水の蒸発で熱を吸収
暑い夏にコンピュータをどう冷やす? 企業が試している“意外に単純な方法”
コンピュータの永遠の課題は熱を持つシステムをどう冷やすか。システムが熱くなりすぎるとエラーが発生する一方で、冷却には電力コストが掛かる。安く、効率的に冷やす方法とは?
高温地域にあるデータセンターでは、断熱冷却技術を利用することでエネルギーコストを大幅に削減できる。また、エンドユーザー側の遅延とデータの主権についての問題が重要性を増してきたことも、断熱冷却への関心の高まりにつながっている。
データセンターは高温を嫌うが、熱は相対的なものである。データセンターの温度は今後当分の間、25~30度に保たれるだろうが、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)のガイドラインに示された35度という高い温度設定でも、精密空調装置(CRAC:Computer Room Air Conditioner)およびデータセンター周囲の空気循環のためにエネルギーが消費される。
高温地域で外気冷却方式を採用したデータセンターでは、ASHRAEのガイドライン温度を日常的に上回るケースも少なくない。だがCRACが唯一の解決策なのだろうか。CRACに資金と維持管理の労力を注ぎ込む前に、断熱冷却方式を検討することをお勧めする。
水の蒸発で涼しくなる
外気冷却のみで運用されている温暖地域や寒冷地域のデータセンターの場合は、急激な温度上昇時の対策として断熱冷却を利用できる。維持管理の労力と消費電力が少なくて済む断熱冷却方式は、外気冷却を補完する手段としてCRACシステムよりも効果的だ。
断熱冷却(「気化冷却」あるいは「蒸発冷却」とも呼ばれる)は、高温対策に高温そのものを利用する技術である。気体の体積変化を利用して温度を下げるのだ。気体は膨張すると熱を吸収する。さらに液体が気体に変化する際には、大きな温度変化が生じる。データセンターの断熱冷却はこの原理を利用する。
クロロフォルムが入った薄いガラス製のビーカーを、少量の水道水が入った容器の中に置いたと想像していただきたい。ストローを使ってクロロフォルムに息を吹き込むことにより、揮発性のクロロフォルムを蒸発させ、その周囲の物質(この場合は水)から熱を奪うことができる。蒸発速度が十分速ければ(ストローから勢いよく空気を送り込む)、水が凍る。
自分の指をなめて、そこに息を吹きかけるだけでも断熱冷却の効果が分かる。指が乾いた状態よりも湿った状態の方が、息を吹きかけたときに冷たく感じるはずだ。
CRACは基本的に断熱冷却システムの一種である。機械式ポンプで気体を圧縮して液体に変換し、その過程で発生した熱を排出した後、その液体を再び膨張させることにより、一定量の空気を冷却するという仕組みだ。しかしCRAC冷却方式の圧縮過程では、かなりのエネルギーを供給する必要があるため、システムが高価になる。
それよりもはるかに安価な断熱冷却の仕組みが存在する。高温気候の地域に住む人々は、シーツを水に浸し、それを室内の物干し綱に掛けて部屋の温度を下げている。水が蒸発するときに熱が吸収され、室内が涼しくなるのだ。これがデータセンター用断熱冷却システムの基本的な仕組みである。
データセンターを冷却する場合は、消費電力の少ないポンプあるいは重力方式を利用して、表面積の大きい繊維状マットの上に絶えず水を垂らすという方法が用いられる。ダクトを備えた低電力型ファンを使ってこれらのマットに空気を通す。この空気はその過程で一部の水を蒸発させ、マットを通過した後の空気は通過前よりもはるかに冷たくなっている。
気候条件によっては断熱冷却システムを利用すると、湿度がASHRAEのガイドラインである80%を超える場合があるかもしれない。これに対する簡易的な対策として、乾燥用の二次フィルターや電力消費の少ない(あるいは電力を使わない)除湿装置を装備すれば、データセンターの湿度のガイドラインに適合できる。
ダクトと低電力空気ポンプを使って冷却空気が正確にデータセンターのIT機器に当たるようにすれば、断熱方式で冷却した空気が少量で済むため、冷却装置のサイズを抑えることが可能だ。
この分野には、スウェーデンのMunters、英EcoCooling、英Excool、英Vent-tech、米Coolerado、米United Metal Productsなど多数のベンダーがひしめいている。エネルギーコストの上昇に伴い、データセンター運用事業者は高価なCRACなどの強制冷却システムに代わる方式に目を向けるようになるだろう。これを受けて、仏Schneider、米Emerson、米GEなどの大手空調/エネルギー管理企業も、独自に断熱冷却システムを開発したり、小規模ベンダーの買収に乗り出したりする可能性がある。
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