米国に広がるIT市場の構造変化(前編)
ハードウェアは「サービス」のオマケ?
かつて顧客はハードウェアとソフトウェアのみを求めていたが、現在ではサービスまで網羅したソリューションを求めるようになった。
顧客のニーズは動く標的のようなものだ。競争を勝ち抜きたい付加価値リセラー(VAR)は、独自のマーケティングに動いている。課題は顧客が次に必要とするものにおいて、常にトップに立つことだ。
かつてIT製品の顧客が一般的に買いたがるものといえば、ビジネスの問題を解決するために自分たちで導入できるハードウェアとソフトウェア製品のみだった。しかし現在求められているのはソリューション、つまりハードウェアからソフトウェア、そして信頼できるVARへの電話1本で問題を解決してくれるサービスまで、全てを網羅した既成のバンドル製品だ。
多くのVARは提携する主要ITベンダーの製品を自分たちのカスタムサービスと組み合わせており、このバンドル型のアプローチは実入りが良く手堅いビジネスになる。ベンダーがVARに払うのは、自社に代わってハードウェアとソフトウェアを販売してもらうための対価のみで、付加的な顧客サービス提供の対価は払わない。
このやり方のVARにとってのメリットは、現在のような厳しい経済状況の中でも一定の顧客を確保しておける点にある。デメリットとしては、新規顧客を獲得して現在の見通しを維持するために、常に自己改革を図る必要があることだ。
ハードウェアは2次的なものになった
米VARのDenali Advanced Integrationでベンダーリレーション/マーケティング担当副社長を務めるジョン・コンベリー氏によると、同社は米Hewlett-Packard(HP)のパートナープログラムに何年も前から積極的に参加し、その関係故に好業績が続いているという。
Denaliは年間売り上げの約30%をサービス関連が占め、その割合は増えている。HPや米Microsoftといったベンダーのターンキーソリューションを組み合わせて顧客の問題解決を支援することに同社の事業の未来があることは、過去数年で鮮明になった。
HPもこの考え方が分かっているとコンベリー氏は言う。「もはや単純な機器だけでは済まない。真に実行力を発揮し、顧客のためのプロデューサーにならなければならない。通常は、サービスモデルでこれをやる必要がある」
今では多くの場合、ハードウェアの売り上げはこのような必要とされるサービスに付いてくるものになったとコンベリー氏は話し、「(ハードウェアは)2次的なものになった。ハードウェアはサービスが確立された後に来る」と指摘する。
市場で優位を保ちたいVARは、新しいビジネスを生み出すITプロジェクトにおいても率先する必要があるとコンベリー氏。Denaliがワシントン州の教育機関、Edmonds Community Collegeと取り組んだ電力管理プロジェクトは、33校の小規模カレッジに対するモデルパイロットプロジェクトとなった。
Denaliは複数のパートナーとともにITアセスメントを実施し、プロジェクトのための助成金獲得を支援した。「VARは現在、ここまでやっている。これは競争の流れを変えるソリューションだ」(コンベリー氏)
同氏によると、ベンダーはたとえ利益が紙のように薄くても、まだ機器を売りたがっている。しかし景気低迷の中でソリューションの販売に本腰を入れており、「われわれから見ると、よりサービスへとシフトしつつある」。それでもまだハードウェアとソフトウェアは含まれると同氏は言い添えた。
リセラーからソリューションプロバイダーへ
米VARのHeartland Technology Solutionsで販売・マーケティング担当副社長を務めるラリー・ヘディン氏の話では、同社は長年、ハードウェアとソフトウェアのリセラーとして自社を売り込んできたが、ここ数年でソリューションプロバイダーへと姿を変えつつあるという。現在は売り上げの約60%をハードウェアとソフトウェアから、約40%をサービスから得ている。「これは顧客主導型のビジネスだ。顧客がそれを必要としている」とヘディン氏は話す。
Heartland Technologyの顧客は米中西部の非都市圏にある小規模事業者が大半を占め、そのほとんどがHeartlandをトータルソリューションプロバイダーと見なしているという。「もしわれわれがハードウェアを売るだけだったら、自社のことをどの程度ソリューションプロバイダーと見なせるか分からない」(ヘディン氏)
HeartlandはHPとMicrosoftの2社を主要パートナーとし、この両社の全製品を幅広く扱っている。従って同社は、この両社の研修などのプログラムに相当の額を注ぎ込んでいる。
ヘディン氏は言う。「市場は目に見えて変化している。顧客にとっての真のソリューションプロバイダーとなるべく動いている勝ち組のVARは、ベンダーとの関係への投資で見分けがつくだろう」
後編「Microsoft、リセラー、その他企業の取り分(利益)は?」では、サービス化の進展がもたらす構造変化と、販売チャネルの構造について説明する。
本稿筆者のトッド・R・ウェイス氏は受賞歴もあるテクノロジージャーナリスト、フリーランスライター。2000~2008年、Computerworld.comの記者をしていた。趣味は1957年のMilwaukee Bravesの無名選手に関する本に取り組むことと、ハンフリー・ボガートの名作映画を見ること。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
5
高額な「AI PC」を一般従業員も使えたら? 費用のハードルを一気に下げる方法
-
6
IT調達担当者が知るべき「IT機器 大インフレ時代の前向きな選択肢」
-
7
二極化する生成AI活用 「一部の社員しか使いこなせない」をどう解消すべきか
-
8
公式ストアの“防波堤”が消える「スマホ法」の衝撃 今必要な対策とは
-
9
高信頼セキュアネットワーク、アラクサラ統合で広がるフォーティネットの選択肢
-
10
マンガで解説:KSK2稼働で何が変わる? 税務調査の高度化に備えるデータ管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
9
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー