「スモールセル」での対処には限界も
「5Gは屋内でも利用できる」が常に正しいとは言い切れない理由
日本でも商用サービスが始まった「5G」は、高速なデータ伝送速度といった多様なメリットをもたらす。ただし5Gへの移行は一筋縄ではいかない可能性がある。それはなぜなのか。
今後「5G」(第5世代移動体通信システム)による通信が可能なスマートフォンが一般的になるのは間違いない。ただし5Gには幾つかの重要な課題がある。
5Gは“あらゆる屋内”で本当に使えるのか
5Gで使う周波数30GHz~300GHzの電波である「ミリ波」は、壁などの構造物を貫通しにくい問題があり、通信事業者が5Gの屋内の到達範囲を計画する際に大きな障壁となる。これは企業に影響を与える。企業での利用に際しては、通信事業者はこれらの課題に対して今すぐ対処する必要がある。
誰もが認めると考えられる5Gの特徴の一つは、高速なデータ伝送速度だろう。5Gのエンドユーザーは、この高速通信の恩恵を受けることになる。ただし企業の管理者にとっては、他の問題や選択がより重要になる可能性がある。データ伝送速度に関する通信事業者の言及に一喜一憂している場合ではないということだ。
ハードルはまだある。例えばAppleはまだ5Gによる通信が可能な「iPhone」を導入していない。その結果、iPhoneを主に利用している企業は、すぐには5Gに移行しにくい。
企業がまだ注目していない大きな問題の一つは、5Gを屋内で利用するために何が必要になるかだ。
通信事業者が5Gの電波の屋内到達範囲について広告で言及したのは、主にスタジアムやモールなどの屋根の下にある、広々としたスペースのある場所に関することだった。企業が5Gの屋内到達範囲の問題に取り組むのは、通常のオフィス環境だ。
オフィスには、多くの壁と頑丈な建物の鉄筋があるため、電波が到達しないデッドスポットが多く発生する場合がある。無線LANの専門家は、このデッドスポットを理解している。
建築業者はエネルギー効率を高めるために、特別にコーティングされた窓ガラスを採用していることがある。この場合、遮熱と同じくらい効果的に無線信号も遮断する。そのため建物内のエンドユーザーがスマートフォンで通話できるようにするためには、建物内に携帯信号源が必要になる場合がある。
「スモールセル」の大きな可能性
データ通信量の多いエリアで高密度のカバレッジを提供するために、通信事業者は屋外に小規模の基地局「スモールセル」を設置している。スモールセルの電波の到達範囲は無線LANアクセスポイントと同等で、壁が障害になる場合、到達範囲は無線LANよりさらに狭くなる。通信事業者は、屋外利用向けには既に数千個ものスモールセルを設置し、トラフィックの多いエリアではより高密度の到達範囲を提供している。現在、通信事業者は屋内用のスモールセルを提案している。
通信事業者は、屋外用のスモールセルに高い周波数のミリ波を使用する場合がある。高い周波数の電波は直進性が強いため、角を回り込むことができない。さらに壁を簡単に貫通できないため、オープンスペースで使用する必要がある。屋内での使用には、屋内用途により適した低い周波数で動作するスモールセルが必要だ。
音声通話が課題に
オフィスビルにスモールセルを設置すると、最終的には企業内の無線LANのようになる。ただし複数の通信事業者が利用可能なスモールセルは提供されていない。この点が解決されない限り、使用する通信事業者ごとに個別のスモールセルを展開する必要がある。
スモールセルで問題が生じるとすれば主に「音声通話」であり、データ伝送は問題を受けにくい。無線LANが利用できる場合、一般的なスマートフォンは、データ伝送に優先的に利用するネットワークとして無線LANを設定している。音声通話のデフォルトの選択は移動体通信だ。移動体通信のデータの大半が無線LAN経由で送受信されるという試験結果もある。無線LANが十分に機能している限り、データ伝送には問題はない。
5Gは一般の人々にとって興味の対象でしかないだろう。ただしネットワークの専門家にとって、5Gへの移行は重大な責務だ。企業のIT部門は、5Gの問題に早急に対応する必要がある。通信事業者の営業担当者と話をして、施設内で5Gを利用する計画を開始する必要がある。
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