Disneyも採用する「モノのインターネット」(IoT)が市場を変える
Appleの影響力は半減――Gartnerが2020年の勢力予想図を公開
米Gartnerの調査によると、2020年にはネット接続端末が300億台を超え、クラウドへの依存度が増加してAmazon Web Servicesが飛躍を遂げる一方、AppleやIBM、Microsoft、Oracle、SAPなどが市場シェアを失うという。その要因とは?
インターネット接続端末や安価で手に入るデータ収集センサーなど、さまざまなテクノロジーが相重なって「モノのインターネット」(IoT:Internet of Things)の波が形成され、その波は今にもデータセンターを崩壊させかねない勢いだ。
最近では、IoT向けの監視モジュールがギリシャのeConaisをはじめ各社から低価格で提供され、IoTのビジネスの可能性が広がっている。米調査会社Gartnerによれば、今後、インターネットに接続された製品の数は急増し、2020年には固有のIPアドレスでインターネットに接続する端末が300億台に増え、その大半を各種の製品が占める見通しという。
この数字をもっと高く予想する向きもある。RFID(無線ICタグ)を含めると、なおのことだ。
「最近は、これまでインターネットに接続されていなかった端末に次々とインターネット接続機能が追加されている。例えば、テキサス州オースティンにあるパーキングメーターなどもその一例だ」。米市場調査会社IHS ResearchのIoT部門担当アソシエイトディレクター、ビル・モレッリ氏はそう語る。
こうして入ってくる大量のデータを活用すべく、企業や組織は既にデータの収集と分析に着手している。将来的には、より一層の活用のためにデータの共有化が進むことも予想される。
「恐らくあと15年もすれば、道路通行料徴収システムや自動車などのデータも全てが連動し、価値ある提案を生み出せるようなっているだろう。それが目標だ」と、モレッリ氏は語る。
Disneyも活用するIoT
実際、IoTは既にさまざまな方法で活用されている。英Elektron Technologyは最近、IoT向けのクラウドストレージ「Xively」と連係する食品安全監視ツール「CheckIt」をリリースした。CheckItは食品の保存室と調理エリアをリアルタイムでリモートから監視し、レストランやスーパーマーケットなどの事業者がコンプライアンス状況を確認して食品安全管理コストを削減できるよう支援するツールだ。
米Walt Disney Parks and Resorts(以下、Disney)もIoTに取り組んでいる企業の1社だ。同社は2013年、情報管理のための一大プロジェクトを実施し、その一環として、RFID内蔵のリストバンドを来園者に配布する取り組みを開始した。
先頃開催されたGartner ITxpoカンファレンスのセッションにおいて、Disneyのエンタープライズアーキテクチャおよび情報管理担当副社長を務めるウラジミール・ラック氏は、このプロジェクトについて次のように説明した。「このリストバンドは“ヒトのインターネット”を代表するような取り組みだ。リストバンドに内蔵されたセンサーによって、来園者が園内で“何を購入し、どこを訪れ、どのように買い物をしているか”を追跡し、集まったデータに基づき顧客エクスペリエンスをパーソナライズしている」
「われわれは誰がパークに入場したかも含め、大量のデータを把握しており、プライバシーを侵害することなくそうしたデータから情報を引き出している」とラック氏は語る。
Disneyは現在、顧客識別に約75%の精度を誇っており、これを95%まで高めることが目標という。「これが大きな収益発生源になる」とラック氏は話す。
ラック氏によれば、DisneyのITチームは現在、顧客情報の急増にうまく対処すべく、データガバナンスと情報管理プロセスに力を注いでいるという。
データの急増
IoTは多大なビジネス価値をもたらすが、一方で、それに付随するデータの急増はデータセンター管理者を大いに悩ませることになりかねない。アナリストによれば、「企業のリーダーはセンサーによって何でもモニターしたがるが、集まった情報の保存、管理、分析に関する大局的な問題は理解していない」という。
Xivelyのテクノロジー担当副社長で、MIT(米マサチューセッツ工科大学)に置かれているWorld Wide Web Consortium(W3C)の研究員でもあるフィリップ・デソーテルズ氏は、次のように語る。「企業の幹部はリモートステータススイッチを配置し、“これでリモートから制御と監視を行える”と喜んでいる。確かに、顧客の製品使用状況を追跡して製品を最適化できるし、より高い製品も販売できる。だが一方で、データセンターには、“配備した全てのデバイスをどのように監視し管理するか”という複雑な問題がもたらされる」
これだけ大量のデータをどのように送受信するかも、問題だ。サーモスタットから少量のデータをHTTPS経由で送信する分には1800バイトのデータ量で済んだとしても、1日に2000万回もデータを読み取るとなれば、帯域幅の使用量は天井知らずで増えることになる、とデソーテルズ氏は指摘する。
「データをどのように保存し、アーカイブするのか。ちりも積もれば何とやらで、帯域幅コストの負担は膨大なものになりかねない。何百万件もの規模になれば、たとえ小さなデータでも問題になる」とデソーテルズ氏は語る。
米IBMのMQTTプロトコルをはじめ、IoT向けの各種のプロトコルはこの問題の解消を目指している。Xivelyの一部の顧客も既にMQTTプロトコルや、MQTTに似た各種のプロトコルを採用している。米Ciscoのインスタントメッセージサービス「Jabber」向けのパブリッシュ/サブスクライブ型メッセージプロトコルも、そうしたプロトコルの1つだ。
MQTTプロトコルの標準化は2年以内に完了するとみられており、より多くの製品がパブリッシュ/サブスクリプション型のプロトコルに対応した設計となっているはずだ(現行のプロトコルはリード/ライト型)。
ただしデソーテルズ氏によれば、「また新たなアプローチが加わり、データセンターは新たなプロトコルに対応しなければならなくなっているはず」という。「だがこうした新しいプロトコルは、I/Oの削減という点で大きな影響力を持つことになるはずだ」と同氏は語る。
それでも、英Ovumの米国市場担当アナリスト、マイク・サピアン氏によれば、IoTはより多くのシステムとデータセンターインフラを必要とすることになるという。ストレージやビジネスインテリジェンス(BI)アプリケーションの他、インターネットトラフィックも増大していくからだ。
「IoTのトラフィックがデータセンターの需要を押し上げることになるだろう。ただしデータセンターで今目立ってきているのは、ストレージインフラとモバイル接続に対する需要かもしれない」とサピアン氏は語る。
必要な計画は?
アナリストによれば、「企業は膨大なデータ量に圧倒されないよう、ある程度のプランニングを今から始める必要があるが、サーバラックを今すぐ購入する必要はない」という。
前出の市場調査会社IHS Researchでデータセンターおよびクリティカルインフラ担当アソシエイトディレクターを務めるジェイソン・デプロー氏は、次のように語る。「こうしたデータを全て処理するには、データセンターの容量をせっせと拡張し、至るところにデータセンターを構築しなければならなくなると考える人もいるかもしれない。だが、実際はそうではない。インフラの技術はニーズと同じくらい急速に進化している。今現在可能となっていることの多くは、既存インフラの実力によるものだ」
例えば、物理サーバ1台当たりのワークロードはサーバ仮想化によって増やすことができる。
さらに、IoTによる「スマートシティ」のようなものを実現するには、システムと標準化が必要となる。「消費者のプライバシーの問題やその他各種の法律および規制についても、IoTの技術と並行して取り組む必要がある」と、前出IHS Researchのモレッリ氏は語る。
「スイッチをパチンと押すだけで変わるものではない。進化が続くものになるだろう」とモレッリ氏は続ける。
一方、デプロー氏によれば、企業は目下、「自社で生産能力を継続的に追加していくのか、あるいは効率性を優先してコロケーションやマネージドサービス、クラウドプロバイダーにアウトソースするか」を決めるためにオペレーションを慎重に検討中という。
さらにテクノロジー各社はデバイスレベルの機能強化も図っている。
「ネットワークに接続されたデバイスに関しては、そうした動きが強まっている。データはどこに保存すべきか、ネットワークを介して転送する必要はあるのかといったことも検討されている」とモレッリ氏は語る。
IoTがIT市場に与える影響
アナリストによれば、全体としては、IoTの拡大は米Amazon Web Servicesなどのクラウドサービスへの依存を高めることにつながるという。モバイル接続にもITサービスにもクラウドインフラが必要となるからだ。
「追跡すべきデバイスが20万台あり、そこにデータのタイムスタンプや、誰がいつ何を行ったかについてのトランザクションデータが加わるとなれば、データは数Tバイトの域に達する。従って、アナリティクスはクラウドで行われることになるはずだ」と、前出IHS Researchのデプロー氏は語る。
クラウドで集められたデータはクラウド上で分析され、ERP(エンタープライズリソースプランニング)やCRM(顧客関係管理)システムはクラウド上でデータと連係することになる。Xivelyの顧客の中には既にクラウドで、「MapReduce」「Hadoop」「Mathematica」といった信頼性の高いデータアナリティクスツールを使っているところもある。ただしデプロー氏によれば、「処理したデータは全て実際に活用されているわけではない」という。
「企業はデータを収集してはいるが、そのデータをどう活用すべきかをまだ分かっていない。ただし、いずれ必要になるであろうことは理解している」とデプロー氏は語る。
IoTは今後、企業がテクノロジーを使用、購入する方法にどのような影響を及ぼすのだろうか? クラウドへの依存度の増加は、IoTがもたらす影響の1つにすぎない。Gartnerが企業のCIOを対象に実施した2013年の調査では、米Apple、米IBM、米Microsoft、米Oracle、独SAPなど、今日あるいは近年で最も影響力があるベンダーについて、かなりの回答者が「2020年には市場シェアを失っている」と予想している(図1)。
Gartnerのアナリスト、ピーター・ソンダーガード氏はGartner ITxpoでプレゼンテーションに登壇し、この調査結果について次のように説明している。「IoTとあらゆるモノの“デジタル化”によって、企業がITベンダーに求めるものは完全に変わることになるからだ。テクノロジーの購入方法や何を購入するかも含め、全てが変わる」
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