「AWS Road Trip」の意味とは
クラウドサービスのエバンジェリストがユーザーから最も聞かれること
Amazon Web Servicesのエバンジェリストは2013年5月、全米14都市のAWSユーザーグループを訪ねる遠征ツアー「AWS Road Trip」を実施した。その時の模様をユーザーの反応とともにリポートする。
聴衆の質問攻めに遭うことが明らかな場に、広報担当者の同席もなしに自社の著名幹部の1人を立たせることを不安に思わない大手企業はそう多くないはずだ。
では、米クラウドサービス大手Amazon Web Services(AWS)のケースはどういうことか。同社のチーフエバンジェリスト、ジェフ・バール氏は2013年5月中旬、米マサチューセッツ州のボストン対岸に位置するケンブリッジにおいて、全米14都市のAWSユーザーグループを訪ねる遠征ツアー「AWS Road Trip」をスタートした。同氏のこの行動にAWSの広報部門はハラハラさせられているのだろうか。そうでなければ、AWSは、リスクを覚悟の上で顧客への啓蒙活動へさらに積極的に取り組むつもりなのだろう。
バール氏はプレゼンテーションを用意してユーザーグループとの会合に臨んだ。だが2時間に及んだこの会合で、同氏はしばしば話を中断し、AWSの料金体系やパフォーマンス、可用性といったさまざまな話題について、聴衆の質問に答えたり、聴衆からフィードバックを得たりしていた。
クラウドプロバイダー各社が顧客に自社のメッセージを伝えるのに苦労していることを思えば、顧客と直接関わろうとするバール氏のやり方は理にかなっている。米TechTargetがサービスプロバイダー288社を対象に実施した最近の調査では、ビジネスの主要課題の1つとして「パブリッククラウドとハイブリッドクラウドについて顧客を教育すること」を挙げた回答者が全体の37%を占めた。
教育と啓蒙の必要性をバール氏はよく理解している。プレゼンテーションではAWSのポートフォリオを広範囲にわたって説明し、「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)や「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)といったメジャーなサービスだけでなく、「Static Web Hosting」や「AWS Trusted Advisor」など、それほど知られていないサービスも一通り紹介した。AWS Trusted Advisorは、ユーザーごとに特化した分析を行い、コスト効率の問題やパフォーマンスのボトルネック、セキュリティホールなどを特定する管理ツールで、現在はβ段階にある。
バール氏はAmazon S3に保存されているオブジェクト数が2007年の29億個から、現在は2兆個にまで増加したとの数字を挙げ、Amazonのクラウドサービスの成長ぶりもアピールした。さらに同氏は、オバマ大統領の再選を懸けた2012年の米大統領選において、選挙用WebサイトにAWSのアーキテクチャが使われた例など、AWSの注目の導入事例も幾つか紹介した(関連記事:オバマ大統領を再選させた「ビッグデータ分析」の衝撃)。
「人々は学びたくてここに集まってくれた。私が答えられないような質問を皆がしてくれるのがうれしい」とバール氏は語る。同氏は、AWSの公式ブログ「Amazon Web Services Blog」を運営している。
バール氏はこの遠征ツアーAWS Road Tripのために、1カ月をかけて車で全米を横断する(※)。総走行距離は約8000キロになる見通し。同氏によれば、このツアーは普段カンファレンスをまわるだけでは顧客と話して交流する時間を十分に持てないことへの対策だという。
※ 本記事は、米TechTargetで2013年5月15日に公開された記事の翻訳です。
「私は(2013年)4月には、15分間の講演のためにシアトルから北京まで飛んだ。こうしてユーザーグループと話せるのが本当にうれしい。参加者は常にやる気に満ち溢れている。そうした人たちと掘り下げた話し合いの時間を持てることは非常にありがたい」と同氏は語る。
バール氏は好意的な聴衆に迎えられた。それでもボストンのユーザーグループ、Boston Amazon Web Service Meetup Groupのメンバーの多くはこの機会を逃すまいと、スポットインスタンスやリザーブドインスタンス、「Amazon Elastic Load Balancing」(Amazon ELB)のIPアドレス、「Amazon Elastic Block Store」(Amazon EBS)、「Amazon Glacier」など、AWSの各種機能の料金設定について詳しい説明をバール氏に求めた。他に、AWS APIの効率性やAmazon EBSスナップショットの速さ、障害のシミュレーションなどに関する質問も上がった。
AWSユーザーは可用性を懸念
「可用性はこのユーザーグループの他の会合でもしばしば話題に上るテーマだ」と語るのは、米システムインテグレーター、Cloud Cowboysのクラウド担当マネジャー、デビッド・ギガス氏だ。Cloud CowboysはAWS環境でMicrosoft製品の導入管理を専門とする、米東海岸マサチューセッツ州に拠点を置く企業だ。バージニア州北部のAWSデータセンターは東海岸地域で唯一のAWS施設であり、多くの顧客が集中している。「そのため、何か障害が発生して大規模で地域全体のフェイルオーバーに発展した場合に、他の地域に過剰な負荷が掛かることをユーザーは懸念している」とギガス氏はイベントの後に語った。この懸念は、同氏が顧客に提案する内容にも影響を及ぼしているという(関連記事:パブリッククラウドは災害対策で役に立つのか? AWSとGIOも検証)。
「この地域固有の問題と現状を認識した上で、私は顧客に対し、絶対確実なコピーをどこかよそに置くか、あるいは別の地域に移るよう勧めている」とギガス氏は語る。
もっとも、今回のイベントで可用性について質問したAWSユーザーは1人だけだった。このユーザーはバール氏にこう尋ねた。「一方のサービスが機能停止になった場合にもう一方のサービスが停止してしまうほど緊密に連係されているAWSサービスはどれか。どのAWSサービスが他のどのAWSサービスに依存しているのかを知りたい。さまざまな障害のシナリオを検討したいからだ。例えば、ある時点でAmaozn ELBがどのようにAmazon EBSに依存していたかといったことだ。それとは別に、予想されるさまざまな障害をシミュレーションすることが可能かどうかも教えてほしい」
バール氏は、「当社は現在、システムの内部の依存関係については公表していない。だが、可用性のさらなる向上には常に取り組んでいる」と答え、既にAWSチームに「ユーザーが障害をシミュレーションするための方法」を開発するよう依頼してあることを付け加えた。聴衆からは、オンライン動画サービス大手の米NetflixがAWS向けに提供している「Chaos Monkey」「Chaos Gorilla」「SimianArmy」といったテストツールが役に立つとの指摘もあった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ソフトウェア開発生産性向上に取り組む企業は4割 調査で学ぶ「停滞」の正体
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
7
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
8
迫る“インフラ崩壊”の危機 米英を相次いで襲った「PLC悪用攻撃」の全貌
-
9
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
10
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー