2007年12月10日 14時15分 UPDATE
特集/連載

IDCアナリストに聞くCRMアプリケーション市場の今昔CRM市場、これからのキーワードは「オンデマンド」と「コミュニティー」

SaaSの台頭で活気づくCRMアプリケーション市場。1990年代後半の登場以来、市場で何が起こり、これから何が起ころうとしているのか。市場調査機関大手IDC Japanのアナリストに取材した。

[吉田 育代]

成熟化社会を迎えて始まった、既存顧客との関係見直し

 作れば売れる時代は終わった。よくいわれる言葉である。特に日本は高度成長期を終えて成熟化社会に突入し、わたしたちの生活は既にモノやサービスであふれ返っている。しかし、モノやサービスの提供者である企業としては、その存続をかけて販売を続けていかなければならない。このような環境の中でさらにビジネスを継続しようとすれば、よほど革新的なことを提案し続けていかなければならない。しかし、よほどの天才集団でもないかぎり、それは容易なことではない。ではどうするか。知恵を絞った末の答えが「既存顧客との関係をいま一度見直そう」という発想だった。

 マーケティング業界には、既に定説となっている「1:5」という法則がある。これは「新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかる」というもの。新規顧客の獲得が重要であることは変わらないが、既存顧客は既に自社の商品やサービスの一部を認知している。企業側もこのカテゴリの顧客に関して、幾ばくかの情報を持っている。それならば、顧客による「認知」と自社が持つ「情報」を利用して、体系的な情報集積、的を射た働きかけを行うことで販売機会を最大化しようということで、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)という経営手法が生まれた。ITを活用してそれをドライブしようというのが、CRMアプリケーションというITフィールドである。日本と同様のビジネス課題を抱えていた米国で提唱された。

IDCによるCRMの定義とカテゴリ分類

 市場調査機関大手であるIDCでは、「国内ITソリューション市場 2007年〜2011年の予測」内で、CRMアプリケーションというフィールドに属するソフトウェアを以下のように定義している。

 「CRMアプリケーションは、営業、マーケティング、顧客サービスなど組織内の顧客対応業務プロセスを自動化するアプリケーションである。これらのアプリケーションを使用することによって、顧客のライフサイクル全体を管理でき、企業は顧客との関係を構築/維持できる。コラボレーション用として分類されるCRMアプリケーションは、2人以上で共通の業務目標を達成するためにコンテンツを共有できる機能を提供する」(原文のまま)

 IDCは、CRMアプリケーションセグメントには次の4つが存在するとしている。

アプリケーションセグメント 説明
セールスソフトウェア セールス管理アプリケーションおよびセールスフォースオートメーション(SFA)ソフトウェアの両方が含まれる
マーケティングソフトウェア マーケティングのさまざまなプロセスに関連する、広範囲な個別的および協調的な活動を自動化する
カスタマーサービス(※) 顧客情報管理機能を提供する。各アプリケーションは既存顧客との関係の維持管理を強化する目的で設計されている。顧客サービスソフトウェアは、組織外の顧客のサポートサービスに使用される。顧客サービス機能には、問題追跡、顧客履歴、着信電話管理がある
コンタクトセンター(※) CRMの実現に関連するさまざまな機能を提供する。主にコールセンター機能を専門とするインフラストラクチャベンダーおよびミドルウェアベンダーのアプリケーションを含む

(※)もともとカスタマーサービスとコンタクトセンターは同じカテゴリに属していたが、今日、前者はどちらかというとフィールドサービスを実現するために必要な機能を提供する。それに対して、後者はよりコールセンター業務支援に特化したソフトウェアになってきている。

3つの世代を経て今日まで進化してきたCRMアプリケーション

 IDC Japanのソフトウェア グループマネージャー 赤城 知子氏は、IT市場におけるCRMアプリケーション発展の歴史を、大きく3つの世代および現在という形でとらえている。

 第1世代が出現するのは1990年代後半。最前線のセールスマンが利用するSFA(Sales Force Automation)や、コールセンターのためのCTI(Computer Telephony Integration)といった単機能のCRMアプリケーションが登場した。ちょうど電子メールも利用され始めたころだが、まだチャネル化されておらず、インターネットそのものはまだここに介在していなかった。

 続く第2世代は、2000年から2003年にかけて登場した。この時代のキーワードは「統合」であったと赤城氏は語る。単機能のCRMアプリケーションが、ERPアプリケーションのようにスイート化されるとともに、電話、FAX、電子メール、インターネットなど、顧客との接点となるさまざまなチャネルで一元化されたデータベースを利用しようという動きが活発になっていった。つまり、あらゆる手段で顧客の全貌をつかもうとしたのである。しかし、一方で、CRM関連のソフトウェアを導入しても売り上げが向上しないという現実に直面する企業が少なからず出てきたのも、このころのことだった。

 第3世代に分類されるのは2003年から2006年。米国でのSOX法や日本における個人情報保護法などの制定を受け、あらためて顧客情報管理の重要性が認識されるようになり、真剣に取り組む企業が増加した。また、第2世代で顧客データベースが完全に一元化されたことで、さまざまな角度からの分析が可能になった。情報を収集・分析し、その結果を商品開発やビジネスプロセスの改善に適用するなどといった具合に、いわゆるPDCA(Plan―Do―Check―Action)サイクルを回しながら、CRMアプリケーションをよりマーケティング的に利用していこうという気運が高まったのである。

 赤城氏はこの経緯を次のように語る。

 「日本で一時期SFAなどCRMアプリケーションの導入が下火になったのは、その機能が主にセールスマンの上司、つまり管理者の仕事を楽にするために作られていたからです。セールスマンにとっては仕事が増えただけで、それで成績が上がるわけではない。だから積極的に使う気になれなかったのです。また、特に日本においては海外ベンダーのソフトウェアで設定している商談プロセスが商習慣になじまず、使いにくかったという理由もあると思います。その反省を踏まえて第3世代では、セールスマンがセールスリード(見込み客)をより迅速に発見できるように、顧客満足度向上が実現できるように改善されたのです。それが法令順守強化傾向などと相まって、企業にこの分野のテコ入れを決断させたように思います」。

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