理想的なクラウド基盤を構築する方法【第5回】
「ハイブリッドクラウド」に行きたくても行けないネットワーク的理由(2/3 ページ)
オーバーレイ方式のカプセル化プロトコルは現在、VXLAN、NVGRE、STTの3種類存在し、IETF(Internet Engineering Task Force)で標準化が進められている。
| VXLAN | NVGRE | STT | |
|---|---|---|---|
| 提唱ベンダー | Cisco、VMwareなど | Microsoft、Intelなど | Nicira(現VMware) |
| Segment ID | 24ビット | 24ビット | 64ビット |
| カプセル化 | UDP | GRE | TCP-like |
| ヘッダ長 | 50バイト | 42バイト | 58~76バイト |
| 処理 | ソフトウェア | ソフトウェア | ハードウェア(TCP Segmentation Offload) |
このように、オーバーレイ方式のL2延伸を利用することで、プライベートクラウドとパブリッククラウドに跨ったL2ネットワークを構成することができ、仮想マシンの移動に伴う余計な変更作業がいらない真のハイブリッドクラウドに一歩近づくわけだ。しかしながら、現時点ではオーバーレイ方式のL2延伸を利用するために幾つかの課題が存在する。
1つは、パブリッククラウド基盤側のオーバーレイ方式への対応である。オーバーレイ方式ではパケットのカプセル化を仮想スイッチで実現するため、パブリッククラウド側で動作するハイパーバイザーでこの機能を実装する必要がある。だが、現時点ではオーバーレイ方式のプロトコルに対応したパブリッククラウドはほとんど存在せず、汎用的に利用するためにはパブリッククラウド側の対応を待つ必要がある。
もう1つはイーサネットフレーム長の問題である。先述の通り、オーバーレイ方式のL2延伸では本来のイーサネットフレームにカプセル化プトロコル用のヘッダを追加する。図3はVXLANのフレームフォーマットだ。外部の通信で使用するIP/MACアドレスとVXLANヘッダと呼ばれる識別子の合計50バイトを元のイーサネットフレームに付与する。
そのため、通常のフレームよりもサイズが大きくなるが、VXLANの規格ではフレームを経路上で分割して送信することが許されていないため、仮想マシンでMTUを小さくするか、経路上のスイッチをJumbo Frameに対応できるように設定を変更する必要がある。プライベートクラウド内の通信であれば、後者の対応で比較的容易に通信環境を整えることが可能であるが、ハイブリッドクラウドで実現する場合はパブリッククラウドまでの通信網やバブリッククラウド側でもJumbo Frameに対応する必要があるため、現時点では実現に困難を伴う。
このように、現時点ではSDNのオーバーレイ方式によるL2延伸は困難を伴うが、真のハイブリッドクラウドを実現するためには必要となる技術であるため、今後も注視しておく必要がある。
3.主要なパブリッククラウドの接続方式
ここからは現在広く利用されている、または今後利用が広がることが予想される「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)、「VMware vCloud Air」(vCloud Air)の3つのパブリッククラウドとの接続方式について見ていく。
AWS
AWSのネットワークは「Amazon Virtual Private Cloud」(Amazon VPC)と呼ばれるネットワークで構成され、外部との通信はVPC内に用意されている仮想ゲートウェイを経由して行われる。仮想ゲートウェイにはインターネットを経由してVPNで接続する方式と「AWS Direct Connect」と呼ばれる専用線で接続する方式がある。
VPNで接続する場合はプライベートクラウド側にIPsec対応のゲートウェイ装置を配置して接続する。なお、Amazon Web Services(以下、Amazon)のWebサイトで動作確認済みのゲートウェイ装置が公開されており、これを使用する場合、Amazonから提供されているツールを利用することで簡単に接続することができる。
AWS Direct Connectを利用する場合、AWSへの直接接続はサポートされておらず、世界各地にある接続ポイントに接続する必要ある。日本の場合、東京の「Equinix TY2」に接続ポイントがあり、ユーザーはここまで専用線を引くことになる。ただし、これは時間と労力を必要とするため、ほとんどの場合AWS Direct Connectパートナーと契約して接続する方が得策である。AWS Direct Connectパートナーに関してもAmazonのWebサイトで公開されているので、そちらを確認して契約先を選定していただければと思う。
Azure
Azureへの接続方式には、VPN接続と「Azure ExpressRoute」の2つの方式がある。VPN接続の場合はAWSと同様に、プライベートクラウド側にIPsec対応のゲートウェイ装置を配置して接続する。対応している機器はMicrosoftのWebページにて確認可能で、設定方法も記載されているため、そこから機器を選択するのが確実である。
ExpressRouteを使用する場合、Exchangeプロバイダーまたはネットワークサービスプロバイダーという2種類のプロバイダーから選択することになる。Exchangeプロバイダーを利用する場合、最大10Gbpsでアクセスすることが可能であるが、替わりにExchangeプロバイダーまでユーザー側で回線を用意し、設定・管理もユーザー自身で行う必要がある。ネットワークサービスプロバイダーを利用する場合は、最大1Gbpsでアクセスすることとなるが、ネットワークサービスプロバイダーが用意したネットワークを利用すればいいため、簡単に利用することができる。
vCloud Air
vCloud Airへの接続方式はVPN接続と「Direct Connect」の2つの方式がある。VPN接続ではvCloud Air内部のエッジサービスで提供されるVPNのアクセスポイントに対して、他のパブリッククラウドとの接続と同様にIPsec対応のゲートウェイ装置をプライベートクラウド側に配置して接続する。Direct ConnectではvCloud Airのインフラが設置されているソフトバンクのデータセンターに直接アクセスするか、VMwareのWebサイトに公開されているネットワークサービスプロバイダーと契約して接続する。
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