPodはニーズに合わせて拡張できるので、複数の場所で単一の統合インフラプラットフォームを運用したい企業にとっては魅力的だ。ただし、ユーザーはNetAppのパートナー企業からFlexPodを購入する形になるため、調達プロセスが煩雑になりコストも高くなる可能性がある。Cisco、VMwareおよびNetAppと個別にサポート契約を結ぶ必要もある。NetAppは共同サポートモデルを提供しているが、そのワークフロー図を見ると、問題がすぐに解決されるわけではなさそうだ。
複雑なサーバインフラをシンプルな構成で置き換えるのか、自社専用のクラウドを運用するのかは別として、あなたのビジネスニーズを満たす可能性のある統合インフラの選択肢の一部を本稿で紹介した。次回はDell、IBM、HPの統合インフラを取り上げる予定だ。
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