CRMベンダーはどのようにユーザーニーズに応えているのか。ハイブリッドモデルでSaaS型CRM提供に乗り出したマイクロソフト、SaaS型のみのセールスフォース、そしてCRMベンダーの巨人、オラクルの3社に話を聞いた。
2008年3月から、最新版「Microsoft Dynamics CRM 4.0」でSaaS(Software as a Service)型CRMの提供を開始したマイクロソフト。SaaS型についてはマイクロソフトが直接提供するのではなく、同社とサーバライセンスアグリーメントを締結したパートナー企業による「パートナーホスティング」形式を取っている。また、社内構築型、SaaS型ともにソフトウェアのソースコードが共通なため、スムーズに移行できることも特徴として挙げている。同社ビジネスソリューションズ事業統括本部 ソリューション推進部 ソリューションスペシャリストの吉田周平氏は、Microsoft Dynamics CRMのメリットとしてやはり「ハイブリッド型」であることを挙げた。
「われわれはまったく同じ製品を2つの形態で提供しています。当然、SaaS型と社内構築型、どちらがよいかなどという議論をするつもりはありません。大切なのはユーザー視点で『選択できる』ということです」(吉田氏)
吉田氏の「選択できる」という言葉には、「その場その場で」という意味が含まれる。確かにユーザー視点で見ると、社内構築型しか選択肢がなければ初期費用の負担や既存システムとの整合性を十分検証する必要があり、導入のハードルは高くなる。逆にSaaS型を導入後に損益分岐点が見えてしまい、社内構築型に移行した方がよいと分かっているのに多大なコストと時間を要するために移行をあきらめたユーザー企業も存在するという。「そういった部分で二の足を踏んでいた企業があるのなら、解消したいと考えたわけです」(吉田氏)
吉田氏はSaaS型の利点と懸念点を以下のように説明する。
SaaS型に注目が集まっているとはいえ、懸念を抱くユーザー企業がないわけではない。そして、SaaS型が本当にベストな選択なのかどうかは、企業のIT戦略全体や将来的なCRMの展開構想によって異なってくるというのがマイクロソフトの考えだ。
また、吉田氏はSaaS型か社内構築型かという選択は「最後でいい」と言う。CRMの導入を検討する企業は、自社の顧客管理やマーケティングプロセスにおいて何かしら課題を持っており、それを解決するためにITの力を借りようとしている。だからこそ、その課題をどう解決するかという話を最初にすべきであり、「ビジネスニーズの解決の中で、今後のCRM以外のIT戦略や費用などさまざまな要件を総合検討した上で、最終的に決断すべきことだと考えています」(吉田氏)。
吉田氏は過去のCRMの課題として、「継続的に利用できないことや、ニーズが変わったときにシステムが塩漬けになってしまい移行できなかったこと」を挙げた。Microsoft Dynamics CRMは、同じ環境下でデータ移動をするデータマイグレーション機能も提供している。SaaS型で行ったカスタマイズや蓄積データを社内構築型に比較的容易に移行することができる。これを他社製品に替えるとなると予算と期間は無視できない。Microsoft Dynamics CRMがまったく同じ製品を2つの形態で提供するハイブリット型だからこそ、提供できるメリットといえるだろう。
「今までSaaS型だったものが明日から社内構築型になってもまったく同じUIですし、カスタマイズもデータも全部引き継いでいます。ユーザーはまったく違和感なくこれまで通り利用を続けていけるのです」(吉田氏)
SaaS型で導入のハードルを下げ、自社に本当に合う形を模索できれば、社内定着も実現しやすい。そして社内構築型への移行や、社内構築型にSaaS型をプラスすることも比較的楽にできる。ユーザー企業がその場その場で自由に選択できる環境を用意することで、マイクロソフトはあらゆるニーズに対応しようとしている。
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