C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2014リポート
SDNの進捗どうですか?――JR東京駅、NEXCO西日本、沖縄県西原町の先進事例
NECの年次イベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2014」から、同社が最も注力する分野の1つであるSDNに関する展示にフォーカスし、最新の事例を紹介する。
2014年11月20、21日の2日間、NECと同社のユーザー会である「NEC C&Cシステムユーザー会(NUA)」は年次イベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2014」を東京国際フォーラムで開催した。2014年11月30日に打ち上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」をはじめとする先端技術から、防災や安全など暮らしを支える技術、製造業や小売業向けの技術、クラウドやビッグデータなど幅広いジャンルの展示がある中で、とりわけ力が入っていたのがSDN(Software Defined Network)の分野。本稿では、数々の展示やセミナーの中から、最新のユーザー事例を紹介する。
JR東京駅:止められないネットワークを改良するための選択
まず大きく目を引いたのが東日本旅客鉄道(JR東日本)の事例。同社は2012年10月に策定した「グループ経営構想V(ファイブ)」に基づき、ICTを活用した迅速なサービス提供とサービス品質の向上、駅の改良工事のスピードアップに取り組んでいる。その一環として、東京駅において2014年3月に完成した「駅構内共通ネットワーク」の整備に踏み切ったという。
駅構内には列車運行情報や自動改札など、さまざまなシステムが稼働し、システムごとに物理的なネットワークが張り巡らされている。そこに新しいICTサービスを追加しようとすれば、ネットワークもまた新たに構築する必要がある。各機器には個別の設定を施す必要があり、設置場所や電源の確保もしなければならず、サービス提供までには多大なコストと工期が掛かる。また、個別にネットワークを管理するため、同じ機器室に用途の異なる装置が重複して設置されるなど、運用管理も煩雑になりがちだ。
工期の問題もある。東京駅のような大規模な駅ともなれば、常に何らかのシステム改良工事が発生しており、そのたびにネットワークの設計を見直す必要がある。しかし、鉄道駅の構内は列車の運行時間中にシステムを止めることはできないため、作業は夜間の限られた時間(1日約3時間)に行わなければならない。こうした事情から、ネットワークの切り替えに何カ月もの時間を要することも珍しくないという。
上記の問題を解決するためにJR東日本が選択したのがSDNだ。東京駅ではNECのOpenFlowベースのSDN製品群「UNIVERGE PFシリーズ」を導入し、2台のSDNコントローラーと24台のSDNスイッチを核に、駅構内共通ネットワークを構築した。
現時点では、各通信事業者が提供する公衆無線LANのバックボーンや駅構内のロッカーの空き状況が分かる「Suicaロッカー」のネットワークなどが駅構内共通ネットワークで稼働している。システムごとに分かれていた複数のネットワークを物理的に統合した上で、仮想化によって個別のネットワークを論理的に分離。集中化と見える化を実現し、セキュリティを確保しつつ運用コストを大幅に削減したという。
SDNの活用により、新サービスの提供も迅速化した。無線LANを利用した屋内位置情報システムを構築した際には、わずか4カ月でサービスを開始。SDNを使わなかった場合と比べ、約7カ月も工期を短縮したという。
システムを止めることが許されず、かつ頻繁に改修が必要になる鉄道駅独特の運用課題に、堅牢で柔軟なSDNの特性がうまく生かされた事例といえるだろう。
NEXCO西日本:4000キロの広域ネットワークをSDNで構築し災害対応
滋賀県以西の西日本24府県の高速道路を運営・管理している西日本高速道路(NEXCO西日本)。同社は2014年5月、関西、中国、四国、九州各地域の道路管制センターや高速道路事務所など全45拠点を複数のルートで結び、全長4000キロのネットワークをSDNで構築した。
主な目的は災害対策(DR)だという。西日本地域の多くは東南海・南海地震の被害想定エリアになっている。災害が発生した場合に備え、交通機能継続のため、交通管制システムのバックアップ体制を整える必要がある。
同社ではこれまでも、交通管制システムを冗長化したり、各地域の交通管制システムをネットワークで接続するなどの対策を進めてきたが、道路管制センターと本線設備を結ぶネットワークは各地域の拠点で個別に構築していた。そのため、同じ地域内でしか情報のやりとりができず、道路管制センターが停止すればその地域内の高速道路の監視や制御ができなくなってしまうリスクがあった。
そこで、SDNによる広域ネットワークを構築。既存のネットワークはそのまま運用しつつ、システムのバックアップを実現し、運用体制を強化した。
SDNであれば、各地域の各道路管制センターが災害により機能停止した場合にも、ネットワーク機器ごとに設定を変更することなく、本線設備のデータ転送先を即座に他地域の道路管制センターに切り替えられる。これにより、迅速な情報提供や輸送ルート確保などが行えるようになった。
集中制御で柔軟に経路変更が行えるSDNは、災害に強いネットワーク構築にも貢献するというわけだ。
沖縄県西原町:たった4日でシステム移行 もう“専門家”は不要!?
UNIVERGE PFシリーズを発売した2011年から2014年までの3年で200件を超える導入事例を蓄積しているというNECが、現時点で最新のSDN導入事例として紹介したのが、沖縄県西原町だ。沖縄本島中東部にある同町では2014年11月に、新庁舎への移転を機に庁舎内ネットワークをSDNで構築している。
従来、同町のネットワークは大きな課題を抱えていた。長年の間に少しずつ機器が追加され続けてきたネットワークは構成が複雑化し、全体を把握するのが困難になっていた。接続ミスによるトラブルも度々発生した。だが、対応に当たる人員は増やせない。
運用業務の属人化も問題だった。複雑化したネットワークを運用するために特殊なスキルが必要になればなるほど、ノウハウの継承は困難になる。
また、法改正や制度変更のたびに対応を迫られるという自治体の宿命もある。限られた人数・予算で対応に当たるためにも、誰でも効率的に運用できるネットワークインフラが不可欠だった。
そこで白羽の矢が立ったのがSDNだ。直観的なGUIでネットワークを集中管理することで、ネットワークの自由度は高まり、運用のハードルも下がる。実際、西原町では新庁舎移転に伴うネットワーク移行を4日で完了。移転作業時に発生した予定外のネットワーク追加も、専門家の助力なしに現場で仮想ネットワークを作成し、問題なく切り抜けたという。
SDNの実用化が着々と進んでいると伝えられる一方で、取り上げられる事例が大企業などに偏っているような印象もあったが、SDNによる集中管理は、実はネットワークの運用体制が盤石でない小さな企業や自治体などにもメリットが大きい。2015年もさまざまな規模、さまざまな業種におけるSDN活用例が出てくることを期待したい。
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