物理環境とは違った観点が必要
完璧な製品は存在しない、4つの仮想化バックアップ/リカバリ製品を比較
仮想環境では、バックアップ/リカバリの新しいアプローチが必要だ。本稿では、仮想バックアップの機能を備えた製品を紹介する。
サーバ仮想化は現代のITインフラに欠かせない存在となっている。機敏性と弾力性の両方を向上しながら、データセンターのハードウェアコストを削減することができる。だが、サーバ仮想化にもデメリットはある。それは仮想バックアップでは物理環境と異なる対処が必要なことだ。
有り難いことに、データバックアップ製品のベンダーは仮想化のトレンドに後れを取らずについて行っている。サーバ仮想化を初めて導入する場合やベンダーの変更を検討している場合は、仮想マシンのバックアップに使える製品が多数あることを知っておくとよいだろう。
本稿では、仮想マシンのバックアップソフトウェアの重要な購入基準について説明する。その基準は「企業向けアプリケーションのサポート」「重複排除機能」「レプリケーション機能」「リカバリ機能」の4つだ。以下、4つの製品を比較する。
- スイスVeeam Software「Veeam Backup & Replication v7 Enterprise Plus」
- 米Symantec「Symantec Backup Exec 2014」
- 米CommVault Systems「Simpana 10」
- 米Unitrends「Unitrends Enterprise Backup」
企業向けアプリケーションのサポート
本稿で紹介する製品には、各種基幹業務アプリケーションの保護機能が搭載されている。Simpana 10では、さまざまなアプリケーションがサポートされている。例えば、米Oracleや独SAPの製品の他、米Microsoftの「Microsoft Exchange Server」「Microsoft SQL Server」「Microsoft SharePoint」、米IBMの「IBM DB2」「IBM Notes」などだ。Unitrends Enterprise BackupはIBMの「IBM iSeries Site」、SQL Server、Exchange Server、Oracle製品の保護に対応している。
Veeam Backup & Replication v7 Enterprise PlusではMicrosoftアプリケーションを中心としたアプローチを採用しており、SQL Server、Exchange ServerおよびSharePointの保護に対応している。エージェントレスのアプリケーションサポートは同製品固有の機能だ。この機能により、管理の手間やコストを削減できる。
Symantec Backup Exec 2012には「Backup Exec Agent for Applications and Databases」というアドオンパッケージが用意されている。このパッケージを使用すると、Exchange Server、SQL Server、SharePoint、Symantecの「Symantec Enterprise Vault」、IBMの「IBM Notes/Domino」、Oracle製品についてアプリケーションレベルのサポートが提供される。Backup Exec 2014では、SQL Server 2014の保護機能に加えて、Exchange Server 2013とSharePoint 2013用の細分化されたリカバリ機能が追加され、アプリケーションのサポート範囲が拡張されている。
重複排除
重複排除は現代のバックアップソリューションに欠かせない機能だ。この機能のメリットは、バックアップ先のストレージ使用量を削減できるだけではない。低速のネットワークで転送するデータを事前に圧縮するのにも役立つ。なお、本稿で比較している全てのバックアップ製品は何らかの重複排除機能を備えている。
4つの製品の中で最も柔軟性の高い重複排除機能を提供しているのがSimpana 10だ。Simpana 10はバックアップ元での重複排除とバックアップ先での重複排除の両方をサポートしている。また、複数のシステムで包括的な重複排除を実行することもできる。
Unitrends Enterprise Backupも複数のストレージデバイスに対応した包括的な重複排除機能を特徴としている。同製品は、米VMwareが提供する「VMware vSphere」の仮想マシンの増分バックアップを実行する機能「Changed Block Tracking」(CBT)をサポートしている。また、Microsoftの「Hyper-V」とも連動するように設計されている。
Symantec Backup Exec 2014にも重複排除機能が搭載されている。Symantecは以前から、「Backup Exec Deduplication Option」アドオンによって重複排除をさまざまなレベルのバックアップインフラで実行できるようにしてきた。例えば、クライアント、メディアサーバ、機器のデータだ。同製品には基本的なブロックレベルの重複排除とCBTのサポートが組み込まれている。
Veeam Backup & Replication v7 Enterprise Plusにはエージェントレスのバックアップ元に重複排除エンジンが搭載されている。このエンジンは、バックアップデータをWAN経由でコピーする時間を最小限に抑えるWANアクセラレーション機能を提供する。
レプリケーション
クラウドバックアップは、バックアップとリカバリの分野における大きなトレンドの1つだ。だが帯域幅の制限を考えると、クラウドをバックアップのプライマリターゲットとして使用するのは現実的でない。ローカルにデータをバックアップしてから、バックアップコンテンツをクラウドやセカンダリデータセンターにレプリケートする方がずっと効率的だ。この方法では、ローカルでデータを復元できるだけでなく、オフサイトにデータのコピーが安全に保管されるというメリットもある。
Veeam Backup & Replication v7 Enterprise Plusは、仮想マシンのイメージベースのバックアップを実行するように設計されている。バックアップはローカルに作成した後、オフサイトのバックアップターゲットにレプリケートできる。レプリケートされた仮想マシンは、スタンバイ状態で維持される。稼働中の仮想マシンがダウンしたら、レプリカの仮想マシンにフェイルオーバーすることが可能だ。また、同製品にはIPアドレスの変更メカニズムが搭載されている。そのため、仮想マシンをセカンダリサイトで実行することができる。
Simpana 10では「Simpanaレプリケーション」機能を使ってレプリケーションを実行する。この機能は、基盤となるストレージデバイスやレプリケーションターゲットにかかわらず動作するように設計されている。データはクラウド、セカンダリデータセンター、DR(災害対策)サイトにレプリケートすることが可能だ。
Unitrends Enterprise Backupのレプリケーションはクラウド指向である。データはプライベートクラウドまたはUnitrendsのパブリッククラウドにレプリケートできる。また、マルチテナント環境もサポートされている。
Symantecは以前「Backup Exec Cloud DR Option」というアドオンでクラウドレプリケーションの機能を提供していた。これはvSphereを使用する組織を対象としたアドオンだったが、現在はSymantecのBackup Exec対応のエージェント、オプション、アドオンの一覧には掲載されていない。
リカバリ機能
全てのバックアップアプリケーションにとって一番重要なのは、どのくらいの精度でデータを復旧できるかだ。優れたバックアップアプリケーションには、最悪の障害が発生した状態からでも迅速にデータを復旧することが求められる。
Veeam Backup & Replication v7 Enterprise Plusでは、障害が発生した仮想マシンを2分以内に再起動できるとうたわれている。また、同製品には「Veeam Explorer」というWindowsエクスプローラーのようなインタフェースが用意されている。このインタフェースを使用すると、ファイル、フォルダ、アプリケーションのデータ復旧を項目レベルで即座に実行できる。さらに仮想ラボ機能も提供されている。これは厳密にはリカバリ機能ではない。だが、バックアップを使用して、運用環境を模倣した仮想ラボ環境をプロビジョニングしている。
Symantec Backup Exec 2014は異なるハードウェアにサーバデータを完全に復旧する。また、ボリューム、ファイル、フォルダなどを復元するための細分化された復旧オプションも用意されている。P2VおよびV2P変換ウィザードでは物理サーバと仮想ハードウェア双方の復元が可能だ。
Simpana 10では復旧の効率性を重視しているように思われる。同製品のコンソールでは複数のコンポーネントの情報を1か所から確認できる。このコンソールはバックアップとリカバリ管理の複雑さを軽減する目的で設計されている。また、「ワークフロー自動化機能」「リポートエンジン」「ダッシュボード」によって、バックアップや復旧の状態を簡単に確認できる。承認されたユーザーがセルフサービスで復旧できる機能もある。
Unitrends Enterprise Backupはハイパーバイザーを使用して仮想マシンのインスタントプロビジョニングと復旧を実行する。さらに、同製品のリカバリエンジンは異なるハードウェアへのデータの復元をサポートしている。P2V、P2PおよびV2Vの復旧が可能だ。この製品はSimpana 10と同様にユーザーインタフェースの効率性を重視している。Unitrends Enterprise Backupのインタフェースは適応性が高い。導入先の規模の変化に応じて拡張可能だ。
まとめ
完璧な仮想バックアップ製品は存在しない。重要なのは自社のニーズに合った製品を購入することだ。ある環境に適したバックアップアプリケーションが別の環境にも適しているとは限らない。
筆者が使い慣れているのはVeeam Backup & Replicationだ。使いやすく、操作に迷うことがない。豊富な復旧オプションもこの製品の魅力だろう。
それでもこの製品は完璧ではない。Veeam Backup & Replicationは仮想マシンの保護に特化して設計されている。そのため、物理サーバのバックアップには使えない。また、接続されているアプリケーション情報を把握する機能が他の製品と比べて弱い。
さまざまな物理システムと仮想システムを使用している場合や複数のアプリケーションとOSが混在している場合、本稿で比較した製品の中ではSimpana 10またはSymantec Backup Exec 2014が最適な選択肢となるだろう。
製品プロファイル
Veeam Backup & Replication v7 Enterprise Plus
Veeamの主力製品で、仮想環境に特化して開発されているイメージベースのシステムを使用してファイルレベルのインスタント復旧を行う。また、オフサイトフェイルオーバーとフェイルバック機能を使用して、ほぼ継続的にデータを保護する。さらに、WANアクセラレーション(Enterprise Plusエディション)、重複排除、圧縮、増分バックアップ機能が組み込まれている。CPU単位の価格には「Veeam Backup Management Suite」も含まれる。バックアップ環境の高度な監視、リポート作成、キャパシティープランニングを実行できる。また、「Veeam Backup & Replication Cloud Edition」では、米Amazon Web Servicesの「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)、「Amazon Glacier」やMicrosoftの「Microsoft Azure」などのパブリッククラウドサービスをオフサイトオプションとして追加することが可能だ。Standardエディションは1CPUにつき800ドル、Enterpriseエディションは1CPUにつき1290ドル、Enterprise Plusエディションは2064ドルだ。30日間の無償評価版では全ての機能を利用できる。
Symantec Backup Exec 2014
Symantec Backup Execは市場で最も成熟したバックアップ製品の1つだ。その長い歴史の中で、Symantecは安定性と信頼性を兼ね備えた製品の開発に多くの時間を費やすことができた(この2つの特性はバックアップ製品には極めて重要なものである)。だが2012年に発売されたバージョン2012ではインタフェースが見づらく、ユーザーから不評だった。
同社は2014年6月に発売したバージョン2014で名誉挽回に努めている。以前よりもバックアップの速度が大幅に向上し、Microsoftの「Windows Server 2012」「Windows Server 2012 R2」もサポートするようになった。また、SQL Server 2014のサポート、SharePoint 2013とExchange Server 2013用の詳細なリカバリ機能、「Amazon Cloud Gateway VTL」のサポートも追加されている。
Backup Exec 2014は細かくモジュール化された製品で、そこがメリットにもデメリットにもなる。モジュール式ではコア製品が比較的軽量で拡張できるように設計されている。実際、Symantecは多数の優れたアドオンを提供している。だが、アドオンには取得/導入/管理が複雑で、コストがかさむという欠点がある。Backup Exec 2014を使用するにはサーバ単位でライセンスを購入する必要がある。サーバライセンスは1つにつき1162.66ドルだ。60日間の無償評価版が提供されている。
Backup Exec 2014はアドオンに大きく依存しているが、コア製品にも多くの機能が搭載されている。物理環境と仮想環境を保護し、テープ、ディスク、クラウドへのバックアップをサポートする。仮想マシンの保護に関しては、新しくオンラインになった仮想マシンを自動的に検出して既に確立されたバックアッププロセスの一部として保護する機能もある。また、仮想マシンのバックアップの復旧性を検証することも可能だ。
Simpana 10
CommVaultのSimpana 10もモジュール形式の設計が採用された製品だ。全てのモジュールで共通のバックエンドコンポーネントを使用するので、モジュールが相互にシームレスに連係できる。このように共通のコードに使用することで、各モジュールが独立した形で作成された場合よりもずっとシームレスでまとまりのあるソフトウェアの操作性が可能になる。また、このアプローチによって、CommVaultは、基本的なリカバリ能力を基盤とした機能を提供するモジュールの開発を実現している。例えばリーガルホールド、検索、eディスカバリの他、セルフサービス機能が搭載されている。残念ながらCommVaultは製品の価格を公表していない。
Simpana 10は物理マシンと仮想マシンの両方を保護できる。また、クロスプラットフォーム環境(「VMware vCenter Server」「VMware vCloud Director」とHyper-V)を完全にサポートしている。SymantecのBackup ExecのようにSimpanaも新しく作成された仮想マシンを自動的に検出して保護できる。だが、Simpanaの機能は、その一歩先を行っている。データストア、リソースプール、vDC、仮想マシン名などのアフィニティルールを作成することが可能だ。このような完全にカスタマイズ可能なルールのおかげで、新しく作成された仮想マシンの保護には汎用的なポリシーではなくニーズに合ったバックアップポリシーを適用することができる。
Unitrends Enterprise Backup
Unitrends Enterprise Backupには、グローバル重複排除、レプリケーション、ベアメタル復旧、ほぼ継続的なデータ保護などの機能が搭載されている。価格情報は公表されていないが、テクノロジー製品/サービスプロバイダーの米CDWは同製品のライセンスを1CPUにつき1057.99ドルで販売している。Unitrendsのライセンスはエージェント、OS、アプリケーション、新リリースに追加料金が掛からない体系になっている。
Unitrends Enterprise Backupは「Unitrends Virtual Backup」(旧称「PHD Virtual Backup」)によって仮想システムをバックアップする。また、vSphere、Hyper-V、米Citrix Systemsの「Citrix XenServer」環境も保護できる。「Unitrends Certified Recovery Suite」には、Unitrends Virtual Backupと「ReliableDR」が同梱されている。ReliableDRはDRプランを検証およびテストするシステムだ。ちなみに「VCAR」(VMware Certified Application Recovery)というReliableDRのカスタム版も存在する。この機能はUnitrends Enterprise Backupと「Unitrends Recovery」シリーズ機器と連動することを目的として設計されている。
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