Windows Server 2003ユーザーのためのHyper-V解説【第2回】
Windows Server 2003の延命にHyper-V活用は妥当か?
Windows Server 2003(R2含む)の移行先としてまず挙がるのは、現在の最新版であるWindows Server 2012 R2だ。仮想化テクノロジーのHyper-Vは、このバージョンで利用できる機能である。移行期およびその後の運用における活用方法を解説する。
Windows Server 2003
一般的に、「Windows Server 2003」を動作させる環境は、1つの物理サーバ上で1つのOSを動作させる環境になる。前回の記事「Microsoftの仮想化の歴史から振り返る、Hyper-V誕生のストーリー」で述べた通り、Windows Server 2003がリリースされた当初は、サーバ仮想化のテクノロジーがまだ普及していなかった。だが、現在のWindows ServerにはHyper-Vの機能が標準搭載されている。この機能は、Windows Server 2003を移行する際にも役立てることができる。なお、本連載は、Windows Server 2003を使用し、仮想化を進めていないユーザーを想定読者としている。
Hyper-Vの仕組みをおさらい
仮想化について全くご存じない方向けに、まずは簡単にその仕組みを説明する。Hyper-Vは、1つの物理サーバ上で複数のOSを仮想的に動作させることのできるテクノロジーだ。これによって、ハードウェアおよびそのコストの削減、それに伴った運用コストの削減などが可能となる。他にもさまざまな機能があり、OS稼働中にチェックポイントを設けて、後にそのポイントのスナップショット時点に環境を復旧することや、またDR(災害復旧)対策のためのレプリカ環境の容易な構築など、物理サーバ1台で1つのOSを稼働させていたときとは比較にならないほどのメリットを享受できる。
Hyper-Vは、マイクロカーネル型と呼ばれるアーキテクチャを採用している。Windows Server上でHyper-Vの機能を有効化すると、OSの下のレイヤーにハイパーバイザー(マイクロカーネル)が位置するようになり、他のOSを仮想マシン(ゲストOS)として同時に動作させられるようになる。このとき、ゲストOSに対して元のWindows ServerをペアレントOSと呼ぶ。マイクロカーネル型の特徴としては、ハイパーバイザーを管理する環境がペアレントOSになる点だ。
特にHyper-Vの場合は、ペアレントOSがこれまで慣れ親しんだWindows Serverのユーザーインタフェースであり、さまざまな管理操作がこれまでのOS管理と同様かその延長上でできるので、習得が容易である。仮想化という新たな仕組みを取り入れる際に、こうした人系の導入コストは見落としがちだ。
もう1つの大きな特徴としては、デバイスドライバの扱いにある。図1の矢印が示す通り、Hyper-V上の仮想マシンのデバイスドライバは直接ハードウェアを制御することはなく、必ずペアレントOSおよびそのデバイスドライバを通じてハードウェアにアクセスする。この仕組みによって、ハイパーバイザー側に専用のデバイスドライバが不要になり、ペアレントOSの汎用的なデバイスドライバがそのまま利用できる。つまり、仮想マシンのOSは、Windows Server環境をサポートするデバイスドライバを通じて、多くのハードウェアを利用することができるのである。
これ対して異なるアプローチを取るのが、VMwareなどの仮想化ソフトウェアで採用されているモノリシックカーネル型のアーキテクチャだ。このアーキテクチャではハイパーバイザー専用のデバイスドライバが必要になり、開発・実装する必要があるが、全体が一枚岩(モノリシック)構造で一体化しているため、処理のオーバーヘッドが小さいのが特徴である(ただし、近年のハードウェア/ソフトウェアの進歩によって、マイクロカーネル型でも十分に実用的なパフォーマンスが得られるようになっている)。
「Windows Server 2008 R2」以降、Hyper-Vは標準で利用できる機能のため、導入のハードルは低くユーザーはすぐに利用を開始できる。「Windows Server 2012 R2」においても「サーバーマネージャ」の「役割と機能の追加ウィザード」で、「サーバの役割の選択」ページにて「Hyper-V」にチェックを付けて進めることで、簡単にインストールが可能である(同時に他にも管理ツールのインストールや仮想スイッチの設定などが可能)。
また、Windows Serverのインストールオプションとして、Server Coreという軽量のインストールモードがある。Server Coreでは、UNIX系OSのようにCUI(Command Line Interface)で操作することを想定し、GUI(Graphical User Interface)機能を省いている。これによって、ネットワーク関連などサーバとして最小限の機能をインストールして実行することができる。
また、Server CoreモードでもHyper-Vをインストールすることができる(PowerShellのコマンド“Install-WindowsFeature”にて)。この場合、ペアレントOSに該当する部分をServer Coreモードによって少ないリソースで実行する。Windows Server 2012以降では、通常のGUIモード、Server CoreモードなどをOSインストール後も切り替えることができる。そのため、初期構築はGUIで行い、後でServer Coreモードに切り替えるといった運用もよく行われている。
ゲストOSとしては、最新版のWindows Server 2012 R2をはじめ、2003(SP2以降)/2003 R2(SP2以降)/2008(SP2以降)/2008 R2(SP1以降)/2012/2012 R2と、新しいWindows Serverだけでなく古い世代もサポートする。加えて、Red Hat Enterprise LinuxなどメジャーなLinuxディストリビューションもサポートする。また、プロセッサ環境としては、ペアレントOSが稼働する64ビット環境に加えて、多くのWindows Server 2003が動作しているであろう32ビット環境もサポートする。
Windows Server 2003の一時的な延命のための活用
勘の良い読者の方はすぐに、「ハードウェアのサポートが切れたWindows Server 2003を、新たに準備したWindows Server 2012 R2上のHyper-VゲストOSに移行する」ことを思い描いたかもしない。
確かに、これまでもハードウェアのサポート切れの際に、Hyper-Vの機能がそのように有効活用されてきた場面は多い。たまたま別の用途で導入した最新のサーバ機器に、ハードウェアのサポート切れで行き先のなくなった古いOS環境を同居させるといったケースだ。これは最新機能を用いた資源の有効活用である。
だが、ハードウェアのサポート切れに対してはこの方法で対応できても、OSのサポート切れに対しては有効な手段とはいえない。ゲストOSとなって環境が刷新されても、稼働しているOSが古いバージョンであることに変わりはなく、物理環境でも仮想環境でも、サポート切れの時期が等しく訪れることには変わりがないからである。
ただし、一時的な措置としての活用は考えられる。例えば、独自に開発したアプリケーションがWindows Server 2003上で多数稼働していると想定しよう。当時開発したアプリケーションは、利用しているフレームワークが「ASP.NET1.1」など、現代のアーキテクチャよりも古いものを活用しているケースが多い。それらのアプリケーションを最終的に最新のOS環境に移行するに当たって、少なからずアーキテクチャの刷新や、最新のライブラリを使用するためのプログラム改修、またそれに伴うテストを実施する必要が出てくる。
既に対象のプログラムが特定できており、対応策が明示的に把握できているのであればさほど時間はかからないかもしれないが、これから対応を開始するのであれば、アプリケーションの棚卸しや機能の調査から始めるなど、意外に手間と時間がかかることも想定される。
そのような場合に、一時的な延命措置としてのWindows Server 2003の仮想化という解決策は無くはない(ただし、決して一義的にお勧めする措置ではない。OSのサポート切れがすぐそこまで迫っていることを認識しての、あくまでも一時的な措置と考えていただきたい)。現行の環境を仮想化でキープしたまま、その裏で速やかにアプリケーションへの対応を進めることになる。
物理環境から仮想環境への移行
現在、物理環境で稼働している環境を仮想環境に移行するにはどうしたらよいのだろうか? これには、P2V(Physical to Virtual)マイグレーションという手法を用いることで実現できる。
具体的には、物理環境そのものを、PV2ツールを用いて丸ごと仮想ディスク形式のファイルに変換した後に、別のサーバ上にあるHyper-VのゲストOSとしてインポートする。P2Vツールには複数あり、Microsoftが提供する有償のものでは「System Center Virtual Machine Manager」(SCVMM)がある(※1)。また、サポートは提供されないが無償のもので「Disk2vhd」が利用できる。他にもサードパーティー製のツールで利用できるものがある。SCVMMは、Hyper-Vと親和性の高い管理ツールとしてさまざまな機能を活用できるので、今後の連載であらためて触れる予定である。
※1 ただしP2V機能が提供されているのはSystem Center 2012までで、最新版のSystem Center 2012 R2で当該機能は提供されていない。
物理環境からクラウド環境への移行
P2Vが物理環境から仮想環境への移行ならば、物理環境からクラウド環境への移行はP2C(Physical to Cloud)またはP2V2C(Physical to Virtual to Cloud)とでも呼ぶべきだろうか? 少し話は飛躍するが、このテーマについても触れておきたい。クラウドにもさまざまな種類があるが、ここでは仮想マシンを起動できるサービスを備えたMicrosoftのクラウドのサービス「Microsoft Azure」を例に説明を続ける。
クラウド環境はベースのテクノロジーとして必ず仮想化を活用している。クラウドは膨大なコンピューティングリソースを集積し、ユーザーがいつでもリソースを調達可能であるという特徴を備えるので、それを実現するためのバックグラウンドとしては仮想化のテクノロジーは欠かせない。Microsoft Azureの場合は当然のごとく、Hyper-Vをベースとしたテクノロジーを採用している。つまり、前述のP2Vマイグレーションツールで仮想ディスク形式にしたファイルを、Microsoft Auzre上で仮想マシンとして起動することができるのである(現在は.vhdファイルのみの対応)。
ただし、OSのサポート環境の条件があり、Windows Server 2008 R2以降の64ビット環境のみの対応となる。つまり、Windows Server 2003はサポートされないため、前述の延命措置の用途としての活用はできない。もっとも、サポートがあったとしても、クラウド環境は管理者さえも原則インターネット経由でのアクセスしかできないため、悪意のある攻撃と接触する可能性があるという意味では、クラウド環境は、サポート切れのOSを配置する環境としては極めて不適切といえる。
クラウド環境ならではのメリットには、瞬時のリソース調達・スケールアップ/ダウン、従量制課金、運用の高度な自動化など、仮想化と同様に計り知れないものがある。そのため、Windows Server 2003を最新OSにアップグレードした際の仮想化のその先には、クラウドという選択肢も視野に入れておくとよいだろう。シームレスにクラウドに移行できるのが仮想環境の特徴なので、まずはHyper-Vを活用して仮想化を取り入れておくことは、昨今のクラウド時代における必須要件といえる。
以上、Hyper-Vの概要説明を中心に、仮想環境への移行について説明した。仮想化を取り入れることでメリットを享受し、さらにその先への広がりがあることを感じていただければ幸いである。次回はHyper-Vの最新機能について、今少し掘り下げて解説する予定である。
田中 隆三郎(たなか りゅうさぶろう)
日本マイクロソフト インキュベーションセールス部 テクノロジースペシャリスト
現在の担当はMicrosoft Azureのプリセールス。
ソフトウェアディベロッパーとして数社で開発業務に従事した後、SIer企業にてSAPアップグレード業務や、AWSやGoogleなどのパブリッククラウドを活用した事業推進に従事。2013年より現職に就く。現在の関心事は、クラウドのテクノロジーとそれを取り巻く業界全般。
ベーシストかつスキューバダイバーで、最近の趣味は温泉とゆるキャラ。
ブログ:Heart and Soul
Twitter:@rewtheblow
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