AWS、Microsoft、Googleの値下げ競争は2015年も
「クラウド料金は限りなくゼロに近づく」、専門家の本音予想まとめ
価格競争から新しいツールやサービスに至るまで、2014年のクラウド市場は話題に事欠かなかった。2015年も同じような状況が続くのだろうか。クラウド専門家が予想する。
2014年、クラウドの世界ではさまざまな出来事があった。ハッカーが小売企業のITシステムに侵入したり、米Appleのクラウドサービス「iCloud」でセレブのアカウントが乗っ取られるという事件があった。米Rackspaceは崖っぷちの状態を経験し、米Hewlett Packard(HP)は2社に分割。米Amazon Web Services(AWS)は依然としてクラウドの分野を支配している。だが、米Googleや米Microsoftなど他のクラウドサービスプロバイダーも、新しいテクノロジーと価格競争によってクラウドが自社の得意分野だと主張し始めている。大手クラウドサービスプロバイダーとして君臨してきたAWSは2015年にトップの座を他社に明け渡すことになるのだろうか。米TechTargetは、毎年クラウドコンピューティングの専門家に年間予測について次のような質問を投げ掛けている。
- 2015年のクラウドコンピューティング市場について期待できることは何か
- どのプロバイダーが優位に立つのか、その理由は何か
以下に、2015年のクラウドコンピューティング市場に対する各専門家の予想を紹介する。
“ならず者”のクラウドは拡大を続ける
ポール・コジェニョフスキ氏
クラウドは今後も受け入れが進み、ITサービスの中核を担うことが予想される。企業は高速で柔軟なITシステムを必要としている。従来のオンプレミスのデータセンターのサービスと比較した場合、クラウドには大きな優位性はあるが、新しい課題もある。各部署がシステムの制御を回避する方法を簡単に特定できるため、IT部門はシステムの管理にてこずることになるだろう。ならず者のクラウドは拡大し続け、セキュリティは依然として重要な問題となることが推測される。また、クラウドサービスプロバイダーは、目まぐるしく変化する脅威に後れを取らずついていくのに苦労することが予想される。コンテナベースのコンピューティングに対する関心の高まりはアプリケーションの開発を助長するが、この動きによって新たなセキュリティホールが生まれることになるであろう。
既存の大手老舗ITベンダーは、多大なる影響力を持ち続けるだろう。例えば、Microsoft、米IBM、米Oracle、独SAPなどだ。クラウド市場が拡大するにつれて、大手ベンダーは成功を収めているニッチなクラウドサービスプロバイダーを吸収し、各社の製品ラインを完成させ、さらに多くの市場シェアを獲得するようになることが予想される。企業が各社の資産を効率的に管理できるよう、クラウドサービスのつながりが重視されるようになるだろう。統合サービスとコンサルティングサービスはさらに発達し、この分野のリーダーとして「OpenStack」が台頭すると見ている。AWSはさらにエンタープライズ市場に進出し、ある程度の成功を収めることが推測される。Googleと米Appleは中心的な存在となるだろう。だが、この2社のサービスは、企業ではなく一般消費者を重視しているため、データセンターの管理者にとっては面倒な問題を引き起こすことになるであろう。
クラウド移行がDevOpsと統合へ
デイビッド・S・リンティカム氏
クラウドコンピューティング市場の成長は続くことが予想される。それと同時にアプリケーションの移行を支援したり、クラウドへの移行を簡単に行えるようにする新しいツールやアプローチも誕生するだろう。これは継続的な統合、テスト、導入を支援するDevOpsテクノロジーとの密接な統合を意味する。この統合により、クラウドベースのアプリケーションは進化するビジネスのニーズに合わせて迅速に変化することが可能になる。これらのアプローチは、より多くのアプリケーションがクラウドでの活路を見いだす一助となる一方で、クラウドの容量増加に対するニーズを高める一因にもなるだろう。
2015年も引き続きAWSが市場を支配することが予想される。それは火を見るより明らかだ。だが、GoogleとMicrosoftが行っている継続的な投資により、この2社とAWSの間にある差は大幅に縮まるだろう。2015年末までには、その差は10~20%にまで縮まると見ている。企業でのクラウドの受け入れが進むことで推測される状況がある。それは、大半のクラウドサービスが複雑になることと、パブリック/プライベートクラウドの中から多くのモデルとブランドを使うようになることだ。大半の企業は、クラウドサービスの仲介業者のように振る舞うことになるだろう。そうすることで、どのプロバイダーがコスト効率と回復性が最も高いサービスを提供し、どのプロバイダーが後れを取るのかについて、IT部門は目を光らせることが可能になる。これが最終的に企業の購買行動に影響することになるであろう。
IaaSの低価格化が進む
トム・ノレ氏
クラウドの導入は今後も増加の一途をたどることが予想される。だが、クラウドサービスプロバイダーが利益を上げる方法を模索するにつれて、SaaSやPaaSへの移行を目の当たりにすることが予想される。この動向により、クラウドサービスプロバイダーの領域に分岐点が作られるだろう。一部のプロバイダーは、低価格のIaaSクラウドサービスを提供することを目指すようになる。例えば、クラウド市場に参入した電話会社などだ。それ以外のプロバイダーはハイレベルなサービスの提供を目指すであろう。その筆頭はAWSと考えて間違いない。
スケールメリットによって、AWSはクラウド市場のリーダーの地位にとどまることが推測される。だが、Microsoftは2015年に躍進し、Microsoft Azureを軌道に乗せるだろう。全体的に見て、Microsoft、HP、Oracle、IBMなどのITベンダーは新興企業を追い抜くであろう。また、GoogleはSaaS寄りの方向に進む可能性が高いだろう。全てのベンダーは「価格競争」または「プラットフォームサービスの機能競争」のいずれかに突入することになる。価格競争で勝利を収めれば、最大のスケールメリットがある企業という称号を手に入れることができる。一方、機能競争で勝利を収めれば、最も革新的なソフトウェアベンダーという称号を手に入れることができる。
「Chrome OS」で注目されるGoogleの動き
ジム・オライリー氏
総合的に見てクラウドの成長率は増加するだろう。それをけん引するのは、クラウドというアプローチに対する確信、改良されたツール、OpenStackファミリーモジュールの安定性と完全性、より安価で強力なハードウェアだ。運用コストの削減という避けられない問題を解決するため、既存プロセスのクラウドへの移行は加速することが予想される。アジャイルなハイブリッドクラウドを構築する能力は、中間層にジワジワ伝わり、クラウドの導入を促進することになるであろう。
ビッグデータの処理と動画の編集は、大きなインスタンスと米NVIDIAなどのGPUに特化したクラウド市場を拡大する要因となるだろう。このようなクラウドは、ハイブリッドな環境では負荷の急増に対応するものとして位置付けられることが予想される。だが、高額なハードウェアの購入費用や古い機器を回避できることは、全ての作業を特殊クラウドに移行する強力な事由となるであろう。
クラウドの価格競争は2015年も続くことが予想される。そのため、小さな企業は、特定の業界に特化するなど小さな市場に専念せざるを得なくなるだろう。クラウドに対応していないレガシー基盤の橋渡しは業界全体の問題である。大きなレガシー基盤を保有しているシステムベンダーにとって、これは頼みの綱となる可能性がある。ただし、IBM、HP、米EMC、米Cisco Systems、米Dellなどのベンダーは、それぞれのクラウドへの取り組みに関してクリティカルマスという問題を抱えている。この問題を解決するためにパートナー契約が締結されたり、共同事業が行われたりすることが推測される。
GoogleやMicrosoftによる挑戦はあるものの、AWSは市場を支配し続けることが予想される。Googleは、デスクトップの世界では「Chrome OS」、モバイルの世界では「Android」によってMicrosoftの「Windows」に取って代わろうとしている。この状況により、Googleは標準アプリの分野と実入りが良いソフトウェアの収入源に対する支配権を得ることができる。AWSはIaaS市場でトップの座に君臨し続けるかもしれないが、何百万ものユーザーを抱える市場ではトップの座を勝ち取ることはできない。この戦いが2015年に幕を閉じる可能性は低い。だが、Googleの計画がどのような結果をもたらすかについては把握しておくのがよいだろう。
価格が限りなくゼロに近づく
ダン・サリバン氏
Microsoftは、2015年もAWSに代わる現実的な代替サービスとしての評判を確立することが予想される。そして、企業にとってさらに魅力的な選択肢になるだろう。また、米DigitalOceanの「DigitalOcean」は、開発者向けに使いやすくパフォーマンスの高いVMを提供することで、顧客基盤を拡大し続けるであろう。DigitalOceanは、低価格、簡単なセットアップ、SSDが使えるという3つの特長により、顧客基盤を拡大し続けると考えられる。例えば、開発者は1回のクリック操作でLAMPスタックをSSDサーバにインストールできる。この環境では2コアと4Gバイトの領域が利用可能で1時間当たりの価格は0.06ドルだ。DigitalOceanはサーバ管理を最小限に抑えながら、IaaSレベルのサービスへのアクセスを実現している。
AWSはクラウド市場を支配し続けることが予想される。AWSの新しい革新的なサービスについては、2015年秋に開催される「AWS re:Invent」カンファレンスでの発表を待つことになるだろう。2014年最大の発表はAWSのLambdaだった。
IBMは認識プラットフォームの開発を継続するだろう。そして、世間では認識コンピューティングなどソフトウェアプラットフォームが重視されるようになることが推測される。
AWS、Microsoft、Googleは価格競争を繰り広げ、価格は限りなくゼロに近づくだろう。そのため、他のベンダーはIBMのアプローチを採用し、ハイエンドでバリューチェーンのあるサービスを提供することを余儀なくされるであろう。
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