限界にきたネットワークの救世主はシリコンフォトニクス現行技術の寿命はあと5〜6年?

データセンター内の帯域幅は増加し続けているが、現行技術ではあと5〜6年で限界に達する可能性がある。シリコンフォトニクスは、ネットワークにさらなる高速化を約束する。

2019年11月08日 08時00分 公開
[Aaron TanComputer Weekly]

 帯域幅に対する欲求は尽きることがない。データセンターでは2〜3年ごとに容量の倍増が期待され、スイッチの進化が促されている。

 Webスケールのデータセンターでは、100Gbpsの光モジュールを使って12.8Tbpsのスイッチを展開するのが一般的だ。その容量は、今後2年で25Tbpsに達し、その後5〜6年で最大容量の50Tbpsに達すると予測される。

 その時点で、光信号と電子信号を相互に変換するスイッチは、従来の相互接続技術では帯域幅密度をサポートできなくなる転換点に達する。

 そこで登場するのが「シリコンフォトニクス」だ。シリコンチップを使って光信号を送信するシリコンフォトニクスは、光モジュールをスイッチにパッケージ化することで帯域幅密度の制限を克服し、400Gbps以上の光リンク実現への道を切り開く。

 「シリコンフォトニクスにとって最高の追い風だ」と話すのは、ベルギーを拠点とする研究開発機関imec(Interuniversity Microelectronics Centre)でシリコンフォトニクスの主任技術者を務めるヨリス・バン・カンペンハウト氏だ。同機関は、高速電子と組み合わせて200ミリウエハーと300ミリウエハーでのシリコンフォトニクスプラットフォームを開発している。

 世界中のシリコンウエハー製造インフラの多くは既に整い、広範な導入を妨げる恐れのある課題は克服されつつある。とはいえ、シリコンフォトニクスのウエハースケールの製造はこの状態を崩すことになる。

 その一つがレーザーデバイスだ。赤外線ビームを生成してデータを変換するレーザーデバイスは、送信の損失を補うために大量の電力を消費する。

 「この損失が大きくなるほど、変換を行うためにレーザーに必要な電力も増える。そのため、当社はアクティブなコンポーネントから高速モジュレーターへの移動、さらにはファイバーと電子チップ間のファイバー光構造への移動に至る光リンク全体の損失を減らそうと試みている」とカンペンハウト氏は話す。

 シリコンフォトニクスの熱フットプリントを減らすには、データを受信して処理するホスト集積回路(IC)に光学を持ち込み、ICに光モジュールを接続するために必要な電気的リンクを減らす方法もある。imecは、空冷をしのぐ冷却システムの利用と熱モデリングにも目を向けている。

 こうした課題があるとしても、シリコンフォトニクスは既に商用化が実現している。カンペンハウト氏は、トランシーバー/レシーバーのシステムが毎年200万〜300万個は出荷されるようになると見ている。

 「光学業界にとっては、大きな動きになり始めている。だが、CMOS業界にとっては、まだ海洋への一滴のような微かな動きにすぎない」(カンペンハウト氏)

 新たに登場する多くの技術と同様、ユーザーやアプリケーションが大量に増えればシリコンフォトニクスの製造コストは下がるだろう。

 カンペンハウト氏は、データセンター以外にも利用が広がると考えている。多くの帯域幅を必要とする人工知能(AI)アプリケーションを実行するためにGPUを使う「完全装備型スーパーコンピュータ」などがその例だ。

 「現状では、全てが電気による相互接続で実現している。だが数十年後には転換点がきて、光が幅広く導入されるようになると想定される」とカンペンハウト氏は話す。

 それまでに超えなければならないハードルもある。光モジュールには標準が存在する。だが、シリコンフォトニクスの実装方法は多様だ。

 レファレンスデザインは、少なくともインタフェース仕様の標準化と、光をシリコンチップにパッケージ化する方法の標準化の役に立つだろうと同氏は考えている。

 「これにより、業界の注目が実装の選択肢を減らす方向に進み、特定の実装が増え、誰もが低コストでメリットを得られるようになるだろう」と同氏は語る。

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