ITの未来を先取りする記事を独断で選出
編集長が一押し! 2013年もっと読まれてもよかった記事
2014年はどのような年になるのか。2013年に公開された記事のうち、IT製品の選択やIT部門の今後に関わると思えるお勧めの記事を紹介します。
TechTargetジャパンが日々公開する記事は週に10本以上。残念ながら全ての記事が多くの読者に読まれるということはなく、人知れずにWebのすき間に落ち込んでしまう記事もあります。しかし、だからといってそうした記事がITの未来に何の光も当てていないかというと、そうではないと編集担当は考えています。今回は年始企画として、ITの未来を先取りする記事を独断で紹介します。
SIerの価値とは
日本のIT業界の主役はシステムインテグレーター(SIer)です。欧米のITベンダーがどれほど画期的な技術やサービス、製品をひっさげて日本に上陸しても、ユーザー企業への実装を行い、サポートをして、面倒を見るのはSIerです。彼らはベンダーのエンジニア以上にその技術や製品に精通し、ユーザー企業の目線で製品導入を手助けします。ユーザー企業が製品をリプレースすることは容易ですが、SIerを完全に切り替えることは難しいでしょう。彼らはユーザー企業のIT部門以上に、そのユーザー企業のシステムについて詳しいこともあるのです。
サービスプロバイダーによる究極の中抜きともいえるクラウドコンピューティングの進展でSIerとユーザー企業の関係はどう変わるのでしょうか。2013年7月に公開した記事「ひとり情シスに贈る、頼れる販社/SIerの見分け方」は、今求められるSIerの姿を調査結果から浮き彫りにしています。選ばれるSIerが満たすべき条件として、記事では以下の項目を挙げています。
- ITに限らず自社の課題や悩みに真摯に耳を傾けてくれる
- 幅広い商材を持っており、窓口を一本化できる
- サーバなどのハードウェアも含めたトータルでの見積もりが可能
- モノを売る時だけでなく、普段から気に掛けてくれている
クラウドの進展でサービスプロバイダーとユーザー企業の関係が深まる中でも、SIerの仕事は形を変えながら残るでしょう。SIerはユーザー企業の変化を先取りするような姿勢が重要になるのではないでしょうか。
Microsoftの動向が焦点に
米Apple、米Amazon Web Servicesなど話題に挙がる企業は多くあります。しかし、今注目すべきは米Microsoftの動向ではないでしょうか。Microsoftは過去20年以上にわたってWindowsやMicrosoft OfficeでクライアントPC環境を独占し、企業ITシステムにおいてもサーバ製品で大きな存在感を示してきました。この20年の間にはインターネットの台頭やオープンソースソフトウェアの広がりなど、ITを取り巻く環境は大きく変化しましたが、Microsoftはその変化に対応して、生き残ってきました。
なぜ今、Microsoftの動向に注目すべきなのか。その大きな理由の1つが、スティーブ・バルマーCEOの退任です。新しいCEOの方針と、同社を取り巻く環境の変化はWindowsなどのクライアントPC環境だけでなく、サーバなどの企業情報システム、同社が力を入れるスマートデバイスやクラウド戦略に大きな変化を及ぼすでしょう。「さよならの前に振り返るMSバルマーCEOの栄光と挫折」はバルマーCEOの功績をまとめた記事です。同時にMicrosoftが直面する課題についても指摘します。
また、「Nokia買収でMSの『Windows Phone』はどう変わる?」はMicrosoftの今後のモバイル戦略を伝える記事です。IT業界全体の今後を占う上でも必読の記事です。
侵入後が問われるセキュリティ対策
サイバー攻撃、情報漏えいなどセキュリティについての話題が2013年も多く取り上げられました。TechTargetジャパンでもセキュリティ脅威への対策や製品の動向を多く取り上げましたが、2013年の雰囲気を一言で言えば「完璧なセキュリティ対策は存在しないという意識の広がり」だったのではないでしょうか。全ての攻撃に万能な対策は存在しないことを前提に、侵入された場合の被害の低減や、情報漏えいを最小限にするための方策が表立って議論されました。「セキュリティ対策、プロでも大多数が『自信なし』」は、このような新しいセキュリティへの意識を説明する記事です。欧米での調査によるとセキュリティ担当者のうち、「高度な攻撃からサーバを守れるかという質問では、22%は『全く自信がない』と答え、59%は『ある程度の自信しかない』という回答だった」といいます。セキュリティ対策は、侵入を防ぐのはもちろん、侵入された後の対応も必須になりつつあります。
オープンソースデータセンターの登場
「コモディティ」という言葉が冠に付くほど、一般化し、普通の存在になったサーバ製品。x86サーバ自体に限っていえばサーバベンダー間で違いを見いだすのは難しいというのがIT業界の常識ではないでしょうか。しかし、2013年、“コモディティサーバ”の常識を変えるような新しい動きが登場しました。2012年に開始され、2013年にさらに進展した「Open Compute Project」。米Facebookが主導することでも知られるプロジェクトで、データセンター全体の仕様をオープンソース化して、省電力で省コストなデータセンター環境を作り上げることを目標とします。具体的にはマザーボードや電源、サーバシャーシ、キャビネット、バッテリーエンクロージャの仕様開発と機械設計を行っていて、2013年にはネットワーク機器についてもその対象に含めました。動向を伝える記事「Facebookと仲間たちが公開する次世代コンピューティングの“設計図”」では、担当者が狙いを解説しています。
米IBMも同様の動きを見せています。米Googleなどと共同でIBMの「Power」プロセッサを中心としたオープンソースのサーバ、ネットワークストレージおよびストレージの開発を目指します。2014年には動きが本格化するでしょう。記事「Googleがクラウド用コンピュータを自社開発か IBMとの協力で臆測」が解説します。ハードウェアというITシステムの根幹が変わることで企業情報システムがどう進化するのか。現在は欧米中心の動きですが、目を離せません。
IT部門も多様性重視へ
最後に紹介したいのはIT部門の多様性についての記事です。テクノロジーを担当する現場といえば、理系もしくはITに詳しい男性中心と思われますが、その常識は変わりつつあります。性別はもちろんのこと、国籍や職歴、専攻など多様なスタッフがIT部門で働くようになっています。記事「女性とテクノロジー業界、雇用の大幅増が意味するのは?」では米国におけるIT部門の多様性の進展について解説しています。多様性がIT部門にもたらすものは変化への柔軟性や迅速さではないでしょうか。記事での「長い目で見れば、男性のみを積極的に採用する企業が潜在能力を発揮するのは難しいだろう」とのコメントが印象的です。
また、ガートナー ジャパンのセミナーをリポートした記事「情シスがクラウド、自動化を味方に付ける3つの方法」では、IT部門が必要とする今後の人材について、「複数領域の専門知識・スキルを持つハイブリッド型の人材」が求められると指摘しています。
IT業界は依然として勢いがあり、技術革新が続いています。製品選択は将来のIT動向についても深く考える必要があり、簡単ではありません。しかし長い目で見れば、ユーザー企業がITから得られるメリットは今後も増えていくでしょう。2014年もTechTargetジャパンは読者の製品選択に役立つ記事を多く掲載したいと考えています。
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