製品選定前に読んでおきたい基礎技術 NVMe編
脱SAS&SATAへ、フラッシュ業界期待の通信規格「NVMe」の魅力と普及の壁(1/2 ページ)
「NVMe」はPCIeを利用した新しい通信規格だ。NANDフラッシュメモリなど並列処理が得意なデバイスを利用する場合は、サーバ/NANDフラッシュメモリ間をNVMeで通信することで、フラッシュデバイスの応答速度を最大限に引き出す。
前回の記事「I/O至上主義は危険? 見過ごしている、フラッシュデバイスの真の性能指標とは」では、システム性能向上の歴史、フラッシュデバイス(本稿では、NANDフラッシュメモリを搭載したストレージをこう表現する)への期待、IOPS(1秒間に処理できるI/O数)に偏った性能評価の危険性について、順を追って紹介した。
今回は、いよいよ本連載の肝となる「NVMe(NVM Express)」について解説する。まずは既存技術が抱える課題を明確にし、NVMeの採用による変化を示す。その後、NVMeの実装方式に触れつつストレージのこれからを考えてみる。
- 遅延の原因とは
- NVMeの優位性と現状
- ストレージのこれから
1.遅延の原因とは
前回の記事で、NANDフラッシュメモリを搭載した高性能ストレージを選定する際には、IOPSと合わせて応答速度が重要であることを説明した。この応答速度を下げる要因、すなわち遅延の原因を追究していく。
まずはサーバからNANDフラッシュメモリまでのアクセス経路について触れる。
図1は、サーバからNANDフラッシュメモリ(ここではSSDに内蔵)までの経路を示した図である。サーバは外部装置との通信用にI/Oインタフェースを用いる。一般的なインタフェースとしては、PCI、PCIe(PCI Express)が挙げられるだろう。
PCI、PCIeに、コンピュータと周辺機器との接続に利用するホストバスアダプタ(HBA: Host Bus Adapter)を搭載し、ファイバーチャネル(FC:Fibre Channel)やイーサネット、InfiniBandなどのデータ転送技術で、ストレージ制御装置であるストレージコントローラーにつなげる。
物理的な接続に加え、プロトコルも選択する。例えば同じイーサネットを利用しても、SAN(ストレージエリアネットワーク)で利用するiSCSIや、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)で利用するNFS/CIFSなど、幾つかのプロトコルがある。なおサーバからストレージコントローラーまでの接続をフロントエンド接続と呼ぶ。
次に、利用者が意識することは少ないが、ストレージコントローラーと、フラッシュデバイスおよびNANDフラッシュメモリとの間でもアクセスが必要である。幾つかの接続方式があり、一般的な企業向けストレージは、データ転送インタフェースにSAS(Serial Attached SCSI)を採用するケースが多い。なおストレージコントローラーとフラッシュデバイス(図1ではSSDだが、他のフラッシュデバイスやHDDでも同様)間の接続をバックエンド接続と呼ぶ。
ここでは、サーバとNANDフラッシュメモリまでのアクセス経路としては、大きく分けてフロントエンド/バックエンドの2種類の接続があることを覚えておいてほしい。
続いて、実際の遅延の原因となる部分に触れる。
まずはフロントエンド側だが、外部ストレージとの高速データ接続に利用するPCIeのバス(データ伝送路)は非常に高速な上、レーン(データ伝送の最小構成単位)を拡張することでさらに高速化可能であり、遅延の原因になることは考えにくい。
次にプロトコルだが、一般的にブロック(ストレージを論理分割した固定長の区画)単位でデータを読み書きするSAN接続の方が、ファイル単位で読み書きするNAS接続に比べ高速であることが知られているため、今回はSAN接続を前提とする。
その場合、HDDの利用を想定したSAS、SATA、FCなどの論理デバイスインタフェース規格によって、データをやりとりする。これらの規格は基本的にデータを直列に送信するシリアル転送に最適化されているため、フラッシュデバイスなどの並列処理を得意とするデバイスを利用する場合は、応答速度や帯域性能を最大限に引き出し切れない。その上、複数のホスト(コンピュータ)からの接続をあまり考慮していないため、割り込みにも弱いという性質を持つ。
ここまで説明すれば、ボトルネックがHDDの利用を前提とした通信規格部分にあることがご理解いただけるだろう。なおバックエンドの通信でも同様のことが発生しており、通信規格が原因で性能を発揮し切れていない状況が発生している。
2.NVMeの優位性と現状
ここからは、本題であるNVMeについて解説する。前のページで説明した通り、データ転送方式がシリアル転送で割り込みに弱いため、これを改善することで遅延の解消が可能である。
結論から言えば、NVMeはPCIeを利用した新しい通信規格であり、並列通信と割り込みを前提としている。それによって従来の通信規格が抱えていた問題を一気に改善できる。
例えばストレージへのコマンドそのものを保持できるキューの数を大幅に増加させることで、割り込みの制御をしやすくしたり、1つのキューに入れ込めるコマンドの数を大幅に増やすことでI/Oをより効率良く制御できたりするようになる。
読者の中には、低遅延を実現できるNVMeが、なぜ急速に普及しないのかと疑問に思う方もいるだろう。それについては幾つか技術的に乗り越えるべき課題があることに触れておく。
PCに詳しい方であれば「NVMe対応デバイス」といった製品を目にしたことがあるはずだ。ただ現在、市場に展開されているNVMeデバイスの多くは、PCに直接接続するタイプのものがほとんどで、いわゆる企業用途で利用する商用ストレージでは採用に至っていない。
主な理由としては、以下の2点が挙げられる。1つ目は、ハードウェアの改修が必要となる点。サーバ/ストレージ間の接続にはNVMe用のHBAが必要になるが、現時点ではコモディティ化されたハードウェアはなく、ストレージを接続するためにはHBAの開発から始めなければならない。
2つ目は、接続するストレージのNVMe対応である。ストレージのNVMe対応については、フラッシュデバイス市場の拡大に伴い、各ストレージベンダーも注力しており、今後は対応製品のリリースが期待されている。
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