Facebookがモバイルアプリ用JavaScriptエンジン「Hermes」を公開事前コンパイルで高速起動

Facebookは、JIT(Just In Time)よりも高速にアプリが起動するAOT(Ahead Of Time)を採用したJavaScriptエンジンをオープンソースで公開した。

2019年10月11日 08時00分 公開
[Adrian BridgwaterComputer Weekly]

 Hermes(ヘルメス)はギリシャ神話に登場する神で、貿易、紋章、商業をつかさどる。だが、盗みや策略の神でもある。

 Facebookは、この神にちなんで同社のJavaScriptエンジンプロジェクトを「Hermes」と命名した。同社は恐らくこの神の高潔な資質を思い浮かべていたのだろう。同社はHermesをオープンソース(MITライセンス)で公開した。

 Hermesは、Facebookの「React Native」を使って構築された「Android」ネイティブアプリケーションのネットワーク負荷の軽減を目的としたものだ。React Nativeは、Fetch APIを提供してネットワークのニーズに対応する。

 Hermesはアプリケーション起動時間を短縮し、メモリ使用量を減らし、結果的にコードの全体的なフットプリントを小さくしようとしている。

 では、起動時間に注目するのはなぜだろう。

 アプリケーションの起動時間は、テクノロジー業界がTTI(Time To Interaction)と呼ぶ属性に影響する。TTIは、アプリケーションが起動してからユーザーが利用できるようになるまでの時間だ。TTIは消費者向けアプリケーションを作るソフトウェア企業の成功を左右する一因になる。

起動時間を短くする方法

 Hermesの秘密の一つは、バイトコードのプリコンパイルを実行する機能にある。

 バイトコードのプリコンパイルは、AOT(Ahead Of Time:実行前)コンパイルによるコード処理を可能にする。

 「一般に、JavaScriptエンジンはJavaScriptソースを読み込んでからそれを解析し、バイトコードを生成する。このステップがJavaScriptの実行開始を遅らせる。このステップをスキップするため、Hermesはモバイルアプリケーションのビルドプロセスの一環としてAOTコンパイルを実行する。その結果、バイトコードの最適化に多くの時間を費やせるようになり、バイトコードが小さく、効率的になる。関数の重複排除や文字列テーブルの切り詰めなど、プログラム全体の最適化も実行できる」(Facebookの技術文書より)

 Facebookによると、モバイルアプリケーションが大きく、複雑になるにつれ、開発者が機能や複雑さを加えるとJavaScriptフレームワークを利用する大きなアプリケーションでパフォーマンスの問題が頻繁に発生するようになるという。

 「Facebookのアプリケーションのパフォーマンスを向上させるために、当社にはJavaScriptコードとプラットフォームを継続的に改善するチームがある。パフォーマンスデータを分析することで、JavaScriptエンジン自体が起動パフォーマンスとダウンロードサイズに影響を及ぼしていることが判明した。このデータから、PCよりも環境に制限のあるスマートフォンでJavaScriptのパフォーマンスを最適化しなければならないことが分かった」(Facebookのプレス発表より)

 Hermesは、本稿執筆時点では「ECMAScript 6」(ES6、ECMAScript 2015)仕様を対象としている。同社のチームによると、JavaScript仕様の進化に合わせて最新仕様に対応していく予定だという。

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