2015年クラウド業界10大ニュース【後編】
2016年「Docker」「OpenStack」でヒットを狙うベンダーと、独走AWSの行方(1/2 ページ)
2015年クラウド業界10大ニュース。後編ではDockerやOpenStackといった先進的な技術、IBMやAmazonといった大手ベンダーの動向をまとめた。
前編「クラウド業界の大型買収や統廃合を振り返る、あのサービスはどうなった?」では、米Dellによる米EMCの買収、米Hewlett Packard Enterprise(HP)のパブリッククラウド撤退、米Googleと米VMwareとの提携といったビッグニュースをまとめた。
Tutum買収で進む「Docker」コンテナ管理の強化
2015年には米Dockerコンテナ周辺で数々の動きがあったが、Dockerが「SaaS」(Software as a Service)プロバイダーの米Tutumを買収したことは今後を示す大きな出来事だった。
Dockerが10月にTutumを買収した目的は、エンタープライズ機能の強化と、Tutumのコンテナ管理技術の統合だ。その背景として、オープンソースDockerプロジェクトがコンテナの形式とランタイムの事実上の業界標準になってきたという状況がある。競争がますます激しくなってきているコンテナのオーケストレーションと管理の市場で戦うというDockerの決意の表れでもある。
米451 Researchの調査マネジャー、ジェイ・ライマン氏は「コンテナ管理市場の戦いの火蓋が切られた」と話す。
Tutumの買収と「Docker Swarm」やその他のツールによって、Dockerコンテナ管理と同社のCaaSモデルは増強される。「Google Kubernetes」や「Apache Mesos」などのオーケストレーションツールは、米Mesosphere、Google、米Red Hatなどによる同様のサービスや、「Amazon EC2 Container Service」のようなプロプライエタリ系Dockerのための地ならしとなりそうだ。米Microsoft、VMware、米Rancher、米Apceraも軽量級コンテナOSで参戦し、この新しいアプリケーション構築方式の勢いは目覚ましい。
ただし、完全なエンタープライズ級になるには、コンテナのスケーリングや安全な実行方法など、多くの課題が残されている。
「未解決の問題はまだ多い。企業はコンテナを効果的に導入する方法を模索しているところだ」(ライマン氏)
セーフハーバー協定の急停止
セーフハーバー協定無効の判決は、クラウドベンダーに暗雲をもたらす知らせだったが、グローバルクラウド市場における国際データ転送の今後について問題を提起する出来事でもあった。
欧州司法裁判所は10月、セーフハーバー協定を無効とする判決を下した。この協定は欧州連合(EU)諸国と米国の間のデータ移転を法的に認めるもので、約4500社がよりどころとしていた。多くのクラウドベンダーにとって、この判決は驚くことではなかった。大規模なプロバイダーは、拘束力のある企業規則や国外データセンターの増設などで対策済みだ。ニッチプロバイダーは米Amazon Web Services(Amazon)とMicrosoftが物理的に存在しない地域への展開を始めている。
だが、今回の無効判決で何よりも明らかになったのは、この協定が基本的に自己報告に基づいており、大西洋をまたいで事業を行う企業は、EUデータ保護指令に準じていることを証明しなければならないということだ、と米調査会社Forrester Researchの上級アナリスト、ルネ・マーフィー氏は話す。
「これまでは冗談だと思われていたことが、対策の必要なものだとはっきりした」(マーフィー氏)
これまでも欧州と米国の両方の企業が法的義務に関する懸念を表明し、自国政府に暫定措置と長期的解決策を求めていた。だが、各企業が受ける短期的な影響の大きさは、セーフハーバー協定への依存度によって分かれるとマーフィー氏はいう。
「正しいことをしようとしてきた企業はあまり困らないだろう。だが、なるべく楽をしようとして真剣に考えてこなかった企業には、困難が待ち受けているかもしれない」(マーフィー氏)
AWSの財務情報から見えたパブリッククラウドのダークサイド
2015年初め、Amazonが「Amazon Web Services」(AWS)の財務情報をついに公表するという話題は、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の公開に負けないほどの注目を集めた。
この発表で、AWSの2014年の売上高が46億4400万ドルであることが判明した。AWSがクラウド市場でいかに大きなシェアを獲得しているかは分かったものの、全容が公開されたわけではない。
IDCのマホウォルド氏は「AWSの財務情報は多くの業界でクラウド単体の興味深い数字として受け止められた。だが、それ以上の細かい内容は公開されておらず、“サービス別”の内訳は未発表だ」
売上高を公開した目的は、競合各社を黙らせることだった可能性もある。
「Amazonは自分たちの力を見せつけて、他社に目を覚ませと言いたいのではないか」(マホウォルド氏)
また、AmazonはAWSの財務力を公表することで、3~5年間クラウド移行を任せて大丈夫な会社だということを潜在顧客に示しやすくなった。
マホウォルド氏は「AWSは今まさに陣取り合戦が進行中であり、顧客がクラウドへデータやカスタム開発資産を移す重大な局面だと考えている」と述べ、そうしたイニシアチブによってAWSは「自分たちは最大手であり、どうやればうまくいくか熟知している。だから今後3~5年の間に当社を選べ」と言おうとしているのだという。
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