理想的なクラウド基盤を構築する方法【第3回】
ハイブリッドクラウドのためのストレージ/データ保護製品を一挙に比較(1/3 ページ)
プライベートクラウド基盤を構築するためのデータ保護製品の選び方、データ保護方式、代表的な製品を比較表とともに紹介する。
今回は、プライベートクラウドの基盤となるストレージという観点で、理想的なクラウド環境を実現するために検討すべき内容と判断基準を下記の流れで紹介する。便宜上、ストレージという表現を用いてはいるが、本連載ではより広い視野でクラウドにおけるデータ保護方式と捉えて考察を進める。
- プライベートクラウドの要件とハイブリッドクラウドへの備え
- 実装方式の紹介と解説
- 実装方式の比較と選定指針
まず、プライベートクラウドで実現しておくべきことを再確認し、ハイブリッドクラウドを見越した際の備えについてポイントをまとめる。さらに、現在実現可能な実装例を示し、それぞれの特徴から構成時の選定方法を考察する。
これまでの連載
連載インデックス「理想的なクラウド基盤を構築する方法」
1.プライベートクラウドの要件とハイブリッドクラウドへの備え
初めに、第1回「ビジネス部門から見た、理想的なクラウドの要件とは?」の概要で紹介した理想的なクラウドの要件から、クラウドのデータ保持先として、実装しておくべきポイントを整理する。
まず、物理インフラを設置して環境を構築するため、ハードウェアの障害やソフトウェアの不具合などを考慮した堅牢なシステムを構築する必要があることは言うまでもないだろう。
次に、ネットワークを介したパブリッククラウドでは、データ保護方式を自由に選定することは難しく、セキュリティについてもプライベートクラウドほど堅牢に保つのは困難といえる。こうした理由から、ハイブリッドクラウドを見据えたプライベートクラウドでは、情報漏えいや不正アクセスなどを考慮した高度なセキュリティ性を担保する必要がある。具体的には、データ保護方式を適切に選定したり、暗号化の有無などについてもしっかりと要件を満たす必要がある。
さらに、コストについて考察する。サーバと同じく、実装形式として仮想化は必須ではない。ただし、性能や容量の要件に追従しつつ、安定した継続運用を実現するためには、ある程度リソースに余裕を持たせる必要がある。一例を挙げると、突発的なデータ増加が想定される場合、仮想化を採用した場合と比べて、より多くの余剰容量が必要となり、非効率な部分が増加することは否めない。このように、コストと安定性を両立させるためには、ストレージ部分についても仮想化を含めて検討することが現実解であるといえる。
少し余談ではあるが、プライベートクラウドでも最新のテクノロジーを採用することによって、仮想化と同等とまではいかないものの、コストを最適化する手法がある。幾つか紹介しておこう。
1つ目は、ストレージ階層化である。パブリッククラウドでは、基本的にクラウドサービスで定義された領域を利用して構築したシステムのデータを格納する。この場合、データ領域内で性能の異なるハードウェアを混在させるケースは少なく、極端にいえば、速い記憶領域、中低速の記憶領域といった分類になる。要するに、データ領域内で、速いものと遅いものを混在させることができない。これにより、ごく一部の領域に高い性能を求めるようなシステムを利用したい場合、そのシステム全体を高性能のデータ領域に置く必要があり、コストが上がる。
その点、ストレージ階層化を利用すれば、大きなプールに性能の異なるハードウェアを混在させ、利用頻度に応じて、データの格納場所を移動させることで、コストを抑えつつ、性能を向上することが可能となる。
2つ目は、シンプロビジョニングとシンリクラメーションだ。近年では、さまざまなところで採用が進んでいるため、シンプロビジョニングについては耳にしたことがある方も多いのではないだろうか。改めて説明すると、シンプロビジョニングとは、サーバに対して、実際のハードウェアの容量よりも大きいデバイスがあるように見せかける技術である。
もちろん、実際の物理容量以上のデータは保持できないため、利用容量の増加に合わせてストレージ側でデータ領域を拡張していく必要がある。この機能の利点は、プライベートクラウドでは増加しやすい初期コストを低減させることである。例えば初年度に3Tバイト、翌年度以降2Tバイトずつ増加する見込みのあるシステムを5年間利用する場合、最終的には11Tバイトの領域が必要になる。この容量を全て最初の年に準備するとなるとかなりのコストになる。シンプロビジョニングを利用すれば、導入時は3Tバイトで構築し、毎年2Tバイトずつの容量を買い足せば良いため、極端にいえば、初期コストは3分の1以下になる。もちろん、必要に応じて、容量を追加することも可能ではあるが、そのたびに設定の変更などが必要となり、運用コストが膨らむ原因となる。
もう1つのシンリクラメーションは、利用したデータ領域をリリースする機能である。1Tバイトの領域を5Tバイトに拡張したとしよう。その後、2Tバイトの容量が不要になった場合、こちらをプールに戻すことで、別領域への転用ができるようになる。これにより、システムごとにバラバラで発生していた余剰領域を大きなプールとして管理することで、余剰領域の削減と利用率の向上が同時に実現できる。
話を戻そう。では、ハイブリッドクラウドを見越して設計する際に、ポイントとなる部分はどこだろうか。結論からいえば、データ保護部分の実装ということになる。
プライベートクラウドでデータ保護を実現する場合、ストレージやハイパーバイザーに実装または連係しているスナップショットやクローン、レプリケーション、バックアップなどを組み合わせ、要件に合った環境を設計することになる。
次に、パブリッククラウドの場合だが、必要なデータ保護レベルを実現できるサービスの中から選択することになる。例えば、より高いデータの保存性が必要な場合、データを複数の拠点でレプリケーションしたり、ミラー化して保持できるようなサービスを選択するという具合である。
ではなぜ、ハイブリッドクラウドの場合はこの部分がポイントになるのか。それは、プライベートクラウドとパブリッククラウドでは、データそのものの保持形式が異なり、単純に既存で利用しているストレージやハイパーバイザーの機能に統一したり、パブリッククラウドのサービスをプライベートクラウドに転用できないことにある。
要するに、異なる形式の管理・実装形式のため、シームレスなデータの行き来が難しく、データ保護方式をプライベートとパブリックに分けて、個々に管理・設計を行う必要が生じてしまう。これが、ハイブリッドクラウド環境におけるデータ保護の最大の課題である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
理想的なクラウド基盤を構築する方法
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー