授業だけじゃない、「教職員1人1台iPad」の使い道
「iPad用校務アプリ」を自前で作る桜丘中学・高校 開発者はたった1人の職員(1/3 ページ)
教職員全員に1人1台のiPadを配備した桜丘中学・高等学校では、職員自ら開発したアプリケーションを現場の課題解決に生かしている。その実態とは?
教育機関での「タブレット1人1台環境」といえば、学習者向けの端末整備が注目を集めがちだ。一方で、教員向けにもタブレットを1人1台整備し、校務効率化に生かそうとする動きもある。ただし現状では、教員同士の情報共有の円滑化やペーパーレス化といった用途にとどまっており、幅広い校務の効率化に1人1台環境を生かせているところは極めて少ない。
教員の1人1台環境を、もっとアクティブに校務効率化に生かせないだろうか。こうした問題意識を基に、全教員に配布した米Appleのタブレット「iPad」と、職員が自前(インハウス)で開発したアプリケーションを積極的に活用している教育機関がある。共学の私立中高一貫校、桜丘中学・高等学校(東京都北区)がそれだ。
2013年度に、全60人の教職員に対してiPadを配備した桜丘中学・高校。併せてファイルメーカーのデータベースアプリケーション開発ツール「FileMaker Pro」を導入し、学校公開の受け付けや入学試験などの校務に特化したアプリケーションをインハウスで開発した。これらのアプリケーションを全教職員のiPadからアクセス可能にして、校務全体の効率化に役立てている。
桜丘中学・高校がインハウス開発を選んだのはなぜか。インハウス開発の具体的なメリットとは。桜丘中学・高校の入試担当専門委員でシステム構築・管理を担当する西岡朱里氏と、同校の品田 健 副校長に聞いた。
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インハウス開発の背景:入試関連校務の課題解決手段として注目
入学者を選抜する入試は、中学・高校にとって最も重要なイベントの1つである。だがその裏側にある入試関連の校務に目を向けると、多くの中学・高校でシステム化が進んでおらず、手作業や人海戦術でカバーしているのが現状だという。
受験生の基本情報や成績データの入力、入試当日の受験生の出欠管理、試験監督の配置確認、問題配布の確認、申し送りなど、入試で発生する作業は幅広い。中学・高校の職員は入念な確認作業の下、こうした多様な作業を手作業で慎重に進めている。
桜丘中学・高校も例外ではなく、これまで入試関連校務の大部分を教職員の手作業に頼っていた。入試担当の教職員は、試験会場となる教室で受験生の出欠を取り、紙の名簿に記録。回収担当の教職員は、全教室を回って名簿を収集。試験監督が各教室に着いているかどうかをトランシーバーで確認し、体調不良など受験生に関する申し送りも紙に記録して本部に集約……といった具合だ。
独特な校舎の形が、こうした作業をさらに難しくしていた。桜丘中学・高校は、円形校舎を軸に校舎が2方向に拡張した複雑な構造を持つ。教職員にとって、校舎内をくまなく移動するのは大きな負担となる。
「校舎のどこに教職員がいても、リアルタイムで同じ情報をシェアできれば、こうした負荷が軽減できるのではないか」。こう考えた西岡氏は解決策を探る中で、入試関連校務のIT化を決断。ITに造詣が深い品田副校長とも相談し、具体的な実現手段として選んだのが、パッケージシステムの導入ではなく、特定の課題解決に特化したアプリケーションを職員の手でインハウス開発することだった。
インハウス開発を選んだ理由:「本当に欲しい機能」に絞り、分かりやすさを追求
なぜインハウス開発なのか。職員がアプリケーションを開発すれば、パッケージシステムを購入したり開発会社へ依頼したりする場合と比べて、導入に掛かるコストが抑えられる。品田副校長はそうした理由もあると認めつつ、より重要な理由として挙げるのは、「現場をよく知る人が作ったアプリケーションであれば、『最低限これだけは欲しい』といった機能を優先して開発できる」ことだ。
パッケージシステムは一般的に、どの中学、どの高校でも使えるように機能が標準化されている。それ故に多機能になりがちで、学校によっては不要な機能も多くなる。教職員にとっては必要な機能がなかなか見つけにくくなり、かえって使いづらくなる可能性も否定できない。一方、インハウス開発のアプリケーションであれば、各学校にとって必要十分な機能に絞り込んで開発できる。
「『入室』『問題配布』など、自分たちが普段使用している言葉を使ったアプリケーションが開発できることも、インハウス開発のメリットだ」と品田副校長は話す。パッケージシステムの場合、画面のメニューやボタンなどに用いられている用語を各学校の用語へ読み替える必要がある。そうなると、現場の教職員に用語の意味を説明する手間が掛かってしまう。インハウス開発であればこうした問題は発生しにくい。
iPad活用を広げる手段としてFileMakerを選定
インハウス開発の手段としてFileMaker Proを選定した理由について品田副校長は、「FileMaker Proであれば、教職員1人1台に配備したiPadが生かせると考えた」と説明する。FileMaker Proで構築したアプリケーション(以下、FileMakerアプリケーション)は、iOS端末用のクライアントアプリ「FileMaker Go」を使えばiPadから利用できることを評価した。
上述の通り、桜丘中学・高校は2013年度に、教職員全員へのiPad配備を完了させた。全60人の教職員に対して、無線LAN接続が可能な「Wi-Fiモデル」のiPadを導入。入試担当など外回りの多い教職員にはWi-Fiモデルに加え、無線LANと携帯電話回線による接続ができる「Wi-Fi + Cellularモデル」(以下、セルラーモデル)の「iPad mini」を10台配備済みだ。
このように教職員の1人1台環境は整備したものの、桜丘中学・高校ではiPad導入当時、全ての教職員がiPadを積極的に使っていたわけではなかったという。ITが不得手な教職員が少なからずいたことが、その背景にある。
ITが不得手な教職員にも、iPadを使うメリットを伝えていきたい。FileMaker Proを導入すれば、こうした狙いを実現しつつ、校務効率化も実現できると判断した形だ。「教職員全員が関わる入試などの学校行事にFileMaker Proを活用することで、教職員全員がiPadを使う場面を増やすことができると考えた」(品田副校長)
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