米海軍のERP移行事例【前編】
米海軍が政府向けAWS「AWS GovCloud」に「SAP ERP」を移行した理由
米海軍は「SAP ERP」をはじめとする26個のシステムを、AWSの政府専用サービス「AWS GovCloud」に移行した。その理由とは何か。移行によってどのようなメリットが得られたのか。
米海軍は、複数のERP(統合業務)システムをオンプレミスからAmazon Web Services(AWS)の「AWS GovCloud」に移行している。AWS GovCloudは米国の法制度の要件を満たすよう設計された、米国政府省庁や契約企業向けのパブリッククラウドサービスだ。
このプロジェクトでは、全世界15地域、約6万人のユーザーを対象に構成された26個のERPシステムを移行しなければならなかった。米海軍はこの移行のために、SAP National Security Servicesのサービス「SAP NS2」を利用した。SAP National Security ServicesはSAPからスピンオフした企業で、米国政府機関の使用に耐える、厳しい規制条件を順守したSAPシステムの販売を専門とする。
SAP National Security Servicesでセキュアクラウドビジネス部門のプレジデントを務めるハリシュ・ルスラ氏によると、AWS GovCloudに移行したシステムのうち半数近くが、データベース管理システム(DBMS)に「Oracle Database」を採用した、SAPのERPパッケージ「SAP ERP」ベースのシステムだった。SAPシステムの一部はインメモリデータ処理システムの「SAP HANA」に移行したが、それ以外のシステムはそれぞれのDBMSをそのまま使用している。
AWS GovCloudに移行した理由
米海軍はERPシステムの移行に伴い、クラウド導入に適した新しいテクノロジーを利用したいと考えていた。さらに「基礎を成すERPアーキテクチャを簡素化し、総所有コスト(TCO)を削減することも求めていた」とルスラ氏は話す。
この移行により、米海軍は移行完了後のデータサイズを80TBから28TBまで削減できた。この成果は「アーカイブによって実現した部分もあれば、ディスク圧縮によって実現した部分もある」とルスラ氏は説明する。
米海軍は、財務システムのデータ管理と分析の機能を改善するためのアプリケーションも追加導入した。SAPのデータ分析システムをベースにした「Universe of Transactions」というアプリケーションだ。米海軍はこのアプリケーションを使って、米海軍のERPシステムと他のERPシステムとの間で連結財務諸表を用意できる。「これは以前のオンプレミスには存在しなかった。非常に高速な分析処理を可能にするSAP HANAを使えるようになったおかげだ」(ルスラ氏)
スケジュールの短縮
移行プロジェクトは速いペースで進められていたが「米海軍が要件を変えたことでさらに速める必要があった」と、SAP National Security ServicesでSAP NS2のプロジェクトプリンシパルコンサルタントを務めるジョー・ジオフリ氏は述べる。
当初の稼働日はプロジェクト開始日の約2年後となる2020年5月の計画だった。だが既にデータ量とワークロード(アプリケーション)の処理負荷が、オンプレミスのERPシステムでは限界に来ていることが判明した。これによりSAP HANAのクラウド移行の稼働日が、2019年8月に前倒しされることになった。新会計年度が始まる2019年10月1日に間に合わせるためだ。
米海軍は計画を練り直し、新しい中間目標計画を立て、この新しい計画に合わせて米海軍とSAP NS2の人材を配置した。「一つずつ全ての期日を守ることで、2019年8月に完了するようにした」とジオフリ氏は説明する。計画立案と資源調達をやり直したことは、米海軍とSAP NS2の両方にとって途方もない作業だった。「作業を追跡し、計画に含まれる各自の目標を常に意識するようにした」(同氏)
後編は、移行プロジェクトを軌道に乗せるまでのマネジメントや、政府機関がハイブリッドクラウドを採用する近年の動向について解説する。
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米海軍のERP移行事例
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