性能向上には疑問視する声も
クラウドサービスの救世主? ベアメタルサーバの実力とは
従来のホスティング環境よりも柔軟に運用可能だとして、ベアメタルサーバを採用する動きが目立ってきた。ビッグデータやリアルタイム分析にも適しているといわれる理由をクラウドサービスプロバイダーが語った。
矛盾した話に聞こえるかもしれないが、クラウドサービスプロバイダーの中には、ベアメタルサーバを提供しているところがある。ベアメタルサーバを共有インフラに代わる魅力的な選択肢として検討を始めた企業もある。
ベアメタルサーバを提供しているクラウドサービスプロバイダーとしては、米IBM傘下の米SoftLayer Technologies、米Rackspace Hosting、米Internap Network Servicesが挙げられる。ベアメタルサーバのサービスは、これらの企業がもともとマネージドホスティングサービスを手掛けていたところから始まったものだが、最新のサービスでは、クラウドとベアメタルの両方の資産を1つのインタフェース上で管理できる。このため、ベアメタルサーバを従来のホスティング環境よりも柔軟に運用できるという。
ファイナンシャルプランニングサービスのベンチャー企業、米LearnVestで最高技術責任者(CTO)を務めるヒルシ・ディキシット氏は、ベアメタルサーバとクラウドコンピューティングを併用するInternapのAgile Hostingサービスを導入し、「ほんの数日前まで、『当社のシステムでは、データベースが拡張し続けているため大容量のRAID 10ディスクアレイが必要だ』と言っていたが、(このサービスでは)データベースサーバの構築が4時間ほどで完了できた。以前は、同じ作業に数週間かかったものだ」と語った。
ベアメタルサービスを試したユーザーは、専用のハードウェアリソースを利用する場合よりもパフォーマンスが向上すると語る。そこで、リレーショナルデータベースはベアメタルサーバに展開する有力な候補になっている。
前出のディキシット氏は「データベースをクラウドのインスタンスとして展開するのは無意味だ。社内システムの中で常にアクセスがあるからだ。加えてデータベースにはどんな環境であっても、マスターとレプリケーションスレーブが必要であり、またスケーリングは通常、スイッチを切り替えるだけで済むようなことではない」とも指摘する。
ベアメタルサーバは、ビッグデータやリアルタイムアナリティクスの環境としても適している。ホスト型マーケティングソフトウェアを扱う米HubSpotは、ビックデータに対するクエリを実行するため、仮想サーバ(約60台)よりも多い物理サーバ(約160台)をRackspaceのデータセンターで利用している。
「パブリッククラウドでは莫大な費用が掛かる。予測可能なパフォーマンスを得ようとすると、そのために大きな容量が必要になるからだ」と、同社の最高情報責任者(CIO)ジム・オニール氏は語る。「われわれ専用の環境ならば、このようなビッグデータジョブがかなり大きなサーバや大容量のコモディティサーバにもフルにアクセスできる。これで世界を変えることができた」
ニッチなベアメタルクラウド:パフォーマンスとコンプライアンス
米情報サービス会社であるFlow Searchでは、クリックストリーム(Webユーザーがどのサイトにアクセスしたかの軌跡)情報に対してリアルタイムアナリティクスを実施するために、ベアメタルサーバのパフォーマンスが必要だった。そこで、米AmazonのAmazon Web Services(AWS)上に展開していた環境を2012年、IBM傘下のSoftLayerが提供するサービスに移行した。
「企業に要求されるレベルのパフォーマンスは、パブリッククラウドでは実現できない。パフォーマンスはミリ秒単位の競争で、インメモリ処理も必須だ」と、Flow Searchのエリック・オルターマンCEOは語る。「他のサービスプロバイダーも、エンタープライズ市場でビジネスを続けるつもりならば、SoftLayerのベアメタルサーバの性能に匹敵するものを提供せざるを得なくなるだろう」(同氏)
Webサーバをベアメタルサービスで運用しようと考える企業も現れた。ソーシャルメディア管理の新興企業である米Sprout Socialは約3年前、同社のデータベースサーバをRackspaceが提供するクラウドの中でベアメタルに移行したが、Sprout SocialのCTO、アーロン・ランキン氏によると、SSD(ソリッドステートドライブ)の導入でディスクのパフォーマンスが向上し、データベースサーバをあらためてRackspaceのクラウドに移しても実用に耐えるレベルになったという。
その一方でSprout Socialは、CPUのパフォーマンスを安定させるため、8台のWebサーバをベアメタルに移行させることを検討している。
「当社の一部のサーバに、CPUのパフォーマンスが不安定なものがある」とランキン氏は語る。「マシン全体を所有していること、そしてハードウェア構成もすみずみまで把握できているという安心感を得たいからだ」(同氏)
かたやコンプライアンスも、クラウド内ベアメタルに移行する理由の1つだと、前出LearnVest社のディキシット氏は語る。同氏は、専有のベアメタルサーバは共有のクラウドコンピューティングインフラとは「分離」されているので、クラウド環境上のシステムでも米証券取引委員会(SEC)の監査を通過しやすくなったとも付け加えた。
ユーザーは費用の面でも、ベアメタルサーバの利点を実感できる。ディキシット氏のLearnVestは、ベアメタルサーバに月900ドルの定額料金を支払っているが、この額は、データ定量制であるクラウドベースのサーバの料金よりも安いことが往々にしてある。
新しいアプリケーションのプラットフォームとしてベアメタルサーバを採用する動きが目立ってきたにもかかわらず、業界ウオッチャーの中には、ベアメタルサーバに、結局のところ完全に仮想化されたクラウド環境に移行するまでの中継ぎ以上の価値があるのか疑問視する向きもある。
「実際にハードウェアに直接触れて管理する必要があるアプリケーションはそう多くはないので、恐らくニッチな存在のままだろう」と、米調査会社Forrester Researchの副社長で主席アナリストのジェームス・スタテン氏は語っている。
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