「QLC」の期待と課題【後編】
「QLC」方式のNAND型フラッシュメモリは何の役に立つのか?
データ書き込みへの耐久性能を落とし、データ保管の高密度化を実現しているQLC方式のNAND型フラッシュメモリ。その欠点が懸念されがちだが、これに適した用途は豊富にある。
前編「『QLC』方式のNAND型フラッシュメモリはHDDの代わりになるのか?」は、1個のメモリセル(データの記憶素子)に4bitを格納する「クアッドレベルセル」(QLC)方式を採用したNAND型フラッシュメモリの用途を考えるに当たって、知っておくべき特性を紹介した。こうしたQLC方式のNAND型フラッシュメモリは、1メモリセルで4bitを保持する。1メモリセルで1~3bitを保持する他の種類のNAND型フラッシュメモリより、データ書き込みに耐えられる回数が減少しやすい特性がある。
QLC方式のNAND型フラッシュメモリは、データの追加や更新が頻繁にあり、書き込みが多く発生する用途には向いていない。NAND型フラッシュメモリの耐久時間は、書き込み操作が少ないほど長くなる特性があるためだ。これを踏まえると、QLC方式が向いているのは読み取り操作が中心で、書き込み操作の少ない用途だと言える。実際QLC方式を製造するMicron Technologyは、書き込みが全操作の10%未満のアプリケーションを推奨している。
QLCが適する用途
幸いなことに、QLC方式のNAND型フラッシュメモリが適する用途は豊富にある。例えば機械学習や深層学習のような人工知能(AI)技術を活用する、データ分析系のアプリケーションだ。このようなアプリケーションを使う場合は通常、データを書き込むのは一度だけで、その後は高度な分析が中心となる。膨大なデータの集計やAIモデルのトレーニングには、ストレージへの高速接続が必要だ。
データのアーカイブにもQLC方式のNAND型フラッシュメモリが向いている可能性がある。特にデータの用途が、AI技術を活用した分析系のアプリケーションやデータマイニングである場合だ。データ分析から洞察を引き出したり、ビジネスの意思決定をしたりするために、必要になる情報を瞬時に得たい場合に適している。動画のストリーミング配信を提供するメディアのようなサービスも適している。音声や動画のデータを高速かつ効率的に配信することにQLC方式が役立つだろう。
読み取り集中型のアプリケーション用のデータストアとしても、QLC方式のNAND型フラッシュメモリが適合する可能性がある。例えば大量のデータとメタデータを保存する「NoSQL」(リレーショナルデータベース管理システム以外のデータベース管理システム)では、QLC方式を採用することでパフォーマンスの向上が期待できる。
どのような用途で検討するにしても、用途ごとのデータ読み取り量に対して、データ書き込み量がどの程度あるのかを把握しておくことが重要だ。
P/Eサイクル数の増加
QLC方式のNAND型フラッシュメモリの技術が成熟すれば、「P/Eサイクル数」(データを書き込む際の一連のプロセス)の回数の限界値は、間違いなく増加するだろう。そうなればQLC方式が適する用途の幅も広がる。既に、100回未満だと推定されていたQLC方式の最大P/Eサイクル数は、1000回近くまで向上している。とはいえ、まだしばらくは読み取り集中型の用途が最適という状況が続きそうだ。
どのようにQLC方式のNAND型フラッシュメモリが進化するにしても、アプリケーションのデータを保存する方法を検討する際、高い効率性と信頼性を兼ね備えた媒体として何が適しているかを考慮することが大事だ。用途によっては、QLC方式が理想的と言える場合もあれば、高いコストが無駄になる場合もあることには注意が必要だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「QLC」の期待と課題
QLC方式のNAND型フラッシュメモリは、1個のメモリセルで4bitを保持でき、高密度のデータ保管を可能にする。ただし密度を高めている分、犠牲にしなければならない性能もある。どのようなアプリケーションであれば適しているのだろうか。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
9
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー