PaaSベンダー6社ミーティング【後編】
【製品紹介】主要PaaSベンダー6社が語る 気になる料金プラン
注目のPaaSベンダー6社が一堂に会し、6社7サービスについて語った会の後編。料金プラン、今後の機能強化ポイントなどが明らかになった。
前編「主要PaaSベンダー6社が語る『うちの強みはこれだ!』」に続き、PaaS(Platform as a Service)ベンダー6社ミーティングの模様をお伝えする。後編では、各PaaSサービスの料金プランと機能面における今後の方向性を探った。
登壇者
パネリスト(50音順)
粟津和也(インターネットイニシアティブ マーケティング本部 新規ビジネス開発部)
今中崇泰(Engine Yard ソリューション マネージャー)
岡本充洋(セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 ディベロッパープログラムマネージャー)
草間一人(NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティング&プラットフォームサービス部門)
五月女 雄一(ニフティ クラウド事業部 クラウドビジネス部)
西谷圭介(TIS IT基盤サービス本部 IT基盤サービス企画室主査)
モデレーター
林 雅之(国際大学GLOCOM客員研究員)
各者の料金プラン
――前編では多くの人に利用してもらいたいという声が多かったですが、料金体系についてはどのようにお考えですか。PaaSはIaaSよりもいろいろなパターンのマネタイズ方法があると思います。まずはインターネットイニシアティブ(IIJ)の粟津さん。
粟津 Mogokは、無料で提供するよりも性能の良いサーバを利用した場合や、特定の機能を利用した場合に課金するシステムを予定しています。例えばSaaS利用のお客さまに対して課金・決済機能の提供などを考えています。基本的にはその路線ですが、今後広告を入れる可能性もあり得ます。また、お客さまとの契約で問題がなければ、アプリケーションの利用状況をデータ分析し、他のビジネスに転用するビジネスも考えられます。とはいえ、PaaSは市場自体が成熟していないため、課金の作り込みを急ぐよりは有用な機能を充実させユーザーを増やすことが先決です。
――まずはユーザーを増やしてから課金の仕組みを考えるということですね。続いてTISの西谷さん。
西谷 確定ではありませんが、今公開しているeXcaleのiPaaS部分に関しては無料枠を超えたら課金にする方針です。
――eXcaleはPaaSで収益を上げていくのでしょうか。IIJさんはビッグデータと絡めるなどのビジネスモデルも構想しているようですが。
西谷 現在公開中の部分だけで大きな収益を上げることは考えていません。現在のプラットフォーム部分を含めスタートアップ企業を支援するさまざまな物や機能を盛り込んで収益を上げていく方向です。
――続いてNTTコミュニケーションズの草間さん。
草間 IaaSを含めたCloudn全体での収益化が大前提です。Cloudn PaaS単体でも利益は追いますが、その他にCloudnのオブジェクトストレージやデータベースなども一緒に使っていただくことで収益を上げていきたいと考えています(Cloudnの関連記事:NTT Comが満を持して世界に放つ超低価格クラウド「Cloudn」の正体)。
PaaSの料金プランとしては、月額上限付き時間単位での従量課金制を予定しています。インスタンス数やメモリサイズなどは自由に変更できます。後は、SSLやドメイン、キャッシュ、データベース追加領域など、オプションサービスで課金すると思います。
――料金体系もサービスリリース時である2012年3月末に公開ですか?
草間 その予定です。
――続いてニフティクラウドの五月女さん。ある程度ユーザー数を抱えているとのことですが、料金プランはどうなっているのでしょうか。
五月女 ニフティクラウド C4SAでは、1つのアプリケーションを開発・運用するのに掛かる料金は月額945円(税込)から、1アカウントで最大20アプリケーションまで作れます。さらに、1アプリケーションごとに15日間の無料期間があります。ニフティクラウド C4SA単体で収益を上げていくことを考えていますが、お客さまにはIaaSも含めて利用してもらい、「ニフティクラウドを使うとビジネスが成功する」という構図を作っていきたいです。PaaSはそのための1パーツです(ニフティクラウドの関連記事:システム管理者に優しいIaaS「ニフティクラウド」)。
――日系企業のPaaSは他のサービスと連携してマネタイズしていきたいようですね。外資系のPaaS、特にEngine YardさんはPaaS専業ですよね。どのような料金体系になっているのでしょうか。
今中 Amazon Web Services(AWS)を基盤とするEngine Yard Cloudは、東京リージョンをはじめとするAWSの各リージョンを利用できます。最低料金は、スモールインスタンスを選択した場合、1時間当たり9円で月額計算すると6480円です(時間単位の課金)。Webサイトで見積もりをシミュレーションできますので、お客さまのニーズに合わせてリージョン、インスタンス、サポートを設定して試算いただけます。売りである24時間365日体制で緊急対応を受け付けるプレミアムサポートは、AWSインスタンスのサイズや数によって変動しますが、スモールインスタンスを1サーバ利用した場合、月額1万2822円になります。商用グレードのサポートを取りそろえていることで、他のPaaSに比べて値段は高めに感じられるかもしれません。
また、ハイCPUミディアムインスタンスを最大500コンピュート時間まで利用できる無料枠(フリートライアル)もあります。その他、2012年11月にはローカルPC上でEngine YardのPaaSを実現できる「Engine Yard Local」という製品をリリースしました。こちらは無期限に無料でご利用いただけます。ローカルPCで開発し、Engine Yard Localで動かすことのできるアプリケーションは、Engine Yardのクラウド上でも問題なくデプロイ可能です。使い分けとしては、アプリケーション開発は時間を気にせずEngine Yard Localで開発/テストし、クラウド上へのデプロイ検証や複雑なシステム構成へのデプロイ検証を行う際に、フリートライアルや通常アカウントをご利用いただく方法がおすすめです。
堅牢な商用グレードのPaaSと付加価値のあるサービスが強みであることから、価格競争を図ることは考えにくいといえますが、AWSベースのサービスである特性上、AWSの価格変動に伴う価格調整を行うことはあります。
――最後はセールスフォース・ドットコムの岡本さん。
岡本 Herokuは750時間まで無料で、それを超えた場合やアドオンを使用した場合は課金という料金プランです(料金シミュレーションはこちら)。また、クラウドでエンタープライズ向けのJavaアプリケーションを構築・実行できるパッケージ「Heroku Enterprise for Java」も提供しています。こちらは1アプリケーション当たり1000ドル(スケールは要相談)と固定価格です。エンタープライズ向きでスパークのない安定したサービスに向いています。
Force.comは1ユーザー単位の課金(1ユーザー当たり6000円もしくは9000円)です。ただし、1アプリケーションしか作らないユーザー向けには1アプリケーション当たり1500円で提供するといったライセンスプランもあります。ChatterやSalesoforce Identityを使ったフリーミアムモデルも提供しています。
機能面での今後の方向性
――最後に、今後のサービス開発や機能追加の予定、ユーザー企業へのメッセージをお願いします。席順で五月女さんから。
五月女 サービス開始当初から一貫しているのは、開発環境、実行環境、運用環境、その3つを全てWebブラウザ上で実現できるようにしたいということです。この目標を掲げたまま、自由度を損なわずに開発者の作業を楽にしたい。管理画面やログインパーツのように多くの人が使う機能はニフティクラウド C4SA側で提供し、ユーザーがコアな部分の開発だけに専念できる環境を整えます。特に今までPaaSを触ってみて「小難しい」と思って止めてしまった人には、ニフティクラウド C4SAを触ってみてほしいです。
今後は、WebアプリケーションだけでなくiOSやAndroidなどタブレット/スマートフォン向けのネイティブアプリケーションの開発・運用環境に注力していきます。また、専有環境も提供します(本記事掲載時点では既に提供済み)。月額945円から始めて100万、200万というエンドユーザー数に耐えられる構成をユーザー側で構築できるようにしていきたいです。
粟津 機能強化点を挙げるとするならば、より柔軟なキャパシティープランニングでしょうか。ベンダーとしてはPaaS環境の集約率を上げ、よりコストを下げていくことが重要だと思っています。ユーザー企業がPaaSを導入しない理由に「コストメリットを出せると検討したが、実際はコストに見合わなかった」という回答が多く挙がっています。機能を追加することも大事ですが、ユーザーにコストメリットを感じてもらいたいと考えています。
また、PaaSはIaaSではできなかったミドルウェアのサポート(例:MySQLの脆弱性対応など)をサービス事業者側が提供します。その点も、日本語ドキュメントを整備するなど対応しています。
今中 SNSアカウントなどを用いてすぐに利用できるPaaSもある中で、商用グレードを強みとするEngine Yard Cloudは、よりセキュアなPaaSを目指し、ログイン時に2要素認証を採用することを検討しています。Engine Yardの社員がPaaSにアクセスする際には、既に2要素認証を採用しています。
2012年にはクラウドイネーブラーのシトリックス・システムズとのパートナーシップを組み、CloudStackを基盤とするプライベートクラウドやハイブリッドクラウドに対応するEngine Yardを現在、開発/検証しています。その他には、Ruby、PHP、Node.js以外の開発言語への対応も計画しています。
Engine Yard Cloudは、アプリケーション開発者に商用で利用していただくために最適化されたプラットフォームです。それに加えて、シングルテナント方式による透明性から、OSやミドルウェアまでチューニング可能な特性も持っています。スケーラビリティが必要で、なおかつプラットフォームに手を加える自由度が求められる場合に最適です。
西谷 まずは2013年の春から夏にリリースを予定している正式版の品質と信頼性の向上、ユーザビリティの改善を行っていきます。その上で機能をもう少し拡充することを考えています。その後はどちらかというとスタートアップ企業を支援するプラットフォームになるべく注力していきたいです。eXcaleとしては、企業の規模を問わず「いかにスタートアップ企業の開発者を楽にするか」が首尾一貫したコンセプトです。ビジネスのアイデアを実現するのはソフトウェアです。しかし現状、本質的ではない実装も多いと思います。そこをなるべくサービスとして提供し、開発者にはアイデアそのもののコーディングに集中してもらえるようにします。
草間 Cloudn PaaSはIaaSのCloudn同様、低価格路を踏襲しますので、価格は期待していてください(2013年3月末のリリース予定)。機能面では、CloudnのRDBやオブジェクトストレージといったサービスと密連携し、IaaSからPaaSまでワンストップで提供していきます。
他のベンダーの宣伝になるかもしれませんが、Cloud Foundry.comやAppFogなど、Cloud Foundryを採用した他のPaaSも触ってみてほしいです(関連記事:Cloud Foundryが開発者にもたらすメリット)。Cloud Foundry全般、PaaS全体が盛り上がるといいと思っています。もしCloud Foundryのフレームワークやアプリケーションに興味があるコミュニティーがいたら、呼んでもらえれば講演にいきます。
岡本 Force.comが注力する分野は、モバイル、ソーシャル、アイデンティティーの3つです(関連記事:ソーシャルとモバイルを支える、Salesforce.comの新しいクラウド基盤)。モバイルでは、PC用に作ったアプリケーションをモバイル端末で表示できるようにしたり、タブレット端末の画面でドラッグ&ドロップを使った開発ができる世界を目指しています。ソーシャルではChatterのソーシャルプラットフォーム化として、Facebookアプリケーション(Canvas)のように、Chatterとサードパーティーアプリケーションの統合を進めます。アイデンティティーでは、Open ID Connectに対応し、エンタープライズクラウドアイデンティティーのデファクトスタンダードを目指していきます。
一方のHerokuは、IaaSの障害に引っ張られないことが課題です。PaaSである以上、IaaSの障害を「知らない」とはいえません。IaaS(AWS)が落ちてもHerokuの責任なので、シングルポイントフェイラーをなくすなど具体的な対応を考えています。
また、Force.comとHerokuは現在、別々の技術として提供していますが、今後はシームレスに連携していきたいです。
日本の開発者はプログラミングのスキルが高いだけでなく、エンタープライズの業務要件を満たすレベルも高いと思います。ですから、プログラミングの世界に閉じたり、あるいは業務要件のみを扱うコンサルタントになるのではなく、その中間のプラットフォームでもっとライトに開発とビジネスしたら面白いのではないでしょうか。
以上、前後編の2回にわたり、PaaSベンダー6社ミーティングの模様をリポートした。PaaSがアプリケーション開発者の開発を支援するために最適化されたプラットフォームであることはどのベンダーにも共通している。開発者は、OS以下のレイヤーの面倒をベンダー側に任せることで、インフラ層を包括した安定的なアプリケーション開発/実行環境を手に入れることができる。これによって、業務にコアなアプリケーション開発にのみ集中することが可能だ。
Engine YardやForce.com、Herokuのような外資系PaaSは、既に多くの顧客を抱え実績を上げており、ますますの機能強化が期待される。一方で、日系のPaaSはサービス公開も含めて“これから”のサービスが多い。2013年以降、日本企業にPaaSがどれくらい普及していくのか注目していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
PaaSベンダー6社ミーティング
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー