5Gの帯域を利用してプライベートネットワークを構築する「ローカル5G」が注目されている。ローカル5G実現の前に立ちはだかる課題とは何か。
5Gネットワークが現実になろうとしている。モノのインターネット(IoT)向けインフラなどの準備を目的に、「ローカル5G」に目を向け始めた企業もある。
ローカル5Gは、基本的には5G技術を利用するワイヤレスLANで、自社の接続ニーズを満たすことを目的に専用の帯域とインフラを備えたネットワークを構築することを指す。
プライベートネットワークは新しい概念ではない。そう語るのはVertiv Groupでヨーロッパ、中東、アフリカ地域(EMEA)のテクノロジーディレクターを務めるジョン・アボット氏だ。同氏によると、「プライベートLTE」は以前から存在するという。
ローカル5Gの採用については判断が難しい。5Gサービスは始まったばかりで、ネットワークスライシングなどの関連技術はまだ進化の途上にある。
だが、ローカル5Gの成長がこれまで促進されてきた大きな要因は、免許不要帯域が産業界に開放された点にある。
プライベートネットワークの人気が高まっているもう一つの要因は、ネットワーク要素の仮想化だ。ワイヤレスコンサルティング企業Vilicomのルイ・イナシオ氏は次のように話す。「ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)が現実になり、商用オフザシェルフ(COTS:Commercial Off-The-Shelf、既製品)サーバがソフトウェアを実行できるようになった。これにより、特殊な(そして非常に高価な)ハードウェアの必要性が減っている」
「その結果、業界の参入障壁が低くなり、中小規模のIT企業がモバイルネットワーク界を刷新し、混乱を引き起こすことを可能にしている」
ローカル5G通信事業者の主な課題の一つが、帯域の使用可能範囲だ。Globalaw(訳注:法律事務所の国際ネットワーク)に加盟するChild & Childの準弁護士ウィリアム・チャールズワース氏によると、帯域は有限であり、そのほとんどは大手通信事業者の手にあるという。
「帯域の一部を手放す意思が大手通信業者にどの程度あるかはまだ分からない。だが、5Gの確立に必要な投資はかなりの額になるため、プライベートプロバイダーからの収益と引き換えに帯域の共有を望む可能性はある」(チャールズワース氏)
同氏は政府の介入の必要性も説き、競争の公平性を期するためにパブリックネットワークとプライベートネットワークの分担に関する法律を制定すべきだと付け加えた。
もう一つ懸念される課題は、ローカル5Gを提供するために必要になるであろう技術スキルのレベルだ。「プライベートネットワークのコストは、少なくとも最初はプライベートプロバイダーが維持できるものかどうかはまだ分からない」と同氏は話す。
Tata Consultancy Services(TCS)のコミュニケーション、メディア、技術部門の代表取締役カマル・バダーダ氏も同様に、一般企業、電気通信会社、規制機関が協力してこうした問題に対処しなければならないと話している。「例えば通信事業者は、免許帯域を企業が使用するという考え方に応えることが期待される」と同氏は話す。
調整済みの共有帯域を使うローカル5Gは、無線周波の計画、ネットワーク設計、設置、テスト、管理、運用をより注意深く行う必要がある。「これは専門のエンジニアリング企業が行わなければならないだろう」とイナシオ氏は話す。
同氏は、プライベートネットワークは本質的にローカルだと補足する。「規制された帯域を使う要件の一つは、プライベートネットワークが同じ帯域の周波を利用する外部ネットワークの干渉源にならないようにするため、電波伝搬を抑制することだ。このため一貫性は(主に機器メーカーの観点から)望ましくはあるが、基本的なものではない」と同氏は語る。
後編(Computer Weekly日本語版 10月16日号掲載予定)では、ローカル5Gの有望なユースケースやローカル5Gに関する今後18カ月の展望を紹介する。
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