Windows XP&Windows Server 2003移行の「い・ろ・は」【第4回】
絶対に捨てられない「Windows XP」システムをそれでも温存するには?
「Windows XP」を仮想化しても、差し迫ったサポート終了の問題解決にはなりません。一方、システムを丸ごと撤去するのも難しい。セキュリティリスクを最小限に抑えながら、旧システムを温存するにはどうすべきでしょうか。
仮想化しただけでは解決しないサポート終了問題
前回(簡単なようで難しい Hyper-Vによるサーバ仮想化の意外な落とし穴)は、「Windows Server 2012 R2」の最新のHyper-V仮想環境に、「Windows Server 2003」や「Windows XP」を実行する物理コンピュータをP2V(Physical to Virtual)変換で仮想マシンに移行する方法について説明しました。
Windows Server 2003については、まだ1年以上先の2015年7月15日(日本時間)までサポートが続きます。そのため、仮想化することでハードウェアのライフサイクルからOSを含むソフトウェアのライフサイクルを分離でき、仮想環境を活用しながら移行作業を行えるメリットがあります。その一方で、今、Windows XPを仮想化しても、2014年4月9日(日本時間)に差し迫ったサポート終了の問題は何も解決しません。
OS、OS関連のコンポーネント(「Internet Explorer 6」など)およびアプリケーション(「Microsoft Office 2003」など)のサポート終了により、脆弱性に対するセキュリティパッチが提供されなくなると、セキュリティリスクが高まります。
米Microsoftのマルウェア対策製品「Microsoft Security Essentials」や「System Center Endpoint Protection」「Forefront Client Security」「Forefront Endpoint Protection」「Windows Intune」は、Windows Server 2003と同じ、2015年7月15日(日本時間)まで定義ファイルおよびエンジンの更新プログラムが提供されることが明らかになりました。しかし、これで当面、「Windows XPを使い続けても安全」というわけにはいきません。マルウェア対策だけでは、ゼロデイ攻撃や、その他のさまざまな攻撃手法に対抗しきれないでしょう。OSの脆弱性が修正されなくなるWindows XPは、今後、格好の攻撃対象になります。
Microsoftは、脆弱性のリスクを緩和するセキュリティツール「Enhanced Mitigation Experience Toolkit」(EMET)を提供しています。このツールは、Windowsが備えるさまざまなセキュリティ機能を使って、脆弱性が悪用されるのを防止するものです。最新版はEMET v4.1で、Windows XP SP3にも対応しています。ただし、「Security EssentialsとEMETを併用すれば、Windows XPを使い続けても安心」と考えるのは間違いです。EMETは攻撃のリスクを緩和してくれるかもしれませんが、全ての攻撃をブロックするわけではありません。加えて、Windows XPは、EMETが利用する機能の一部に対応していません。Windows XP自体に該当機能が搭載されていないからです。
仮想環境はネットワークやメディアからの隔離に最適
サポート期間が終了するまでにWindows XP環境から移行する最も簡単な方法は、同OSを利用するシステムを丸ごと撤去することです。しかし、古いシステムに保存されている業務データやアプリケーション資産をその日を境に捨て去ることなど、できるはずもありません。
先ほど、仮想化しただけではWindows XP問題の解決にならないと説明しました。しかし、仮想環境の特性を活用すれば、利便性を大きく損なうものの、セキュリティリスクを低下させることなく、旧システムを温存できる可能性があります。
Hyper-Vに限らず、ハイパーバイザー製品は外部ネットワークとは独立した、プライベートネットワークを作成できます。その機能を使えば、仮想化ホスト上にある複数の仮想マシンをそのプライベートネットワークに接続し、隔離されたネットワーク環境で実行することが可能です。Hyper-Vの場合は、「プライベート」タイプの仮想スイッチがこれに相当します。
物理コンピュータの場合、たとえネットワークから切断しても、CD/DVDメディアやUSBメモリといったリムーバブルメディアからマルウェアが侵入する経路が残ってしまいます。その点、仮想マシン環境では、ネットワークだけでなく物理環境からの分離も簡単です。仮想マシンからDVDドライブを削除すれば、CD/DVDのISOイメージや物理メディアからのマルウェアの侵入を排除できます。Hyper-Vの場合は、仮想マシンはUSBポートを持たないので、USBメモリについて心配する必要はありません。
ただし、ホストとゲスト間の連携機能が侵入経路になる可能性は残ります。Hyper-Vの場合は、仮想マシンバス(VMBus)やゲストサービス(Windows Server 2012 R2 Hyper-Vからのファイルコピー機能)が該当します。これらの経路については、最新のHyper-Vを利用している限り、脆弱性が見つかれば、Hyper-VやWindows Server 2012 R2のセキュリティパッチとして問題に対処できるはずです。
なお、Windows Server 2012 R2のHyper-Vは、「仮想マシン接続」のコンソール表示において、「拡張セッションモード」というホストとゲスト間の連携機能をサポートします。拡張セッションモードでは、ドライブリダイレクトやUSBデバイスリダイレクトもサポートしていますが、Windows Server 2003やWindows XPゲストでは利用できない機能なので問題ありません。拡張セッションモードは、Windows Server 2012 R2や「Windows 8.1 Pro/Enterprise」ゲストを実行している場合でなければ利用できません。
ユーザーの利便性は犠牲にして完全に隔離
ネットワークから完全に隔離された旧システムを利用するには、仮想マシンのコンソールから操作する必要があります。Hyper-Vの場合は「Hyper-Vマネージャー」の「仮想マシン接続」ツールを使用します。利便性は著しく損なわれますが、旧システム利用者がHyper-Vホストのコンソールに出向いて、IT部門の監視の下、利用するのが安全でしょう。IT部門としては、旧システムの利用が面倒になれば、だんだんに使われなくなるということも期待できるかもしれません。
Hyper-Vはリモート管理に対応しているため、旧システムの利用者のコンピュータで「Hyper-Vマネージャー」を利用可能にする方法もあります。その場合、Hyper-Vに対する管理者権限を許可する必要があるため、それがセキュリティ上の問題になるかもしれません。
リモートデスクトップ接続による旧システムへの接続を可能にする場合は、マルチホーム構成の仮想マシンにWindows Server 2012 R2のリモートデスクトップ(RD)ゲートウェイを導入して、隔離されたネットワークのWindows XP仮想マシンのRDPポート(3389/TCP)への接続を中継するとよいでしょう。RDゲートウェイでは、リモートデスクトップ接続が備えるデバイスのリダイレクト機能を一箇所で無効化できます。ただし、この方法では、Windows XPのRDPプロトコルの実装に脆弱性が発見された場合、マルウェアの侵入や攻撃が成功する可能性はゼロではありません。
プレインストールのOSってP2Vで移動できるの?
旧システムの移行の問題解決を、安易に仮想化に求めることはできません。しかし、サポート終了期限が迫る中、どうしても移行に間に合わない場合、あるいは移行のコストを考えると不要になるまで何とか使い続けたいという要望には、仮想化による旧システムの隔離はセキュリティリスクを緩和する上で有効です。ただし、仮想化は万能ではありません。特殊な入出力装置を必要とするシステムなど、物理ハードウェアに依存するシステムには適用できません。
最後に、既存のシステムをP2V移行で仮想マシンに移行する上で、気になるライセンスの話です。PCサーバやクライアントの多くは、OEM版のOSがプレインストールされたコンピュータである場合があります。OEM版OSのライセンスは、OEMハードウェアにひも付くため、別のハードウェアにライセンスを移動することは許可されません。だからといって、P2VによるOSのインストールイメージ(ライセンスではない)の移行が制限されるわけではありません。移行先の物理ハードウェアに受け皿となる正規のライセンスを用意しておけばよいのです。
例えば、最新のWindows Server 2012 R2は、物理サーバに付与されるプロセッサベースのサーバライセンスです(2プロセッサに1サーバライセンス)。このサーバライセンスには、1ライセンス当たり、Standardエディションで2つ、Datacenterエディションで無制限のWindows Serverの仮想化インスタンスを実行する権利が含まれています。この仮想化の権利に加えて、ダウングレード権およびダウンエディション権もあります。これらの権利を用いることで、物理サーバで稼働していたOSイメージを、P2Vで仮想環境に移行して実行できます。
プリインストールされたWindows XPの場合は、これから仮想マシン用にWindows XPのライセンスを購入するということはできません(販売終了品のため)。しかしながら、「Windows Virtual Desktop Access」(Windows VDA)の権利でカバーできます。
新しく導入したクライアントPCに有効なソフトウェアアシュアランス(SA)付きのWindowsクライアントのボリュームライセンスがある場合、またはWindows VDAサブスクリプションライセンスがある場合は、Windows VDAの権利を行使して、ローカルまたはリモートの仮想環境上で、最大4つのWindows 8.1 Enterpriseの仮想インスタンス、またはダウングレード、ダウンエディションバージョンの仮想インスタンスを実行することができます。
これ以外の方法として、仮想マシン専用にボリュームライセンス版のWindowsを購入し、ダウングレード権やダウンエディション権を利用する方法があります。なお、リテール版およびDSP版(個人使用ライセンス)にダウングレード権は提供されません。
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