5Gの最初の5年に起こること意外にゆっくり?

5Gの時代が始まった。これから5年間で5Gを巡ってどのようなことが起こるのだろうか。5年後にどの程度普及しているのだろうか。

2019年05月24日 08時00分 公開
[Matthew IjiComputer Weekly]

 5Gが現実になろうとしている。2018年末、初の商用サービスが米国と韓国で開始された。この波は2019年にさらに広がり、今後数カ月のうちに英国を含む先駆的なヨーロッパ市場、中国、オーストラリア、中東で開始されるだろう。

 今後5年、つまり2023年末には世界88の市場で5Gネットワークが稼働すると予測している。5Gではモバイルブロードバンドのパフォーマンスが格段に強化される。最終速度は1Gbpsをはるかに超え、待機時間は非常に短くなる。

 利用者もこうした高速化を歓迎するが、5Gが最も大きな影響をもたらすのは産業界だ。本稿では5Gのさまざまな形態に目を向け、5Gが今後5年間の社会生活にどのような影響を及ぼすかについて考える。

 2019年2月に開催されたMWC(Mobile World Congress)において、5Gは幾つもの議題に取り上げられた。商用導入、パートナーシップ、多数のユースケースが発表され、デモンストレーションが行われた。5G対応スマートフォンが6機種発表され、「Galaxy Fold」や「HUAWEI Mate X」など「折りたたみ可能な」フォームファクターの最高級機種が話題をさらった。Xiaomi、LG Electronics、ZTEなども5G対応のスマートフォンを発表した。

 Appleはこれまで率先して新世代の技術を実験したことはなく、5Gでも同様の姿勢を見せる可能性が高い。初の5G対応「iPhone」は2020年になると期待されており、発売されれば5Gの普及は一気に進むだろう。

 ただし世代交代の長期化、端末が高価格に設定される可能性、そしてユースケースが一つも整っていない点を踏まえると、2022年までに5G機器が多くの先進国市場で総接続数の4分の1より多くを占めることはないと予想する。

 5Gスマートフォンが広く普及すれば、携帯電話事業者が多大な利益を得るのは間違いない。端末の高速化と機能増加により、データ使用量は今よりも格段に上がるだろう。Cisco Systemsは、世界のモバイルデータ使用率は2018年から2022年にかけて4倍に跳ね上がると予測している。携帯電話事業者は4Gでデータ中心のビジネスモデルに転換して通話とテキストメッセージサービスを無料提供し、使ったデータ量に基づいて課金することが多い。

 5Gの登場により、携帯電話事業者はデータ使用量の増加による収益増加を期待するため、この流れは続くとみられる。また携帯電話事業者がゲームやライブイベントを配信するために拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の使用を検討することも予想される。家庭以外では、5Gホットスポットがガソリンスタンドや信号機などに設置され、コネクテッドカーが大量のデータを素早くダウンロードすることが可能になる。

 5Gは非常に高速なので、一部の早期導入事例では高速固定無線アクセス(FWA)ソリューションとして位置付け、携帯電話事業者が家庭用ブロードバンド市場のシェアを光ファイバーと争うことを可能にする。5Gが世界中に普及するにつれ、FWAはこれまでブロードバンドが対応していなかった領域に広がり、これまで接続環境がなかった人々を接続する重要な役割を果たすことになる。

新しいテクノロジーとユースケース

 消費者以外に目を向けると、自動運転、インダストリアルオートメーション、遠隔手術などの新しい技術とユースケースを実現する方法として多くの企業が5Gを検討している。さまざまなテクノロジー企業や自動車メーカーが公道で自動走行車の試運転を行っているが、法律や世間の認識などの要因を考えると一般に普及するのはこれから5〜10年後になるかもしれない。

 これらのユースケースはいずれもスペクトルなしには実現しない。5G高周波スペクトルは人口密度の高い地域に膨大な容量を提供し、スポーツスタジアムや音楽イベントといった場面でのデータサービス障害の発生を回避する。ただしこの膨大な容量には犠牲が伴う。電波を数百メートル以上届けるのは、都市部以外ではコスト的に厳しくなる。

 5Gネットワークが最初に対応するのは主要都市の中心部になると予想されるが、2023年末には世界の人口の4分の1以上に電波が届くようになるだろう。人口集中地域の外は5Gより低周波数の信号がアクセスを提供する。

 消費者、企業、そしてモバイル業界自体が5Gに向けて最初の一歩を踏み出す5年間がいよいよ始まった。この流れは最終的に人々のコミュニケーション、働き方、生活を変えるだろう。ただし、2023年末でも5Gが世界中のモバイル接続に占める割合は10%未満にすぎず、ネットワーク投資は4Gに大きく傾き続けると予想される。

 5Gの導入は2019年に加速し始めるが、特に導入のコストや戦略については強く警戒する必要があるというのがMWCでは大多数の意見だった。

 誇大に宣伝されてはいるものの、5Gの最初の5年間は始まったばかりだ。

ITmedia マーケティング新着記事

news061.png

高齢男性はレジ待ちが苦手、女性は待たないためにアプリを活用――アイリッジ調査
実店舗を持つ企業が「アプリでどのようなユーザー体験を提供すべきか」を考えるヒントが...

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...

news047.png

【Googleが公式見解を発表】中古ドメインを絶対に使ってはいけない理由とは?
Googleが中古ドメインの不正利用を禁止を公式に発表しました。その理由や今後の対応につ...