「モバイルアプリ」が新たな主役へ
スマートフォン活用、「端末だけに注目」が時代遅れな理由
スマートデバイスの企業利用が浸透しつつある今、端末だけに焦点を当てたモバイル戦略は不十分になりつつあるという。その理由とは何か? 今後注目すべき対象とは?
モバイル技術がビジネスの在り方を変革させたことで、IT部門のビジネスアプリケーション配信方法に変更が迫られている。
企業でのモバイル利用は、メールやスケジュール管理にとどまらない。例えば、経費承認といった単純な業務では、アプリケーションが紙の書類の代わりになりつつある。「モバイル化は、企業にさらなる対応と、ビジネスプロセスの根本的な変革を迫っている」。IT専門の調査・コンサルティング企業、米Lopez Researchの創業者で首席アナリストのマリベル・ロペス氏は、米ボストンで開かれた「E2 Conference」のワークショップでこう語った。
従業員のモバイル化は、現状ではIT管理者にとっての最優先課題になっているとは限らない。IT管理者の多くは日常業務に忙殺されており、長期的なモバイル戦略立案と遂行にかける時間のある管理者はほとんどいない。IT部門の承認の有無にかかわらず職場にモバイルアプリが浸透する中、モバイル戦略の実現は困難な目標と化してしまった。IT部門は、エンドユーザーからの要求と会社のポリシーとの間で全員を満足させるための綱渡りを強いられている。
大手金融機関のあるITプランナーは、「会社の新技術導入は遅れている。だが私のチームは、さまざまなパートナーと協力してエンドユーザーのニーズを徹底検証し、高度にセキュアな戦略を確立している」と語る。一方で、米MicrosoftによるWindows XPのサポート打ち切りが2014年に迫る中、システムのWindows XPからWindows 7への移行など、優先的に進めなければならない大型プロジェクトもある。
もっとも、OSの移行はモバイル戦略に直結している。
大手コンシューマーパッケージ商品会社に勤務するあるアプリケーションアナリストは次のように話す。「機能豊富でデバイス中心のアプリケーションを利用している場合、OSのアップグレードとハードウェアの変更は大きな懸念事項だ」
新しいOSの要件に合ったハードウェアへアップグレードするために、企業が多額の投資を迫られることもある。
主役はアプリ
一方、職場へのモバイル端末の普及が進んだ結果、主役はもはやデバイスではなくなりつつある。新たな主役は、アプリとビジネスモデルだ。
「モバイルアプリにフォーカスした戦略を導入してこなかった企業は、モバイルインフラがコントロール不能になる危険を冒している」。米モバイルコンサルティング企業J. Gold Associatesの創業者で首席アナリストのジャック・ゴールド氏はこう語る。
会社がモバイルアプリを管理できなければ、セキュリティ問題が増加し、コストがかさみ、エンドユーザーの生産性低下を招きかねない。
企業がデータアナリティクスやコンテキスト管理などの新技術を活用した長期的なビジネスの転換について検討する中、IT部門は、他部門と連携してエンドユーザーのニーズを把握し、ビジネスにリターンをもたらす戦略を提供する必要がある。
IT部門は、社内の他の部門と連携して、エンドユーザーのために最適なソリューションの提供を考える必要がある。ゴールド氏はこの動きを「ITの民主化」と呼ぶ。
E2 Conferenceのワークショップに参加したIT管理者は、「自分たちのIT部門も戦略的な思考を持ち、エンドユーザーと緊密に連携してビジネスニーズを理解できるようになりたい」と話していた。
米報道機関Christian Science Monitorの技術サポート事業部マネジャーであるアーサー・T・フロントチャック氏は、「IT部門にはもっと積極的に活動し、関与してもらいたい」と語る。同氏は現在、社内にモバイルデバイス管理(MDM)と無線ネットワークを導入しているところだという。
同カンファレンスで特に参加者の関心が高かったのは、モバイルアプリ開発に関するワークショップだ。HTML5を使った開発が全てのモバイルプラットフォームについて必ずしも同じではないことによる影響や、コスト分析について経営陣にプレゼンする方法などに関する質問が出た。
モバイルアプリ開発を手掛ける米Magic Software Enterprisesのレゲブ・ヤティブ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「(経営陣に)ソフトウェアを売り込める方法は1つしかない。モバイルアプリは会社の役に立つか、さもなければ余分なおもちゃになるかのいずれかだ」と指摘する。
IT部門は、経営陣からうまく支持を取り付けるために、コスト削減効果を幹部に示す必要がある。場合によっては、従業員が使うアプリが売り上げや収益、顧客サービスに影響を与えることもある。
ゴールド氏によると、モバイルアプリ管理に力を入れている企業は、従来型の資産管理のみに的を絞っている企業と比べ、全般的にモバイル総保有コストが25~35%抑えられているという。
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