ベンダーに囲い込まれる前に
SaaSの契約交渉にかかわる留意点
SaaSベンダーは、アプリケーションの高度なカスタマイズや長期契約での割り引きなどにより、乗り換えを困難にしようとしている。
SaaS(Software as a Service)の契約交渉の在り方が変わってきている。ベンダーが公共サービスのような料金オプションを導入し、顧客を囲い込んで長期契約を結ぼうとしているからだ。またベンダーは、カスタマイズ性の高いアプリケーションをサポートするとともに、技術パートナーのエコシステムを構築して関連アプリケーションを充実させることで、他社への乗り換えを困難にしようとしている。
「最近まで、SaaS製品の多くはかなり基本的なもので、乗り換えるのは簡単だった」とForrester Researchのアナリスト、リズ・ハーバート氏は語った。「ベンダーは今、アプリケーションを非常に容易にカスタマイズできるようにすることで、乗り換えを困難にしようとしている」。またベンダーは、大幅なボリュームライセンス割引を用意することで、顧客に長期契約を(場合によっては5年にもわたる契約を)促そうとしているという。
こうした状況の中では、企業は選定したベンダーとうまく付き合っていくことを目指す一方で、トラブルになった場合の逃げ道を契約交渉段階で作っておこうとするだろう。SaaSの契約交渉に関するForrester Researchの調査報告書をまとめたハーバート氏は、この点をはじめ、SaaS契約交渉にかかわる留意点を以下のように説明している。
ベンダーを乗り換えてもカスタマイズ成果を使い続けられる手はずを整えておく
カスタマイズの内容は文書化しておく必要がある。また、AccentureやDeloitte & Toucheなどサードパーティーのコンサルティング会社を利用する場合は、プロジェクトのオーナーシップや、誰がどの部分に責任を持つのかを念頭に置かなければならない。SaaSベンダーの乗り換えに伴うコストや開発作業のリスクを共有することにコンサルティング会社が同意するかどうかを確認しておくことも必要だ。
「コンサルティング会社の起用を決断する場合、乗り換えをどのように支援してくれるかを尋ねておかなければならない」とハーバート氏。「例えば、彼らはあなたの会社がプロジェクト成果の一部をそのまま保持できるように取り計らってくれるだろうか。関連するすべてのベンダーやコンサルティング会社などの役割や、彼らが乗り換えに関してどのような支援を提供できるかを検討しておく必要がある」
もう1つの選択肢は、SaaSベンダーのソフトウェアのカスタムフロントエンドを作成するなど、自社でカスタマイズを行うことにより、その成果を保持することだ。このアプローチを取れば、開発期間を短縮したり、独自のセキュリティ機能やアクセス権限管理機能を組み込んで使うこともできると、ハーバート氏は語った。
新規契約の条件を定める場合、料金の上限などの更新条件を交渉する
「長期契約の更新時には料金が値上げされたりする。このため、契約更新に伴う新料金の上限を設定しておくとよい。例えば、更新後一定年数は料金の上昇率を10%以下にする、といった取り決めをしておくわけだ」(ハーバート氏)
契約の解除条項に再交渉の余地を残しておく
これは、SaaSの料金モデルの新展開を考慮してのことだ。新しい料金方式を取り入れたい場合、1年の短期契約を結び、契約期間の終了時に料金の再交渉を行えるようにしておくとよい。
あなたの会社のSaaS利用に関するデータの使用対価について定める
SaaSベンダーは自社サービスの利用状況リポートを作成し、サービスを使っているユーザーとそうでないユーザーを顧客企業が特定できるようにサポートしている。さらに、そうしたデータ収集結果を自社の製品開発に活用するようになってきている。ベンダーは自社のユーザー全体について利用状況データを調べ、例えば、SFAアプリケーションはよく使われているが、マーケティングアプリケーションはあまり使われていないといったことを把握できる。ベンダーはこうしたデータを製品ロードマップの策定に生かしている。
また、例えば、CRMアプリケーションのデータ(金融サービス業の顧客における平均取引規模を示すデータのような)などを利用して、詳細なベンチマーキングリポートを作成、販売しているベンダーもある。「顧客は、SaaSベンダーがサービスの利用状況データを研究開発に使う場合に、ベンダーに対価を求め始めている。また、ベンチマーキングリポートの無料提供も要望している」(ハーバート氏)
社内の法務部門と連携し、契約の解除条項の策定に当たる
解除条項には、顧客企業の都合で解約する場合の解約金はいくらか、ベンダーのどのような落ち度が解約の正当な理由となるかなどが含まれる。「『任意に解約金なしで』解約できるという条項を定めることに成功している企業も見られる。だが、解除条項の多くは依然として、重大な契約義務違反を前提としている」とハーバート氏は語った。パフォーマンス上の問題がどのような条件に該当する場合に解約の正当な理由となるかについても、定めるべき時が来ていると、同氏は指摘した。
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