「いいね!」が1日32億件
Facebookに学ぶ、驚きのデータ活用術
データがあっても、それをどう理解し、どう利用すればよいかが分からなければ意味がない。一部のBIエキスパートだけではなく、全従業員がアナリストになれる方法をFacebookの事例に学ぶ。
100P(ペタ)バイトのデータをどう生かすか?
米Facebookのアクティブユーザー数は、2008年末の時点では6億人だったが、現在は10億人を超えている。ユーザーが増えれば増えるほどデータは増加し、ストレージスペースは拡大する。例えば以下のような驚きのデータが挙げられる。
- Facebookには1日3億枚の写真が投稿される
- 大みそかの夜に投稿された写真は、一晩で7億5000万枚
- 毎日32億件の「いいね!」やコメントが記録される
- Facebookが持つデータの規模は約100P(ペタ)バイト。毎日500Tバイトのデータを取り込んでいる
2004年に創業したFacebookにとって、この急成長は「企業や顧客の動向を知ることのできる有益なデータ」が増えていることを意味する。
1年ほど前まで、この世界最大のソーシャルネットワーキングプラットフォームは、データ分析にMicroStrategyのツール群とともに、自社開発のリポーティング用BI(ビジネスインテリジェンス)を利用していた。しかし、どちらのツールも高度な専門知識を必要としていたため、BIスペシャリストと素人アナリストたちの間で、分析をビジネスに生かす上でボトルネックが生じていた。この点について、FacebookのBIエンジニア、ナミット・ライシュラナ氏は、「MicroStrategyは優れたツールだが、開発者への依存性が強い」とコメントする。
ライシュラナ氏のチームはこのギャップを埋めるソリューションを探した結果、“あるもの”にたどり着いた。それはデータを可視化する「データディスカバリーツール」だ。これを利用すればデータサイエンスに関する広範なトレーニングを受けなくても、ビジネスユーザー自身で、複雑なデータセットを直感的に分析することが可能になる。
だが、“ビッグデータ時代のExcel”になりつつあるこのビジネスフレンドリーなツールは、実はもろ刃の剣でもある。米Gartnerのリサーチ担当副社長、リタ・サラム氏はこの点について次のように語る。
「データディスカバリーツールは使いやすく、ビジネスユーザーに強大なパワーを与えてくれる。しかしIT部門のサポートがなければ、それぞれがサイロを作ってしまうことにもなる。ITビジネスリーダーの課題はそこだ。ビジネスニーズは満たしたい。しかし同時に一定レベルのデータガバナンスを実現する何らかのメカニズムも持ちたい。これをどうバランスさせるかが重要だ」
BIベンダー、Tableauの“データディスカバリーツール”を導入
Facebookの場合、その回答として米Tableauのツールを選んだ。同社は1997年から2002年にかけて、スタンフォード大学で行われた研究成果から生まれたBIベンダーだ。またFacebookはこのツールを実装できるエキスパートを探し、最終的にライシュラナ氏はブログ「VizWiz」の著者で、米Coca-Colaでプロモーション分析の仕事をしていたアンディ・クリーベル氏をはじめ、数名のエキスパートを雇用した。
Facebookでデータ可視化に取り組むクリーベル氏は、「ビッグデータがあっても、それをどう理解し、どう利用すればよいかをわれわれが従業員に伝えない限り、全く意味を持たない。つまり、われわれが目指しているのは全ての従業員をアナリストにすることだ」と話す。
Facebookは、その目標の実現に向けて進んでいる。クリーベル氏は現在、BIエンジニアの1人として、月間500人いるTableauの社内ユーザーをサポートしている。以下はFacebookのデータ活用を成功へと導いた3つのプラクティスだ。
1.グループの力を活用する。
ライシュラナ氏とクリーベル氏にとって幸運なことは、彼らのターゲットユーザーグループが、ネットワーキングやコラボレーションに関する一定の知識を持っていたことだった。彼らが最初に行ったのは、ユーザーがTableauを使った分析結果を投稿、共有するための「Tableau Facebook Group」の立ち上げだった。このオープンプラットフォームは、繰り返し出される同じ質問に回答しなければならなかったBIデベロッパーの負担を軽減する他、コラボレーションのプラットフォームとしても機能する。
こうした仕組みが企業のビジネスモデルに正しく組み込まれることは少ない。クリーベル氏によると、「このタイプのコラボレーションは、数人で何百人ものユーザーをサポートするTableauエキスパートたちのプレッシャーを軽減することに役立っている」という。
また、この仕組みの最も優れた点は、「優秀なビジネス集団を育てられることと、驚くほど豊かな知識リポジトリを構築できることだ」と述べる。
「数カ月前にTableauを使った分析をトレーニングした人が、他のユーザーの質問に答える光景は鳥肌が立つほどすばらしい。われわれBIエンジニアが直接関与することなく貢献できることは、とても気持ちがよい」(クリーベル氏)
なお、ユーザーは調査結果を「承認サイト」に公開すれば、他のユーザーとすぐに共有できる。タイムラグもなければ、BIチームへの依存性もない。ただし、このプロセスにはコントロール機構が組み込まれており、未承認から承認サイトへ移行する前に、BIのレビュープロセスを経なければならない仕組みとなっているという。
2. 初級および上級トレーニングの提供
Tableauユーザー、またはTableauの使用を希望するユーザーは、隔週で行っている「ビギナーズセッション」か、上級者向けの「アドバンストトレーニングセッション」に参加できる。ビギナーズセッションはデータディスカバリーツールに慣れるためのトレーニングで、さまざまなタイプのチャートを学び、ダッシュボードの構築や公開までを行う。アドバンストセッションでは、「散布図」や「ロリポップ図」といったさらに高度なチャートタイプを研究する。
クリーベル氏は「誰かが困ったり、ヘルプを必要としているときに、新しいレッスンを思い付く」という。これについてGartnerのサラム氏は、「あらゆる組織に適用できるベストプラクティスだ。ツールの機能を最大限に引き出すためには、継続的な教育プログラムでなければならない」とコメントする。
3. 分析活動の競争心を持たせる、あるいはゲーム化する
クリーベル氏によると、データ可視化に対するモチベーションをユーザーに浸透させるための1つの方法は、「各ユーザーグループによる優れた分析事例を見つけて景品付きで表彰する、『今週の最優秀データ可視化コンテスト』だ」という。
優れた分析事例を共有することは、分析に対する意識向上につながる他、ツールへの興味喚起にも役立つ。サラム氏によると、「データディスカバリーツールは、トップダウンの取り組みよりも、むしろ口コミで拡散する」という。
「Tableauの導入は大きな成果を生んだ。だがTableauをさらに適応させるために、われわれがすべきことはまだ残されている」――ライシュラナ氏は「全ての従業員をアナリストにすること」に向けて、さらなる意欲を見せている。
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