Computer Weekly製品ガイド
クラウドネイティブを加速する3つのネットワーク技術
クラウドネイティブコンピューティングによって弾みがついている3つのネットワーク技術を紹介する。
Gartnerは2019年7月に発行した「Hype Cycle for Enterprise Networking, 2019」(エンタープライズネットワークにおけるハイプ・サイクル)で、ネットワークインフラを段階的に変更すると組織が変化するペースに追い付くことはできなくなると予想した。ネットワーク技術はデジタル化とクラウドによって強くけん引されていると同報告書は指摘する。そしてビジネスのデジタル化とは、ネットワークのアジャイル性強化が求められるということでもある。
Gartnerの報告書は、成熟のさまざまな段階における多数のネットワーク技術を網羅している。主流になりつつあるものや採用する準備が整っているものがある半面、ほとんど誇大宣伝にすぎないものもある。本稿では、クラウドネイティブコンピューティング市場にディスラプションを起こそうとしている3つの技術を紹介する。
Kubernetesネットワーク:注目すべき新興技術
Kubernetesネットワークソフトウェアは、Kubernetesクラスタ内のポッドとサービスの相互通信や外部との通信を実現する。
加えてポリシーやマルチテナント性、IPアドレス管理を実現できることもある。ネットワーク製品は、Kubernetesポッド内のコンテナネットワークインタフェース(CNI)プラグイン経由の通信と、イングレスコントローラーを通じた外の世界との通信の両方を処理する。
Gartnerによると、Kubernetesネットワークは企業で急速に普及しているコンテナの採用と直接的な関係がある。Kubernetesは事実上標準のコンテナオーケストレーションシステムになっており、Kubernetesネットワークのためにはアーキテクチャと運用の両方のプランニングを必要とする。
パブリッククラウドプロバイダーは、それぞれネイティブに統合された独自のCNIプラグインとイングレスコントローラーを提供し、それぞれのクラウドプラットフォームに統合している。だがGartnerの上級ディレクターアナリスト、サイモン・リチャード氏によれば、顧客がサードパーティープラグインを導入することもできる。
オンプレミスにデプロイされたKubernetesの場合、サードパーティーCNIプラグインとイングレスコントローラーが必要になる。リチャード氏は「コンテナネットワークに関係した技術は断片化していて、多数の商用ベンダーとオープンソースCNIプラグインが存在する」と話す。
Gartnerによると、現在はKubernetesネットワークを支える有望なオプションが多数存在する。リチャード氏によれば、ネットワーク仮想化やデータセンターファブリックのベンダーは、それぞれのポリシーモデルをKubernetesアプリケーションに拡張するCNIプラグインを提供し、商用Kubernetesプラットフォームにサポートされている。
「ほとんどのADCおよび負荷分散ソリューションは、自分たちの昔からの製品を拡張するイングレスコントローラーを提供している」と同氏は述べ、「Kubernetesがオンプレミスのワークロードでさらに普及すれば、サポート付き商用プラグインの利用は今後3年の間に増加する」と予想した。
Gartnerは組織に対し、Kubernetesネットワークが実現するポッド対ポッド、サービス対サービスおよびサービス対外部との通信に注目するよう促している。「ネットワークプロビジョングは専用のネットワークツールの外で行われる。すぐに使えるRESTful APIでKubernetesに統合できるデータセンターネットワークスイッチに投資する必要がある」とリチャード氏は言う。
同社はIT意思決定者に対し、この市場がまだ形成されたばかりで急速に進化していることを考えて、今後1年間はコンテナネットワーク製品に関して長期的なプロプライエタリ製品への投資や高額投資は避けるよう促している。
「ほとんどのKubernetesプラットフォームは複数のKubernetesネットワークソリューションをサポートし、顧客がCNIプラグインを変更できるようにしている」とリチャード氏は話している。
クラウド管理ネットワーク:普及の初期段階
クラウド管理型ネットワーク(CMN:Cloud Managed Network)はクラウドベースのWebポータルを提供し、リモートでデプロイしたセキュアな有線および無線接続の設定と管理を一元化する。
Gartnerの首席アナリスト、ビル・メネゼス氏は市場分析の中で、CMNは中堅・中小企業など、無線LANやアクセスポイント管理に必要なIT要員を十分に割り当てられない企業が採用する技術だった当初の域を越えつつあると指摘した。
機能も拡張され、管理、プロビジョニング、ゲストアクセス、ポリシー強制といった一般的なロケーションネットワークサービスアプリケーションのための有線接続が含まれるようになった。
「WANセキュリティアプライアンス管理がクラウドポートフォリオの一部となり始め、CMNはデータセンターネットワークへと拡張しつつある。インフラベンダーのパートナーのエコシステムによってサービスポートフォリオが拡張される中で、採用は増え続けるだろう」とメネゼス氏は予想する。
同氏によると、IT要員や予算に制約がある中でリモートブランチを手早くアクティベートして、現場の技術者が限られる状況で遠隔管理する必要がある組織はCMNの恩恵を受ける。小売りチェーンやコーヒーショップ、レストラン、小規模ホテル、医療施設の待合室、学校、小規模企業、リモートオフィスなどが主にCMNのインストールベースとなっている。
ITプロバイダーが構内LANのためにCMNを提案することもある。だがGartnerによれば、複雑なLANおよび無線LANインフラを持つ大企業の構内にはCMNはあまり適していない。Gartnerの調査では、支所数が100を超える大企業による採用は依然として限定的だ。
「そうしたケースでは、既存のインフラ技術との互換性を掘り下げた検証や、セキュリティポリシーへの準拠、さらに徹底したROI(費用対効果)分析が求められる」とメネゼス氏は言う。
CMNは無線LAN構成のために選定されることもあるが、このモデルは他のネットワーク機器にも応用できる。クラウド管理プラットフォームをベースとした一部のSD-WANソリューションとの融合も進んでいる。GartnerはIT要員が少ない組織に対し、ネットワーク機器のプロビジョニングと継続的な管理の容易さが求められるリモート拠点あるいは分散された拠点に、クラウド管理型ネットワークを導入することを提言している。
メネゼス氏はIT意思決定者に対し、CMNを大規模導入する前に継続的なサブスクリプションや管理機能の維持など、このモデルの制約やコストについて検討するよう促している。
サービスメッシュ:成熟の青年期
Gartnerはサービスメッシュについて、アプリケーションサービス間の通信を最適化する分散型のコンピューティングミドルウェアと形容している。これはサービス間通信用のプロキシや軽量媒介を提供するもので、認証、承認、暗号化、サービス発見、リクエストルーティング、負荷分散、自己復旧、サービスインストルメンテーションなどの機能をサポートする。Gartnerは、ミニサービスやマイクロサービス運用にサービスメッシュの採用を推奨している。
Gartnerの調査によるとサービスメッシュ技術は急速に進化していて、商用製品やオープンソース製品を含めて複数の選択肢がある。Gartnerのバイスプレジデントでアナリストのアンドルー・ラーナー氏と同じくバイスプレジデントでアナリストのアン・トーマス氏によると、サービスメッシュ技術の普及はマイクロサービスやコンテナの普及とつながりがある。
両氏は前出の「Hype Cycle for Enterprise Networking, 2019」の中で次のように記している。「現代のアプリケーションは急速に分散化とコンテナ化が進んでおり、それがサービスメッシュ技術への関心を高め、採用を加速させている。採用しているのは主に規模が大きく技術的に前向きな組織あるいは事業部門だ。サービスメッシュ技術に対する関心は2017年初め、Google、IBM、LyftがKubernetesで運用されるマイクロサービスのためのサービスメッシュフレームワークを提供するオープンソースプロジェクト『Istio』を立ち上げたことで高まった。Istio 1.0は2018年7月にリリースされ、Kubernetesベースのプラットフォームを手掛ける多数のベンダーがIstioベースの商用製品を発表している」
両氏によるとサービスメッシュが必要なのは、従来の負荷分散、アプリケーションデリバリーコントローラー(ADC)技術やAPIゲートウェイ技術では、マイクロサービスからマイクロサービスへの通信(いわゆる「東西トラフィック」)には重過ぎるという理由による。マイクロサービスアーキテクチャを早くから採用しているNetflix、Twitter、Lyftなどが自らサービスメッシュを開発しているのもそれが理由だ。
Gartnerの調査では、Istioプロジェクトに参加するか、独自のサービスメッシュを開発する技術プロバイダーは過去1年半の間に増えていることが分かった。ラーナー、トーマス両氏の推計によると、ソフトウェアとして提供されているものもサービスとして提供されているものも含めて、2020年は全ての大手コンテナ管理システムがサービスメッシュ技術を搭載する予定だ。
現時点でサービスメッシュを使う最大のメリットは、開発者の負担が減ることだと両氏は指摘する。これによって生産性を向上させ、アプリケーションのデリバリーを加速させることができる。サービスメッシュの利用は、長期的にはアプリケーション間で一貫した基準やポリシーの徹底を保証する一助になると両氏はみる。これはサービスメッシュが提供するトラフィック管理機能によるものだ。それによってマイクロサービス環境内で可用性、耐久性、動性、拡張性、インストルメンテーション、可視性、セキュリティといった追加的なメリットが実現する。
本稿はGartnerのアナリスト、アンドルー・ラーナー氏とダニエル・ヤング氏による報告書「Hype Cycle for Enterprise Networking, 2019」に基づく。
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